今日はブログ再開を機に私の過去、文具探訪、スローライフの意味を綴りたいと思います
遡ること十数年前。。。
私は大手外資系企業でエンジニアとして設計業務を担当し、忙しい日々を過ごしていました
仕事も順調で、エンジニアとしての充実感を味わい、順調にキャリアを積んで昇格も同期の中では早い方。。
当時は仕事への情熱からか、深夜、徹夜は日常茶飯事で週末も仕事に追われる日々が続いていました
現在の企業ではコンプライアンスが強化されているので考えにくいですが、当時はまだまだ長時間労働が評価の対象になるような古い体質で、私もどっぷりと浸かっておりました
社畜。。。。まさにそんな表現がピッタリの状況だったと思います
しかしながら、収入も満足できる額をいただいていたので、休日も少ない社畜生活でもそんなに会社に不満はありませんでした
むしろ満ち足りていて、このままでも人生良いかなって思うことも。。。
そんな小さな自己満足に浸っていたある日のこと
まったく予想もしなかった事が静かに忍び寄りました
いきなり、なんの前触れもなく。。。
会議で普通にメモを取ろうとしたんですが。。。
んっ? 手が動かない??
ペンを動かそうして力を入れると手が固まっていくようなイメージです
何が起こっているのか理解できず、頭の中は真っ白。。。
数分間、隣の人に言うに言えない状況でじっと耐えてました
とりあえず自分を落ち着かせ、ゆっくりと少しずつほどくように手を動かしてみると接着剤で固定されたような感覚がなくなり不思議なことに手は動いたのです
どういう事なんだろう?
脳疾患であれば症状は継続して和らぐ事もないのでは?
ひたすら自問自答を繰り返す。。
会議が終わり自分のデスクに戻り、もう一度ペンを持って試し書きをしようとするとやはり動かないばかりか、何か以前とは感覚が違う事に気がつきました
通常、ペン持ち方には固有の癖があり、意識しない状況でもすぐに対応できるものですが、どんなにペンを握り直してもしっくりこない感覚でした
いつもどのようにペンを持ち、どの程度の筆圧をかけていたのか、不思議と思い出すことができないのです
昨日まで普通に筆記していた事が翌日には全くできない状況。。。
なんとか頑張って筆記するもミミズがはったような字。。。幼少期から書道を学び、書体には多少の自信があっただけにショックはとても大きいものでした
この異変は続き、どんなに頑張っても症状は改善されず、この日以降、利き手での筆記ができないどころか、PCのマウスを持つと同じような感覚が襲うようになりました
どん底の気持ちで放心状態が続いていましたが、筆記時とマウスを持つ状態では症状が出ますが、他の状況では何も支障が出ていない事が分かり、少し冷静になってから脳神経外科を受診しました
数回の精密検査の後、医師から私に告げられたのは『局所性ジストニア』という診断でした
この病気は別名『イップス』とも呼ばれ、プロの筆記者やピアニスト、プロゴルファーなど多くの職業で発症例がある病で、当時においては有効な治療法が存在しませんでした
私は病名、発症する職業の精神的状況を考察し、自分を重ね合わせた結果全てを理解しました
1年ほど通院して身体をリラックスさせる安定剤などで治療しましたが、私の症状に対してほとんど効果を示さず、時間が経過するほど絶望感が広がる結果となりました
その時の通院してる気分は、大海に小舟を出したようなもので、自分は無力で、波に翻弄されているように感じてどうしょうもない無力感を覚えています
私は設計の仕事を諦めざるを得ない状況に立たされていました
会社に状況を説明すると、同期の人事担当者が動いてくれて、設計から他の技術部署へ移動する事になり私の長い社畜人生が終わる事となります
有効な治療法が無い状況なので、自分なりに病気の対処法を調べ、知人や専門家の方からのアドバイスを受け、今までの生き方がストレスまみれでいかに有害であったのか知る事になります
当時は毎日、後悔ばかりでした
治療法がない状況でしたので、自分なりの対処法を考えた結果、焦らず、急がず、怒らずというリラックスした生活がジストニアには有効な方法ではないかと考えてスローライフを実践するようになりました
以前はここまでと決めた仕事量は全て処理していましたが、もっとゆるく行こうと決めて常に7割ぐらいの仕事量にセーブし、他人に依頼したりと今までの仕事への価値観を全て捨てました
仕事のアウトプットに何か変化があったのか?と考えるとプロジェクト案件の未達もないですし、仕事もスムーズに流れました
組織の中ではどうにでもなるものだと改めて実感できた事も大きいです
また、筆記具も今まで使用していた物のパターンを変えることで脳を欺く方法も存在することを知り、文具探訪が始まった次第です
私の場合ですが、筆記具は大きさ、重量、太さ、材質などの違いがあり、脳が一定のパターンを察知した際に症状が出てくる感覚があるので、筆記具によってはジストニアをかなり抑え込む事ができています
文具探訪とスローライフのおかげで徐々に症状は和らぎ、脳が正確な感覚を取り戻す一助となり、絶望から抜け出すための安息の場となりました
現在、スローライフと文具探訪を実践することで、私の生活は大きく変わりました
局所性ジストニアと共存しながらも、充実した日々を楽しむことができています
まだ完全には元の筆記はできていませんが、7割ぐらいの感覚が戻りつつあり、書を楽しむこともできています
まだまこれからも試行錯誤は続いていくと思いますが、現在では文具探訪は意味を変え、私にはなくてはならない趣味となり、クラフトマンシップを感じられるような作品と作家さんとの出会いは至福の極みです
これらの経験から、私はスローライフと文具探訪を大切にし、同じような悩みのある方へ情報を共有できればと考えています