
「甲種輸送」 ・・・。
今も連綿と受け継がれていて、特別、 “国鉄時代独特” の光景では無いのですが、国鉄時代はコアなマニアにしか支持されない趣味カテゴリーであったのは確かなようです。
「甲種輸送」 は 「甲種鉄道車両輸送」 というのが正式な名称らしいのですが、昔は 「甲種回送」 なぁんて言い方をしていましたよね。鉄道雑誌でも公然と 「甲種回送」 って書いてたし、我々も信じていました。でも今、 「甲種回送」 なんて書こうものなら、速攻で、 「それは 「甲種回送」 って言うんじゃなくて、 「甲種輸送」 って言うんだよ・・」 と要らぬツッコミが容赦なく寄せられます。だから、書き込む側も慎重に言葉や文言を選ばなければなりません。
私は過去、二度ほど、 「甲種回送」 ・・いや、 「甲種鉄道車両輸送」 を見たことがありますが、確かに趣味的に見れば、
① デビューする前のまだ見ぬ車両をいち早く見られるということ。
② 機関車が牽引するということ。
③ 関西地区で関東の車両を見られるなど、その地域では見られない車両を見られること。
など、珍しい列車ということでそれなりに市民権は得ているのでしょうけど、私的には別に情報を仕入れて出かけるほどの興味はありません。たまたまその場に居合わせれば、 「おぉ~っ!!」 とカメラを向けますが、2010年に京都駅で見た東京メトロ15000系も、2013年に大宮駅で見たJR東日本E233系 (埼京線仕様) も “偶々” です。
国鉄時代は、こういった新製車両の輸送方式にもきちんとした規定があり、によると、 「甲種鉄道車両輸送とは、自己の車輪によって運転し、運送される鉄道車両をいう。但し、私有貨車及び直通社線所属の車両にあって、国鉄線に直通運転を承認したものを除く」 とされていました。即ち、国鉄の新製車両は、新幹線車両とか電流の違いなどによる自走不可能な場合 (特に交流車両) は機関車牽引の貨物列車扱いになる場合もありましたが、大概が自力で製造メーカーから自身の塒となる車両基地、もしくは納入後の整備を受けるために車両工場へと送り込まれます。民営化後はJRグループの車両といえど、会社が違うということで自走は殆ど無くなり、機関車に牽引される貨物列車扱いで、現地に送られるのが一般的になりました。あと、新幹線車両なんかは船を使ったり (航送) 、港からトレーラーが引っ張って道路を走る 「陸送」 なんてぇのもありますね。車両規格が小さい新在直通用の車両については、昨今、再び甲種輸送が復活したのだとか。
なお現在、東海道新幹線の車両は殆ど日本車輌で製造されていて、整備先である浜松工場までトレーラーを使った陸送がメインになっていて、甲種鉄道車両輸送は行わない方針でいるようです。
私鉄の車両は、途中から陸送という手段を執る場合もありますが、基本的には今も昔も連綿と機関車牽引の貨物列車扱いという輸送形態が維持されているみたいで、車両ですけど、厳密に言うと “荷物” になります。
画像は、車両メーカーから甲種鉄道車両輸送で送り込まれてきた小田急8000形です。
日車か東急か、はたまた川重かはよく判りませんが、いずれにしても機関車が牽引して小田原まで運ばれて、そこから小田急の電気機関車にバトンタッチして相模大野の工場まで運ばれていたのでしょう。
「 「 “甲種” 鉄道車両輸送」 というのがあるのだから、 「 “乙種” 鉄道車両輸送」 っていうのもあるの?」 という質問が寄せられそうですが、一応、あるそうですよ。
甲種は車両を直接線路に乗せて運ぶ手法を言い、軌間が異なる私鉄の車両や新幹線車両は仮台車を履かせて国鉄線上を走らせています。これに対して乙種は、貨車に車両を乗せて運送する方法を言い、路面電車の車体を貨車に乗せて運んでいました。しかし今は、乙種というよりも、 「特大貨物輸送」 に一本化されたみたいで、乙種という種別は使われなくなったそうです。
趣味的に面白いのでしょうけど、やっぱり興味が沸かないな・・・。
【画像提供】
タ様
【参考文献・引用】
鉄道ピクトリアルNo.919 (電気車研究会社 刊)