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前回 (No.407) がちょっとネタが旧すぎたかなという気もしたので、今回は一転して、 “我々の世代” 的な画像をお届けします。説明する必要もないでしょう、中央東線の115系電車です。211系の投入で余命幾ばくもない中央東線の115系ですが、昭和の頃はガッツリと新宿にも乗り入れていました。クモユニ82とクモニ83を連結していると余計に 「中央東線の普通電車だね」 というイメージが増幅されますが、子供の頃はスカ色の115系は嫌いな部類に入っていました。 「やっぱり、スカ色は横須賀線 (の113系) でしょっ!?」 的な感じでした。
 
「山スカ」 の愛称で知られる中央東線の普通電車は、昭和27年にその歴史が始まります。横須賀線用というイメージがあった70系を中央東線にも投入しましたが、トンネル断面が他の路線より小さいことから、車両の屋根も低くする必要があり、新たにパンタグラフ取り付け位置を低くしたモハ71が登場しました。また、通勤形の72、73系も70系に混じって運用されましたが、こちらは 「山ゲタ」 などと呼ばれていました。
昭和40年5月、中央本線の辰野-塩尻間と篠ノ井線塩尻-松本間の電化工事が完成し、いわゆる 「中央東線」 は全線で電化が完成しまして、松本まで行く普通列車を電車化することになりました。その前段として、同年10月改正より、気動車や客車で運転されていた急行列車を165系で電車化され、その翌年には初の特急電車 「あずさ」 が登場しました。そして12月には客車普通列車を電車化し、それに合わせて115系電車を新製投入、三鷹電車区 (東ミツ~現在のJR東日本三鷹車両センター) に配置しました。
 
当時のローカル列車といえば、編成の端部に郵便車や荷物車を連結するのがお約束になっていて、中央東線でも普通列車の115系化に合わせて、郵便車と荷物車を登場させました。残念ながら新製車両ではなく、余剰となっていた旧形国電の足回りを利用して、車体だけ新製するという手法が採られました。これは昭和30年代に111系や153系などと連結させるために登場したクモユニ74が有名ですけど、中央東線用には郵便車と荷物車は別々に製造 (改造) されました。
こうして出来上がったのが、クモユニ82とクモニ83で、共に中央東線に乗り入れることから、屋根を低くする必要がありましたが、パンタ取り付け部だけ低くしたのではなく、屋根全体を低くしました。後にクモユニ82やクモニ83にも “0番代” が登場していますが、前者は篠ノ井線全線電化用に増備されたグループで、小断面トンネル対応のPS23が開発されたことによって、屋根を低くする必要が無くなり、800番代ではなくて0番代となりました。後者は上越用に登場したグループです。
種車らしく、吊りかけ駆動ですが、新性能電車との互換性はあり、また、115系に連結することを前提としていたため、抑速機能も兼ね備えていますし、耐寒耐雪装備も併せ持ちました。
 
クモユニ82は、形式からも判るように、名目上は郵便荷物合造車ですが、スペースの殆どが郵便室となっていて、事実上、 「クモユ」 にしてもおかしくない室内レイアウトとなっています。
対比は下記の通りで、3両が製造 (改造) されました。
クモユニ82800 (モハ72221) 盛岡工場
クモユニ82801 (モハ72296) 浜松工場
クモユニ82802 (モハ72236) 浜松工場
後から加わった0番台は前述のパンタの関係で普通屋根になったほか、そのパンタグラフも1基搭載となっています (800番代は2基搭載) 。また、800番代と違って、今度は荷物室が主体となったレイアウトとなり、窓配置もクモニ83とほぼ同一になりました。
クモユニ82000 (モハ72030) 大井工場
クモユニ82001 (モハ72068) 大井工場
クモユニ82002 (モハ72263) 大井工場
クモユニ82003 (クモハ73060) 大井工場
クモユニ82004 (クモハ73177) 大井工場
クモユニ82005 (モハ72028) 長野工場
この他、クモユニ82は、両毛線用に引通し線を両渡りとした構造の50番台も登場しています。
 
