おばあちゃんからの、なにか意味ありげなメールから数ヵ月、メグとその家族はいつものようにパパの車で買い物に出かけた。
「パパ、このまえみたいに車のキー忘れちゃダメよ」
「わかってる。もう、昔の話はいいの!」
パパは思わず、口うるさい娘にの頭にゲンコツをあげそうになったが、手をひっこめた。
「おー、あぶない、あぶない、こんなカワイイ女の子に手を出したら、こっちがケガをするところだった。なんて言ったって、うちのお嬢さんは鋼鉄の身体を持つ不死身の美少女だからね」
「もう、パパったら、こんな乙女になんて失礼なことを言うの!」
メグはパパを叩くふりをした。
「おっと、危ない!こんなのに叩かれたら、肩が粉々になっちゃうよ!」
パパは、そういいながらメグの腕をよけたのだ。パパは、まだ、小さなメグをお守りしているとき、じゃれあっていたら、腕をつかまれ、骨折をした痛い思い出があるのだ。
ゴン!
メグの腕が駐車場の照明塔にぶつかった。ラリアートをくらった照明塔は見事におじぎをしている。
「メグ、だめじゃない。少しは力を加減しなさい!」
ママは、そういうと曲がった照明塔を元通りに戻した。それを一部始終見ていた男は、目を丸くして「なんなんだ、あの怪力親子は?」とつぶやいていた。
ピロロロロ!パパの携帯が鳴った。メールだ。
「ん?TDK-362-1/B?なんだ、このネームは?」
すると、ママが「あ、それ組織からのメールよ。パパ、携帯貸して!」
ママは、血相を代えてパパから、携帯をもぎ取った。力が思わず入りすぎ、あやうく携帯を握り潰すところだった。いつも、どんなときでも冷静なママが珍しいことである。
「あ、たいへん、カリフォルニアのジュンコが強盗と睨み合いをしているから、HELPに行けって、命令だわ。メグ、パパをたのんだわよ!」
そういうか言わないうちにママは、駐車場の隅の木陰にかけ出した。残像がのこり、ママの走ったあとは風を切る「ゴー」という音がしていた。ママが木陰に隠れると閃光が走りやがて光の球は空へロケットのように上がっていった。ママはスーパーウーマンに変身し、カリフォルニアへ飛んでいったのだ。
「パパ、聞いていい?」
「ん?なにを?」
「パパは、なんでママを好きになったの?」
「まえにも、聞いたな。そのこと。もう、メグも大人だし、本当のことを言うよ。ママは、パパの命の恩人なんだ。それと同時にパパはママの本当の姿を知ってしまったんだ。だけど、ママの全てを知って、おれは、この人と生まれてくる子供を守るんだ!って思ったのさ。もっとも、いまは、そのママとメグに守られっぱなしだけどね。強くてキレイなスーパーウーマンと、強くてカワイイスーパーガールがいつもそばにいてくれるだけで、パパは心強いのさ。」
「ふーん。ねえ、パパ。買い物終わったら、ドライブに行こうよ。もし、遅くなったらメグが車とパパを持ち上げて…シュワッチ!」
「そうだな、たまにはカワイイ娘を連れて行こうかな。」
買い物が終わり、メグとパパは久しぶりにドライブへ。
「どうしたんだろう。ずいぶんひどい渋滞だなぁ。そういえば、反対車線も車が全然来ないな…」
「パパ、あそこの交差点で、トレーラーが立ち往生してる。曲がりきれないみたい。でも、後ろだけずらせば、だいじょうぶかも。」
「メグ、行くか?スーパーガールメグの初仕事だ!」
「うん、行ってくる!」
メグは、車を降りると、いつのまにかスーパー少女メグに変身していた。
「運転手さーん、トレーラーの後ろ、少し動かしますね。」
ググッ!メグがトレーラーの後部バンパーに手をかけると、車輪が浮き、後部は路側帯のほうに動いた。
「いけない。バンパーがへこんじゃった。元に戻さないと…」
メコッ

メグがバンパーのへこんだところへ指を当て、ギュッと押すと、元に戻ってしまった。
トレーラーの後ろの車に乗っていた男は、目の前で起きる、信じられない少女の行動に、口をアングリと開けて見ているしかなかった。
