現在、JR東日本で動態保存されているD51 498の現役時代の姿です。

様々な意見・見解があろうかとは思いますが、私的には保存というのは例え動態で実践投入されているとはいえ、正式にはあくまでも ”保存“ 。厳密に言えば現役の第一線からは退いているので、このような表記の仕方をしています。そういう意味で言えば、現在、JRや私鉄線上で走っているSLは全て “営業車両ではなく保存車両” という扱いで良いと思います。

 

さて、このD51 498ですが、撮影場所は八高線の毛呂駅。八高線にも客レが走っていたんだと感慨深げに眺めていたのですが、実はこれ、イベント列車。撮影日が昭和47年10月7日ということで、ピンと来た方もいるのではないでしょうか。

その前に、D51 498の履歴を雑駁にお伝えしますと、D51 498は昭和15年に当時の鉄道省鷹取工場で製造され、岡山機関区に配備。山陽本線を中心に運用が始まるのですが、戦後になって吹田機関区に転属。活躍の場が西から東へ移ります。ただ、その頃になると東海道本線も電化が進捗していますので、東海道本線での活躍はそう長くは続きませんでした。実際に、吹田は2年ほどしか配備されず、昭和28年に平機関区に転属、以降は転属は重ねられますが、東日本での活躍が続きます。

最終配置は坂町機関区ですが、高崎第一機関区が最終配置とする媒体もあるようです。高崎はあくまでも貸し出し扱いのようで、正式な最終配置は坂町機関区という説が正しいようです。

なお、平機関区時代には京都鉄道博物館で静態保存されている8630号機と、新津機関区配置時代に同じくJR東日本で動態保存されているC57 180号機と、そして山口線での運用を終えて京都鉄道博物館で余生を過ごすC57 1号機と僚機であったことがありました。

 

高崎第一機関区に貸し出されたのは、画像の八高線列車を牽くため。

鉄道開業100周年を記念して、八高線に蒸機列車を走らせる企画があり、その牽引機に抜擢されたのが498号機でした(他に1002号機も牽引)。

運転区間は八高線全線で4日間運転され、その年の12月に廃車されます。

そのまま解体になる予定でしたが、群馬県月夜野町(現、みなかみ町)に無償貸与されて、上越線後閑駅で静態保存されることになりました。

 

それから15年後。

国鉄は民営化されてJRになるわけですが、JR東日本では蒸気機関車の復活を模索する動きがあり、時同じくして横浜市から「開催を予定している横浜博覧会で蒸気機関車を走らせたい」という打診があり、JR東日本も正式にSL復活運転のプロジェクトをスタートさせます。様々な保存機の中から、当初は交通博物館に静態保存されているC57 135号機が復元の筆頭候補だったのですが、「出来れば、最も世間に知られた機関車の方が良い。だから、デゴイチが適任ではないか」という声が上がり、調査の結果、茨城県つくば市に保存されている70号機とこの498号機が最終選考に残り、保存状態とスタイルが決め手となって498号機がレストアを受けることに決まりました。

昭和63年、ヨーロッパからオリエント急行がやって来ることを耳にしたJR東日本は、「復活の狼煙を上げる最高のステージ」ということで、全国を回っていたオリエント急行の国内最終運転に間に合わせるようにレストア工事を急ピッチで進めた結果、同年12月に上野-大宮間でオリエント急行を牽引して復活しました。後補機にEF58 61が付き、沿線のボルテージは一気に高まりました。なお、横浜博覧会でのSL運転は諸事情で中止されています。

本物のオリエント急行をJR線上で運転させるなんざぁ、バブル期の象徴とも言える伝説ですが、いくらレストアをしたとはいえ、人間の高齢者と同じで中身は ”老い“ そのもの、故障が頻発しました。

事あるごとにSLは生き物に準えられることがありますが、そういうところも生き物と同化しちゃうんですね。そんな事情から、JR東日本はもう1両、SLを復元させることになり、群馬県の華蔵寺公園に保存されていたC61 20号機に白羽の矢を立てたのは有名ですよね。

 

D51 498はそんな状況下でも東北本線や奥羽本線、羽越本線、磐越西線など、現役時代に走った場所を懐かしむように運転されたほか、現役時代には開通していなかった京葉線にも入線したこともありました。また、現役最後の走行線区でもある八高線にも乗り入れたことがありました。

 

JR九州では8620形(58654)が老朽化で営業運転を終了しましたが、その他の地域でも蒸気機関車の余命はそう長くはないと思います。「いっそのこと、SLを新製しちゃえば良いのに・・」といつも思うんだけど、確か現在、日本でSL用のボイラーを新調できるメーカーは無かったはず。見てくれを蒸気機関車にして、動力源はディーゼルエンジンとする選択肢もありのような気がするけど、それじゃSLならではの “迫力” が出ないですよね。

 

 

【画像提供】

ケ様

【参考文献・引用】

鉄道ファンNo.421 (交友社 刊)

ウィキペディア(JR東日本D51 498号機)