クモニ83は115系に合わせて雨樋を高くしたのも存在し、張り上げ屋根のようなスッキリとした外観になっているのが特徴だったりします。
クモユニ82よりも勢力が大きく、中央東線だけでなくて山陽本線などにも投入されました。
クモニ83800 (モハ72275) 大井工場
クモニ83801 (モハ72222) 大井工場
クモニ83802 (モハ72283) 大井工場
クモニ83803 (モハ72282) 大井工場
クモニ83804 (モハ72075) 大井工場
クモニ83805 (モハ72274) 大井工場
クモニ82806 (モハ72020) 大井工場
クモニ83807 (モハ72216) 鷹取工場
クモニ83808 (モハ72281) 鷹取工場
クモニ83809 (モハ72200) 鷹取工場
クモニ83810 (モハ72317) 鷹取工場
クモニ83811 (モハ72237) 盛岡工場
クモニ83812 (モハ72295) 盛岡工場
クモニ83813 (モハ72128) 盛岡工場
クモニ83814 (モハ72234) 盛岡工場
クモニ83815 (モハ72242) 盛岡工場
クモニ83816 (モハ72243) 盛岡工場
クモニ83817 (モハ72302) 盛岡工場
クモニ83818 (モハ72240) 長野工場
クモニ83819 (モハ72045) 郡山工場
クモニ83820 (モハ72011) 郡山工場
このうち、大井で改造された6両が中央東線向けの車両なのかなと思いますが、昭和55年7月現在では、800、803、806、807、808、811、812、814、815、816、817の11両に加えて、0番代4両 (026、027、028、029) も三鷹に配置されていました。また、クモユニ82も登場当初は三鷹電車区でしたが、昭和49年に松本運転所 (長モト~現在のJR東日本松本車両センター) に転属になっています。
 
編成的には以前にもお伝えしたかと思いますが、基本8両にクモニ+クモユニを併結した10両編成でした。
←甲府、松本                                                                               新宿→
クハ115-モハ114-クモハ115+サハ115-サハ115+クハ115-モハ114-クモハ115+クモニ83+クモユニ82
そういえば、今の高島屋新宿店辺りに、広大な貨物ヤードがあって、ニモデンもそこに入線していました。
 
後に、サハは基本3両の中に組み込まれて4両となりましたが、この頃になると各地方のローカル線で電化開業が相次いでいた時期と重なります。これによって電車が必要になりますが、どうしても2両とか3両とかの短い編成がお望みのようでして、そうなるとターゲットになるのが115系になるわけですが、4両編成を3両編成にする場合も、2両編成にする場合も必要なのは先頭車。しかし、編成の短縮化で先頭車が絶対数不足することから、先頭車をかき集めなければなりません。しかし、新製するにしても、先頭車のお値段はどうしても高くなりますし、国鉄の財政状況を考えれば、到底新車を製造するだけの財力はもはや無いに等しい。そこでモハ115やサハ115に運転台を取り付けて先頭車にするという改造を思い立ちました。昭和50年だ末期から大流行りした 「先頭車化改造」 ですが、改造の種車で一番多かったのが115系でした。
 
前述のように、中央東線の115系はせっかく3両から4両になったのに、サハを抜かれてまた3両に戻り、サハはクハに改造されて沼津や広島へと旅立っていきました。この先頭車化改造は60.3改正まで行われ、中央東線の115系からサハが全て抜き取られてしまいました。
 
一方、クモユニ82とクモニ83ですが、中央東線では59.2改正で同線の鉄道郵便輸送が廃止されまして、クモユニ82が編成から外されてそのまま全車廃車となり、以降はクモニ831両のみでの併結になっていましたがそれも束の間、今度は鉄道荷物輸送が廃止・縮小されることになり、60.3改正でその運用は消滅しました。クモニ143のように、旅客用車両に改造されることなく、1両は鉄道技術研究所の試験車クヤ497形に改造された以外は、平成元年までに全車廃車されています。なお、宇野線用のクモハ84は、クモニ83の0番代が種車です。
 
115系の新宿乗り入れはいつまで続いたのか定かではないのですが、JR化後もしばらくは新宿乗り入れは存在したようです。それがいつの間にか立川止まりとなり、23区内に乗り入れることはありませんでした。国鉄時代から頻繁に新宿に乗り入れることは無く、やはり立川、八王子、高尾からの発着がメインでした。昭和55年現在で概ね1時間に1本程度でした。これは東京-高尾間が通勤路線であるのが一番の理由で、2~3分に1本の割合で次々とやって来る快速用の通勤電車をかいくぐるダイヤは設定出来ないのだと考えられます。
 
昔は嫌いだったけど、無くなれば寂しいものです。
上州地方の115系も消えゆく日が遠くないらしいので、またMT54の雄叫びを聞きに行きたいなと考えている昨今です。
 
【画像提供】
は様
【参考文献・引用】
鉄道ピクトリアル No.796、820、869 (いずれも電気車研究会社 刊)
鉄道ファン No.258 (交友社 刊)
名列車列伝シリーズ⑳ 「急行アルプス&165系急行形電車」 (イカロス出版社 刊)
時刻表 1980年12月号 (日本国有鉄道 刊)
ヤマケイのレイルシリーズ ⑪ 「国鉄電車」 (山と渓谷社 刊)
ウィキペディア (国鉄モハ72系電車)