数ヵ月後、メグ一家に大事件が起こった。
留守にしてた、メグの家。メグが帰ってきて、留守電を再生すると…
「だんなの幸次郎さんは、預かった。身代金1億7千万と、○×◆製薬の新薬のデータシートだ。約束は24時間後、明日の3時45分だ。場所は港の13番倉庫だ。待ってるぜ」…
メグは、ママの携帯に「緊急事態発生!至急帰宅せよ!」とメールした。
メールを見たママは、5分もしないうちに、家に帰ってきた。じつはママは、クラス会で米子に行っていたのだ。
「さすが、スーパーウーマン!弾よりも速く飛んできたね。ママ、そんなことよりこの留守電聞いて!パパが、パパが危ないの!」
メグは、泣きながらママに留守電を聞かせた。
「ママ、○×◆製薬ってパパの会社だよね。」
「…う、うん」
ママの返事は上の空だった。ママは結婚する直前、パパが事件に巻き込まれたことを思い出したのだった。パパは、会社の重要書類を届けるため、アメリカ、カリフォルニアへ出張だった。パパは、ロスの空港で乗り継ぎをするため降り立った。そのときに、マフィアに襲われ、拉致されたのだった。そのことをニュースで知ったママは、アメリカへ飛び立った。飛行機なんか乗らない。自分で空を飛んで行ったほうが遥かに速いことは分かりきっていた。
「幸次郎さんが、あぶない。私の正体がバレてもかまわない。幸次郎さんが無事なら…」
廃墟となった、古い建物。中には鉄格子があり、その中でパパは、ロープに縛られ、拉致されていた。
バーン!
壁が突然崩れ、日の光が差し込めたその光の中にはスーパーウーマンの姿があった。もちろん、それは結婚する前のママである。
彼女は鉄格子に手をかけた。ググッ!スーパーウーマンの怪力で曲げられた鉄格子。彼女は鉄格子の中に入り、ロープで縛られたパパの前へ。
「き、きみ、郁子?その姿は…やはり、そうだったんだ。おれのために。ありがとう」
「さあ、もう安心よ。どんなやつか、わからないけど、私にはかないっこないわよ。私は地球最強の美女、スーパーウーマンよ!いま、ロープはずすわね。」
プチッ!彼女がロープに手をかけると、まるで糸をつまむように切れていた。
「ママ!どうしたの?少しヘンよ」
「メグ!パパを助けに行くわよ!どんなことがあっても、パパに怪我をさせてはダメよ!」
怒りに満ちたママの形相は夜叉のようであり、溢れ出すエネルギーにママの身体は筋肉がビルドアップして鋼鉄の鎧を身に纏ったような体形になっていた。ママのあふれるエネルギーを浴びたメグの身体も少女の身体から、筋肉の鎧を身に着けたようにビルドアップしていた。
「さあ、行くわよ!」
もう、時間がない!
ドッカーン!
鋼鉄の身体に変身した、2人のスーパーウーマン。彼女たちはマンションの鉄のドアを破り、空へと飛び立った。もちろん、行き先は、港の倉庫。
空を飛ぶメグとママ。ママは、メグに作戦を提案した。
「メグ、倉庫についたら、元の姿に戻って。そして、パパのいる倉庫に入るの。もちろん、怪力で扉を破壊してもいいわよ。倉庫に入ったらわざと犯人に捕まるの。そうすれば、なにもしなくてもパパのところに行けるわ。パパのところに行ったら、パワー全開で大暴れしていいわよ。鉄格子を破るなり、壁を蹴ってアナを開けるなり気の済むまでいいわよ。あ、そうそう。パパは空を飛べないから、メグがパパを抱いてあげてね。メグの大人になった身体を見てきっとパパはビックリするわ。ママはその間に犯人をやっつけるわ。あんなの、私一人いればじゅうぶんよ。それじゃあ、戦闘開始!いくわよ!」
地上に降りたメグは、普通の少女メグに戻った。もっとも、その中に秘められたパワーは人間の常識を遥かに超えているが…。
倉庫のまえに立つメグ。
バキッ
ガラガラガラ…
メグは倉庫の扉にかかった南京錠を紙を引きちぎるように破壊した。
「なによ。こんなもの。私には紙のおもちゃとおなじよ。」
メグは扉を開けて倉庫の中へ。
「あ、パパ、パパ
