2年生の新学期、女子生徒が転校をしてきた。彼女の名前はかおり。
お父さんの仕事の都合で、海外から帰国してきた、いわゆる帰国子女である。帰国子女だから、当然英語は堪能であったが、それだけではなく、数学や科学、現代国語も得意で、スポーツも万能。あっという間にクラスの、いや、学校中のアイドルになっていたのであった。
かおりとおなじクラスの進。彼もご多分にもれず、彼女に好意を抱いていた。しかし、進の彼女への思いは他の男子生徒とは違っていた。少し遅い初恋であった。しかし、そんな思いとは裏腹に、かおりへの思いを伝えずにいるのであった。
GWを前にした、ある日、全校あげての体力測定が行われた。当然、かおりも参加をしていた。しかし、かおりは全校生徒のアイドル的存在。男子生徒全員が彼女に注目をしていたのであった。
「はい、つぎ山崎!」
100m走の測定である。
「ヨーイ!バーン!」
彼女は合図と同時に駆け出した。
「すげー!かおりのやつ、メチャクチャ足が速いぞ!まるで、バイオニック・ジェミーだ!」
校庭のあちこちで、歓声があがる、いや、驚きの声だ。そんな歓声のなか、かおりは、あっという間にゴールインしていた。
「や、山崎。7秒43!」
「すげー!世界記録更新だぞ!」
「オリンピックに出たら金メダルだ!」
進も、そんな歓声のなかで一人、彼女を見つめていた。
「かおりちゃんって、頭もよくてスポーツも万能。足も速いし、まるでスーパーガールみたいだ…」
進の他にも彼女の姿を遠くから見つめている人物がいた。この高校の体育の教師、あんなであった。
彼女は、美貌と豊満な胸で、男子生徒の憧れのマドンナ的存在であったが、とても女性とは思えない運動神経と身体能力を持ち、生徒達からは、スーパーウーマンと呼ばれていた。
「山崎かおりさんね。あの子、普通の女の子ではないはずだわ。きっと…」
こんどは握力の測定であった。かおりの順番がまわってくると、いつのまにか人だかりができていた。握力の測定を記録しているのは、体育教師あんな先生であった。
「さあ、こうやって、握力計を握ってね
」そう言いながら、あんなは生徒の目の前で握力計を軽く握った。
「はい。こうやって数字が出ます。先生の握力は120kgってとこね」
「す、すげー。やっぱりあんな先生はスーパーウーマンだ…」
どこからともなく、声があがる。
「じゃあ、最初は山崎さんから、いきましょうか。いまの見ていたでしょ?」
かおりはあんなに促されると握力計を握った。しかし、あまり力を入れていないようであったが…
「先生、これでいいですか?」
かおりはあんなに握力計を渡した。
「あなた、あんまり力はなさそうね。山崎さんの握力は157kg…?あら、なにかの間違いかしら…」
すると、あんなは小声でかおりに言った。
「山崎さん、あとで職員室に来て。話があるの」
あんなはそう言うと
「はい、山崎さんの記録、63kg。すごいわね。男子生徒でもこんなに強い握力の子っているかしら?」
気がつけば、学校をあげての体力測定も、かおりの一人舞台で終わっていた。進は体力測定が終わり、着替えをしようと教室に戻る途中、校庭の隅にいるかおりの姿が目に入った。かおりは汗をかいたので、Tシャツを脱ごうとしていたが、そこでは、とんでもない光景が目に入ってきた。
「え?かおりちゃん?その姿は…」
進が見たものは、かおりがTシャツを脱ぐと、その下にはブルーの地に「S」のマーク。
「やっぱり、かおりちゃんって、本当のスーパーガールだったんだ…」
しかし、進はかおりのことを思い、この秘密を誰にも話さず、一人胸の奥にしまったのであった。
…放課後、かおりは、あんなのところへ行こうとしていた。玄関のところで、ちょうど、あんなと出会った。
「あ、あんな先生。」
「あ、山崎さん。ちょうどよかったわ」
しかし、そのときのあんなの目は金色に輝き、かおりの制服の中を透視しているように見えたのだ。
「…やっぱり、そうなのね。山崎さん、あなたは普通の女の子ではないでしょう?どうやら、私と同じ星の人みたいね」
「先生、いきなりヘンなことを言わないでください。私、なにかヘンですか?」
すると、あんなはかおりの耳元にささやいた。
「山崎さん。ここでは誰が見ているか分からないわ。体育館の教員室に来て。ここなら誰もこないわ」
あんなは、そう言うとかおりの腕を引いて促した。2人は体育館の教員室に。
「かおりさん、ここなら誰も来ないわ。先生もあなたと同じ超能力を持っているの、体力測定のとき、私の握力を見せたでしょう?あれは、本当の力の10分の1も出していないわ。私が本気になれば、あんなもの、簡単に握り潰せるわ。でも、あなただって同じことできるでしょう?」
あんなはかおりに、そう言いながらジャケットとブラウスのボタンを外し始めた。
「せ、先生!」
かおりは、あんなの方を見て大きな声を出した。ジャケットとブラウスのボタンを外し、あんなの豊満な胸元には、かおりと同じ「S」のマークが入った、青いTシャツのような姿が現れていた。
「どう?これでわかったでしょ?」
あんなは、そういうとかおりにニッコリと微笑んだ。
かおりが転校をしてきて数ヶ月がたっていた。進は相変わらず、かおりへの思いを打ち明けられずにいた。ある日、進は意を決してかおりの家へ行く。かおりの家は進の家の近くといえば近くであるが、車の往来の激しい県道をはさんでいた。
進むが家を出ると、ちょうどかおりが道路をはさんだ反対側を歩いていた。
「あ、かおりちゃーん!」
かおりへの思いを打ち明ける気持ちでまわりがまったく見えなくなっていた進は道路に飛び出していた。進の声が聞こえたほうを振り向く、かおり。すると、乗用車が進に向って走ってきた。
「あ、進くん!あぶない!」
かおりはとっさに道路に飛び出していた。
キキキキー!
