
DD51が牽引する客車列車が駅に到着しました。
見るからにターミナルっぽい風情が漂いますが、この駅、一体何処だと思いますか?
勘の鋭い人はすぐに 「ピィ~ン
」 と来るかと思いますが、実はここ、上野駅なんです。

「東北線も高崎線も常磐線も皆、電化されているのに、何で上野にDD51が来るんだよっ!?」 と憤慨するのは最近のファンの方ですね。でもね、イレギュラーではあるけど、時折、DD51は客車を引っ張って上野に顔を出していたのです。
画像はおそらく、いわゆる 「成田臨」 ってやつでしょうけど、 「成田臨」 というのは、あくまでも成田山新勝寺へ初詣に行く団体客を乗せるための固有名詞のようなもので、初詣以外で成田へ行く列車に 「成田臨」 というのは用いないみたいですね。
というわけで、 「成田臨」 以外でも成田山新勝寺への参拝客の団体臨時列車が国鉄時代から数多く運転されていました。今だったら183系 (189系) や185系が充当されるでしょうし、客車が多く残されていたJR黎明期であれば、EF65やEF81などの電気機関車がそのままスルーして乗り入れてきたのでしょうけど、国鉄時代は何故か、千鉄局管内は佐倉機関区のDD51が牽引を受け持っていました。それは画像の常磐線経由も然りですし、都心から総武線を経由する列車も然りです。国鉄時代に武蔵野線経由で成田へ行く列車があったのかどうかは定かではないのですがね。
佐倉駅に隣接していた佐倉機関区は、DD51とDE10を数多く配置しており、高崎第一機関区と並び称される首都圏の一大DD51配置区でした。千葉鉄道管理局管内は、受け持つ殆どの路線が非電化で、千葉気動車区は日本でも指折りの気動車配置区でもありました。当時、千鉄局管内の機関区は佐倉機関区の他に新小岩機関区がありましたが、新小岩は新金線や小名木川線への貨物列車をメインにしてD51とかが配置され、佐倉は房総各線の旅客列車を中心にC57やC58が配置されていました。無煙化後は新小岩機関区は廃止され、千鉄局管内は佐倉1ヶ所のみとなり、DD51やDE10といったディーゼル機関車は配置されるようになりました。房総各線の電化が急ピッチで進められると、客車列車や気動車列車は電車化され、ディーゼル機関車も周辺の貨物列車牽引が主な仕事となりました。
昭和56年当時、佐倉には27両のDD51が配置されていて、京葉臨海鉄道と接続する蘇我や小名木川線の越中島駅 (現、越中島レールセンター) 、そして鹿島線の北鹿島、武蔵野線の武蔵野操車場までが運用範囲でした。ここで特筆すべきは、武蔵野操車場への運用。当然、成田線を介して我孫子から常磐線に入るわけですが、昭和37年の三河島事故以降、常磐線を通る全ての車両に列車防護無線装置が取り付けられるようになり (蛇足だが、三河島事故をきっかけにATSが普及したのは有名な話です) 、DD51も例外ではなく、常磐線用列車無線を取り付けました。
画像の715号機をご覧いただくとすぐに判るのですが、キャブのヒサシ上 (助手側) に円筒状の突起物が見えるかと思います。あれが常磐線用列車無線のアンテナで、715号機の他に695、696、697、698、842、886、887号機が該当機になります。成田から団体臨時列車を牽引して、上野などに乗り入れる場合は、この8両がお供をすることになります。
牽引される客車は14系座席車ですが、尾久客車区 (北オク~現在のJR東日本尾久車両センター) の配置車でしょうか。成田への参拝臨時の場合、大概が佐倉客貨車区 (千サク) の12系客車なんですけどね。それから、DD51の他に、DE10が牽引する場合もありました。テレビドラマ 「大都会PART.Ⅱ」 でDE10牽引の12系団体臨時列車が “出演” しています。
17番線と18番線の間隔が随分と開いていますが、ホーム末端部に荷扱い用のホームがあり、そのため、間隔が広くなってるのです。荷扱い用ホームといえば、今では13番線と14番線との間に当時の名残がオブジェの如く、残されていますが、お国言葉が飛び交っていた上野駅地平ホームは、その殆どが遊休化してしまっています。
佐倉機関区はJR貨物に引き継がれ、比較的近年までありましたが、平成9年に蘇我駅構内に新しく出来た千葉機関区へ移転して佐倉機関区は廃止されました。
私が初めてDD51を見たのはまさしく佐倉機関区配置の機関車でした。
あの当時の小名木川貨物線は、今よりも列車本数は多かったはずなんですが、滅多に見られなかったのを思い出します。当然、遮断器が下りて列車が通過するのを見れば、 「ツイてる」 となり、鼻からドレインを出していたのは言うまでもありません。通過して越中島へ向かうのと小名木川貨物駅での入換作業で、小名木川方面に引き返してしまうのとがありましたが、さすがに引き返す方はDD13がメインだったようです。
【画像提供】
タ様
【参考文献・引用】
鉄道ファン No.245 (交友社 刊)
ウィキペディア (佐倉機関区、三河島事故、千葉機関区)