」「おう。ダンナ。お嬢さんもきたんですか。飛んで火に入るなんとやらだ。お嬢さんも中に入りな!」
メグをロープで縛りパパの入る鉄格子へ入れた。もちろん、犯人は目の前のロープで縛られた少女がスーパーガールであることなんか知らない。ママの作戦どおりである。
犯人が倉庫から出ると同時にメグは自分のロープをほどいた。いや、引きちぎったのだ。メグが深呼吸をすると、豊かな胸がさらに膨らみ、全身に力を入れると、少女の身体は筋肉で倍に大きくなった。と、同時にロープは引きちぎれてしまったのだ。
自分の娘のあまりにもすさまじい変貌ぶりにパパは、あっけにとられていた。
「メグ、いつのまにかそんな能力を…」
「パパ、いまロープをほどくからね。でも、メグが合図をするまで、縛られているふりをしてね。ママの考えた作戦なの」
「うん、わかった。さあ、メグ思う存分暴れていいぞ。パパの分もだ
」スーパー少女メグは大声を出した。
「早く、こんな狭いところからでしてよ!パパを助けてよ!」
犯人が鉄格子の中で騒ぐメグの声を聞いてとんできた。
「こら、ガキうるせえぞ!かわいい小娘だと思って甘やかしたらこうだ!だまらないと、こいつで撃ち殺すぞ!」
そう言いながら、ライフルをメグに向けた犯人は筋肉少女に変身したメグの姿に声を失っていた。無理も無い。さっき、ロープで縛り上げて鉄格子の中に放り込んだ少女が、ロープから抜け出しボディースーツを身に纏った筋肉ウーマンに変身していたのだ。
「おじさん、そんなおもちゃ持っていても私には通じないわ。チョッと貸して!」
メグは犯人の持っているライフルを取り上げると、自分の胸に銃身を当て、引鉄を引いたのだ。
バキュ~ン

ライフルの弾丸は、メグの胸に弾き飛ばされ、天井に突き刺さった。そしてメグはライフルの銃身をねじ曲げた。
「だから、言ったでしょ。こんなおもちゃ、私には通じないのよ。おじさん、こんどはわたしの番ね。」
メグはこう言うと、鉄格子をねじ曲げ、中から出てきた。
「おじさん。せっかくだから、握手しようよ!」
こう言いながら犯人の手を握るメグ。
「うわー、いてー!手が砕ける~!」
犯人はあまりの激痛に気を失った。
「おじさんて、意気地がないのね。もうすこしがまん強いかと思ったわ。」
犯人の悲鳴を聞いて駈け付けた、仲間たち。しかし、その後ろにはひときわ大きな女性が。そう、スーパーウーマンのママであった。
「あなたたち!もうここからは逃がさないわよ。私に逆らうとこうなるわよ!」
ママは、叫びながら、手にもっていたライフル銃をグニャグニャにねじ曲げ、犯人たちの前に放り投げた。
「このやろー!」
必ず、逆切れして、刃向かうやつがいるものだ。このオオバカ野郎、メグに向かって鉄パイプを振り上げてきたのだ。
ボコッ!メグは鉄パイプをよけもせず、手で受け止めようともしなかった。パイプはメグの胸に当たった。しかし、鋼鉄の美少女メグの胸、こんなもの通用するわけもなかった。みごとにメグの胸の膨らみが鉄パイプにコピーされたのだった。
「おじさん、どう?これでもこの子、まだ小学校6年なのよ。だから言ったでしょ、私たちに逆らってもムダよって」
ママはそういうと、鉄パイプを取り上げて半分に曲げてしまった。
パトカーのサイレンの音が聞こえてきた。
「おじさんたち、もう、鬼ごっこは終わりにしようよ。」
メグの言葉で、ママは鉄パイプを曲げて、手錠代わりにし、犯人たちを縛り上げた。
「ママ、私たち、警察に見られたらいけないから、先に帰ろう。」
「パパ、先に帰ってるわね。私たちのことはナイショよ。」
ママはそう言いながら、パパにウィンクをして、メグと空へ飛んでいった。
「おまえら、拉致する相手を間違えたみたいだな。おれの家族はスーパーウーマンとスーパーガールなんだぞ!」
パパはそう言いながら、メグたちの飛んでゆく姿を目で追っていた。
おしまい。
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