先般発売された 「バスマガジン」 のNo.71に興味深い記事が掲載されていました。それは 「個人がバスを購入する場合、どうすれば良いのか?」 という記事。
個人が新車でバスを購入するという機会は殆ど無いと思いますが、もし、 「バスを買おう」 ということになった場合、絶対に必要なものがあります。それは 「整備管理者」 という資格。いくら大型免許、あるいは大型二種免許を持っていて、札束を積んでディーラーに行ったとしても、この 「整備管理者」 の資格を持っていなければ、その段階で門前払いとなってしまうのだそうです。 「整備関連は必ずここ (ディーラー) でやってお金を出すから、そっち (ディ-ラー) やってくれない?」 というのもダメ。
記事によると、整備管理者制度は、 「大型バスのような車両構造の特殊な自動車で、事故の際の被害が甚大となる自動車を用いる場合には、専門知識をもって車両管理を行う必要があること」 を趣旨としており、法制でも乗車定員30名以上の自動車を所有する場合は、1台からでも車両整備管理者が必要となります (これは貨物法制でも同じで、勉強しました) 。
さらに、その車両管理者ですが、ただ単に持っていれば良いというわけではありません。
① 一、二級または三級の自動車整備士技能検定に合格した者② バスの点検、もしくは整備または整備の管理に関する実務経験を2年以上経験している者③ 地方運輸局長が行う研修を終了した者
という厳しいハードルがあり、この3つをクリアしていれば、個人でもバスの購入は可能だそうです。ただ、これらの要項は新車購入のみに適用されるのか、中古バスは対象外なのか、マイクロバスは対象なのかは定かではないのですが、いずれにしても、バスを個人で持つということは、それなりのリスクと覚悟が必要となるのは必然ということでしょうか。

(画像はイメージです)
そういう厳しい条件がある中で、実態は自家用同然なのに取って付けたように緑ナンバーを取得している業者、いわゆる “オレ流バス” は近年、雨後の竹の子のように増殖し、我が物顔で走っている姿を散見するのは皆さんもよくご存じかと思います。そのほぼ9割以上がいわゆる 「インバウンド輸送」 なわけですが、同時にその過半数が整備をロクスッポしていない整備不良車だったりします。
こないだ、テレビで首都高でトラブルを起こしたバスが立ち往生していたシーンを観ていましたが、トラブルの原因はミッショントラブル。ギアが入らなくなった (厳密に言えば、ギアは入ったままでニュートラルは勿論のこと、ギアを上げ下げ出来なくなったというトラブル) というトラブルを起こした車は画像と同じ、エアロクィーン・MVでした。その時、バスには20~30名くらい乗っていたでしょうか、乗客は中国人だったのですが、バスが動かなくなった以上、とにかくバスを排除しなければなりません。まず乗客を安全な場所に誘導することから始まったのですが、道路公団 (・・・って言わないですよね、今は) の黄色い車に何回かに分けて中国人を乗せたのですが、日本語が出来るツアコンが一番先に乗って “逃げた” ので、日本語が話せない他のツアー客は置き去りにされたまま。全員を乗せるのに相当な時間を要したと報じていました。
ここで注視したいのは、きちんと整備をしていれば、ミッショントラブルなんて起きないだろうということ。勿論、事前に入念に整備していても、実際に走行した時にトラブルが起こり得ることもあります。しかし、この手のバスは間違いなく整備していませんね。車庫ったって、ただ単に車を停めておくだけで、整備施設も無ければ洗浄装備も無いのが殆ど。ウテシもテキトーに周辺を見ているだけなんでしょうね。だから、タイヤがスリックタイヤの如くツンツルテンだったり、発進時に大量の黒煙 (白煙でもいいや) を撒き散らしたり、前照灯や尾灯のバルブが切れていたり、酷いのになるとワイパーがシングルアーム状態 (つまり、片方のワイパーが欠けている) だったり、以前にもお伝えしたように、アウターミラーが欠けてガムテープで応急処置をしていたりと、危険極まり無い整備不良バスが横行しているのです。それで思うのは 「お前ら、それでもバスを動かすか?」 ってこと。
画像のバスも、社名が手書きだったりします (証拠写真見せようか?) 。さらにバックモニターの蓋が無かったりして、中古バスというよりも、 「普通のオンボロバス」 でした。これは社名が書かれているだけまだマシ。酷いのになると、社名は勿論、 「貸切」 表示もされていない車も彼方此方で見かけますので、困ったものです。それでも警察や国交省は動きませんからね。
3年前に起きたツアーバスの重大事故をきっかけに、夜行高速バスは大きく様変わりしましたが (それもキチンと守っている事業者は指で数えられる程度。大半は従来通りのツアーバス時代のやり方を継続しているという風の噂あり) 、こういった貸切事業も規制緩和ではなく、規制をドンドン強化していった方が良いんじゃないでしょうか?
具体的には
① 車齢15年以上のバスの原則使用禁止。② 同バスの販売禁止。③ 同バスを販売もしくは所有、使用する場合は、あらかじめ指定された対策を施して承認を得ないといけない。その際もデイ-ラー等で 「整備完了証 (仮称) 」 を発行させて、最寄りの警察署等に届け出を義務付けさせる。④ 許可を受けた者以外の路上駐停車の絶対禁止。必ず公共の駐車場に停めて乗降させること。⑤ 違反車 (違反者) は有無を言わせず、違反切符を切ることとする。悪質な場合は、即時免許停止処分。⑥ 違反事業者 (違反業者) には即時業務改善命令。悪質な場合は即時業務停止命令など
どれもこれも実際に行っていることなんですが、さらに厳しくする必要があります。
浅草や銀座などでは、この手のバスが道路を占拠していて、渋滞の原因を作っているだけでなく、バスとバスの間から人が飛び出してきて事故を起こしかねない危険性があるから訴えています。
“オレ流バス” は常に 「常識の中の非常識」 がまかり通っているから、いつ事故を起こしてもおかしくない状況になっているのは誰の目から見ても明らかでしょう。そうは言っても、国交省も警察もどれが違反車でどれが非違反車なのか解っていないのが現状ですので、今後もイタチごっこは続くんでしょうね。
「もはねの小部屋」 では、今後もこういった悪質業者を追求する方針ですが、ただ単にブログで告発しても、法的拘束力は無いので、無意味かもしれませんけどね。
【参考文献】
バスマガジン No.71 (講談社ビーシー社 刊)