進は気がつくと目の前に車が。
「あ、ひかれる!」
そう、思い、もうだめかと思った瞬間、目の前にピンクの服を着た少女が現れた。そう、かおりであった。彼女はとっさに道路に飛び出し、乗用車を持ち上げていた。
「あぶないじゃないの。進くん
」そう言いながら、かおりは事も無げに車を道路に下ろしていた。
「ば、バカ野郎!あぶないじゃないか!」
ドライバーも一瞬にして起きた出来事に、そう怒鳴るしかなかった。それも、そうである。自分の車の目の前に少年が飛び出し、ひき殺すと思った瞬間、目の前に一人の少女が現れ、車を持ち上げてしまったのだから…
「か、かおりちゃん…。そ、その車…」
「進くん、もう隠し事はなしにするわ。これで私の秘密、わかったでしょう?それで、進君の隠し事って、なぁに?」
「…」
進はかおりへの思いを思い切って打ち明けた。
「お、おれ、まえから…、かおりちゃんが転校してきたときから、好きだったんだ。でも、打ち明けられずにいた…。でも、きょうこそ、打ち明けようと思って、かおりちゃんの家に行こうと思って、家を出たら、かおりちゃんが家の前を歩いていたから、無意識のうちに飛び出していたんだ。それで、あんなことに…ごめんね」
「う、うん。いいのよ。でも、私がいてよかったわ。もし、他の人だったら、進くんは車にひかれていたのよ。」
「かおりちゃん、本当にありがとう。助けてくれて」
「そうだ、進くん、私の家に来ない?」
「え?かおりちゃん。家に行っていいの?」
「いいのよ。きょうは、だれもいないし、私のこと好きって言ってくれた人、進くんが初めてなの」
「うん、じゃあおじゃまするね」
かおりは進を家に案内した。
「へぇ、かおりちゃんの家ってお屋敷だね。でも、こんな大きな家、いつできたんだろう。気がつかなかった…」
「うふふふ」
「でも、不思議だなぁ。かおりちゃんみたいに美人でスポーツも万能で、なんでも出来ちゃう女の子が、なんでそんなにもてないのかなぁ?」
「みんな、好きになるけれど、私がマッハで走ったり、怪力を見たときに、怖くなるみたいね。だって、ふつうの女の子なら、いや、人間ならさっきみたいに自動車を持ち上げたりできないでしょう?」
「でも、なんでかおりちゃんは、できるの?」
「うふふふ。それはね…。」
かおりは、そう言いながら服を脱ぎはじめた。
「か、かおりちゃん…」
「これで、わかったでしょう。私の超パワーの秘密…」
「やっぱり、あのときの姿は夢じゃなかったんだ…」
「あのときの姿?」
「うん、かおりちゃんが転校してきてすぐの体力測定の日、僕が教室に戻ろうとしたとき、かおりちゃんが校舎の裏で、Tシャツを脱いでいるのを見たんだ。そうしたら、いまみたいな青いシャツが見えて同じSのマークも見えた。でも、そのことは、誰にも言っていないよ。そんなこと言っても誰も信じないだろうし、これって絶対かおりちゃんの秘密だと思ったからね」
「ありがとう。でも、もういいわ。実は私、もうすぐここを離れなくてはいけないの。新しい任務地よ。ここは平和すぎるの。あしたのお昼駅前の広場にきて。あそこなら、もう電車がこないからあまり人がこないわ」
「うん、わかった。じゃあ、あした…」
進はかおりとの別れの予感を感じていた。
次の日のお昼、進は駅前にいた。この駅は去年の夏廃止になって、いまは使っていなかった。駅前のタクシー営業所には所在なげに運転手が待機していた。
そのタクシーも無線でお呼びがかかり、営業所を出て行った。
タクシーと入れ替わりにかおりが現れた。
かおりはスーパーガールに変身していた。普段のおさげ髪にスーパーガールのコスチューム。手を腰にあて、仁王立ちのかおり。
かおりの身体はいつにもまして、たくましくなっていた。
「あ、かおり…」
「進、これが私の本当の姿なの。ビックリした?」
「そんなこと、ないよ。いつものかおりより、なんか、強くてやさしい感じだよ」
「ごめんね。もうすぐ行かなくちゃ」
かおりは、クルリと後ろを向いた。
「おい!スーパーガールが泣いちゃおかしいぞ!」
「じゃあね!」
かおりは空へ飛んで行った。あっという間に姿が見えなくなった。
進はいつまでも、かおりが飛んで行った空を見つめていた。その頬には一筋の涙が…。
翌朝、進むのクラスの朝のホームルーム。
「みんな、おはよう。えぇ、突然だが山崎がお父さんの仕事に都合で急遽転向をすることになった。ブラジルだ。飛行機の都合で、すでに向うへ行った。山崎はみんなに『短い間だったけど、楽しかった。またどこかでみんなに会いたいです』とメッセージを伝えてくれって、言っていたぞ」
進は担任の話に上の空になり、かおりのことを思い出していた。
「こんどはどこの星に行ったんだろう。スーパーガールのかおり…」
-おわり-
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