山深いローカル線の駅っぽいですが、構内は意外と広そう。

画像こそ国鉄時代ですが、現在は第三セクターの鉄道線として残存しています。何線だと思いますか?

正解は 「樽見線」 です。昭和59年10月に第三セクターの樽見鉄道に移管し、平成元年3月に樽見まで延伸開業しましたが、国鉄時代は工事凍結で美濃神海 (現、神海) までしか線路が延びていませんでした。

撮影は昭和59年5月ということなので、第三セクター転換5ヶ月前の 「国鉄時代最後」 の姿ということになります。

 

画像ですが、現在は本巣駅となっている美濃本巣駅構内。

樽見鉄道移行後はここに車両基地を置き、運転上の中枢にしましたが、国鉄時代は近隣にあるセメント工場から産出されるセメント列車の受け入れ機能があるだけで、その関係で構内が広かったのです。セメント列車は樽見鉄道になってからも継続されて、同社の営業収入の4割を占めていました。実際にそのセメント会社は樽見鉄道の株主ですもんね。しかし、平成18年にセメント輸送を自動車輸送に切り替えることとなって、樽見鉄道は経営方針の転換を迫られることになりますが、沿線に大規模なショッピングモールが出来たりして、そこへのアクセスや観光需要の掘り起こしを進め、そういった施策が功を奏したのか、今も何とか経営を持続させています。

 

元々、樽見線は 「大垣から大野 (福井) を経て金沢に至る鉄道」 として計画された路線で、建設に着手したのは昭和10年。しかし、太平洋戦争で工事は中断し、終戦後に再開。昭和31年に大垣-谷汲口まで開業し、その2年後に美濃神海まで延伸されています。昭和45年に残りの区間の工事に着手することになるのですが、工事区間に特別天然記念物の断層とバッティングすることが分かり、工事は中止されるも、ルートを変更するなどして何とか工事を再開させます。しかし、昭和54年度の営業係数が392と典型的な赤字ローカル線で、国鉄再建法によって廃止の対象になります。美濃神海-樽見間も鉄橋やトンネルなど、8割弱の工事が完成しているにもかかわらず、昭和56年9月に工事は凍結します。

 

大垣市周辺の住民やセメント輸送の絡みもあって存続させる動きが活発化し、前述のように昭和59年10月に第三セクターの樽見鉄道として再出発することになり、経営努力によってしばらくの間は好調に数字を上げていきます。これを元に、神海-樽見間の延伸工事を復活させました。

開業用に用意した車両は、いわゆる 「レールバス」 と呼ばれる二軸のディーゼルカーでしたが、朝のラッシュ時のみ、国鉄から譲り受けた客車列車が運行していました。この客車列車の輸送力たるや、レールバスとは桁違いで、20m級車体の強みを生かして本領を発揮しました。

 

先程も申したように、現在の本巣駅は車両基地が置かれて運転上の中枢になっています。本巣を起終点とする列車もあると思いますが、国鉄時代は基本的には大垣-美濃神海間の運転に特化し、朝の1本だけ美濃本巣発美濃神海行きの列車が設定されている他、土曜の朝と昼だけ大垣-東大垣間の区間運転列車も存在しました。沿線に高校がある関係だと思われます。

日中、美濃本巣駅構内で気動車が佇むのは有り得ないのですが、その朝の1本に充当される車両かもしれません。

奥はキハ48っぽいのは判りますが、前の車両、一見するとキハ25と勘違いしそうな車両です。これはキハ26で、キハ55の1エンジン車です。樽見線の車両は美濃太田機関区 (名ミオ) が受け持ち、各地でキハ55系の淘汰が進む中、美濃太田のキハ55系は比較的遅くまで残っていたとのことです。

キハ55系の首都圏色化は、昭和50年代中盤に実施されたみたいですが、詳細な記述は見つかりませんでした。かつては優等列車用として動力近代化の一翼を担ったであろうキハ55系も、首都圏色になってしまっては、華やかりし頃の姿は完全に消え失せてしまっています。

なかなか読み取りにくいんですが、貫通扉下部に記されている番号は 「116」 と読めますので、キハ26 116であると思われます。実際にキハ26 116は美濃太田が終の棲家だったので、間違いないと思いますが、撮影から1年4ヶ月後の昭和60年11月に廃車されていますので、こちらもまた最晩年の姿になります。

 

私は10年前に一度だけ、樽見鉄道に乗りました。

大垣から樽見まで乗り、折り返しで本巣まで乗車。本巣でちょこっと撮り鉄をした後、次のモレラ岐阜で降車してイベントに参加しました。

単調なんだけど、季節によって風景が変わると聞きました。谷汲口のサクラは見事だそうで、機会があったら行ってみたいですね。

 

 

【画像提供】

い様

【参考文献・引用】

鉄道ピクトリアル No.729 (電気車研究会社 刊)

時刻表 1980年12月号 (日本国有鉄道 刊)

ウィキペディア (樽見鉄道、同樽見線、本巣駅)