『○☆市で発生した誘拐事件の続報です。昨夜突然解放された少年の証言で誘拐犯のアジトが発見され警察が踏み込みましたがその時には誘拐犯たちはすでに全員瀕死の状態 で…』
「美穂
飲み水おいとけっていっただろうが
」社内の敷地でトラックに乗った男が二階にいる美穂を怒鳴りつけた。
「あ、山田先輩。ごめんなさい。今もっていきます。」
美穂は冷蔵庫からミネラルウォーターを出して車庫とつながる階段をおりた。
「グズグズするな
このノロマ
」「ご、ごめんなさい」
「ったく、何をやらせてもグズな女だ。向こうの連中と一時間ほどで戻るからそれまでに飯の用意をしておけよ。三人分だ。ん?聞いてるのか?」
「あ、…は、はい」
「用意できてなかったら殴りとばすぞ。このグズ女が!!」
先輩の山田が会社からトラックで出て行くのを見送った後、美穂はつかれた表情で二階に戻る。
「あーあ、昨日は誘拐犯の退治であんまり眠れなかったのよね。頭がボーっとしちゃってる。」
しかし次の瞬間、美穂は何かに気づいたように急に窓へ向かって走った。窓から空を見上げる。美穂の超人的な感覚が何かをとらえたようだった。
「……!!!何か近づいてくる。……いけない!!」
美穂が腰に手を当てると同時に美穂の身体が光に包まれた。美穂の姿は仁王立ちのスーパーガールにかわってい た。 そのころ、山田の乗るトラックは市街を走っていた。車の通りもそれほどなく、スムーズに進んでいた。 しかしその時突如、赤と銀を織り交ぜたビキニコスチュームの女性が目の前の道路に降り立った。
「くそっ!!」
山田はとっさにブレーキとクラッチを踏んだ。キーーーッ
という急ブレーキ音があたりに響く。しかし女性は気にする様子もなくあたりの風景をキョロキョロ見回している。 頭にきた山田は叫んだ。「なんだ、てめーは!?道路のど真ん中に立ちやがって!!邪魔だ!!どけ!!!」
しかし女性は山田に見向きもせず、あたりを見回し続けて いる。
「この女!!聞いてるのか!!?ひき殺すぞ!!」
ようやく彼女が山田の方を見た。
「さっきからうるさい男ねぇ。この星にもスーパーガールがいるでしょうに、この星の男は女を恐れないのかしら?」
彼女はそう言うとトラックの横に周り、車の底に片手をやるとそのままぐいっと持ち上げて片輪を浮かせてしまった。
「うわあああっっ!!」
突然傾いた車内に山田は悲鳴をあげた。この女性の細腕によって持ち上げられたとしか考えられない。彼の顔に恐怖の色が浮かぶ。彼女はその様子を見るとニッコリ笑い
「ちょっと質問してもいいかしら?」
と言った。山田は身体を震わせながら力なくクビを縦に数 回振った。
「この辺に美穂ってスーパーガールがいるはずなんだけど。知らないかな?」
「み、美穂…?美穂ってうちの会社の…?」
「知ってるのね?どこにいるの?」
彼女が目を細めた。戦慄が山田の体を走った。
「あ……。あ、あの…あの白い建物に……。」
震える手で自分が今出てきた会社を指す。
「そう、ありがと」
彼女は再び笑顔になった。
「…美穂がスーパーガール?なんのことだ?大体この女は 一体?…」
山田がそんなことを考えている間に突然彼女の“死刑宣告”が下った。
「じゃ、お礼に宇宙旅行をプレゼントよ。」
「…へっ!?」
彼女はもう片方の手もトラックの底にあてた。すると右の 車輪も地を離れトラックは完全に持ち上がった。
「うわあああ」
山田は悲鳴をあげたが、どうすることもできなかった。彼女はそのままトラックを雲めがけて放り投げた。トラックはすさまじいスピードで飛び、やがて山田の悲鳴とともに空のかなたに消えた。彼女はしばらく空を見あげ、薄く笑いながら彼の最期を見届けていたが、やがて何かに気づいたように目を細めた。
「…来たわね」
彼女はそうつぶやくと三歩歩き四歩目に膝を曲げて地を蹴った。その勢いで身体が浮き上がりそのまま超スピードで自分が投げ飛ばしたトラックを追って飛び去っていった。
その頃、山田のトラックは雲を次々とつきぬけさらに上へ上へと突き進んでいた。まるでスピードがおとろえる様子がない。このままだと本当に宇宙まで飛ぶかもしれない。 山田はもはや死を覚悟した。しかしその時、彼の視界の端に突然、派手な青赤黄三色が飛び込む。驚いて横のフロントガラスを見るとそこにはS マークのついたブルーのコスチュームと赤いマントとス カートをはいた女性が飛んでいた。彼は我が目を疑った。 すさまじいスピードで飛ぶトラックに女がそれに勝るスピードで追いつき自分のトラックの横を飛んでいる、それだけでも信じられないがさらに信じられないのはその女が間違いなくあの美穂であることだった。美穂は彼のトラッ クに手をあてて山田が衝撃を受けないように少しずつスピードをゆるめていってやがて止めた。止まったトラックは美穂の細腕だけに支えられて雲の上に浮いていた。
「先輩、大丈夫ですか?」
それが美穂の第一声だった。
「あ…あ……」
山田は声がかすれてまともな返事ができなかった。しかし 彼女はその様子を見て無事と判断したようだった。
「あたしが守ってあげるからもう心配しないで。」
と声をかけると、雲の下に目をやった。 その時、山田の視界にも雲にかざ穴が開き何かがこちらへ 飛んでくるのが見えた。それはトラックごと自分をここま で投げ飛ばしたさっきのビキニコスチュームの女だった。 美穂の前で綺麗に止まる。
「ひぃぃぃ!!あの女だ!!!」
彼女は怯える山田を無視してトラックを持ち上げている美 穂をじっと見つめる。
「やっと会えたわね。美穂」
美穂は答えた。
「この人は関係ないわ。地上に降りましょう。」
美穂はそういうと凄まじいスピードで降下した。
「うわああああ」
山田が悲鳴をあげたが、美穂の顔はけわしくスピードをゆるめることはなかった。しかし雲を突き抜けると美穂も着陸に備えてスピードを徐々に落とし、ゆっくりと着地。直後、すぐにビキニ女も降り立った。 美穂はトラックを地上におろすと
「先輩、トラックから降りてあたしの後ろに隠れて」
と言った。
もはや美穂とビキニ女のパワーは歴然。彼には美穂に守ってもらうしか助かる道がなかった。彼はトラックから降りて…というより転げ落ちて尻餅をつきながら美穂の後ろに隠れた。
「み、美穂!!た、助けてくれ」
そう叫んでいた。美穂はそんな彼をかばうように手と足を 広げて立つ。
「大丈夫よ。急いで終わらせて食事の用意をしておかなきゃ殴りとばされちゃうものね。」
笑顔でそう言った。天使と見間違うような笑顔で。自分の発言の愚かさこっけいさとともに彼女のあまりの美しさに、思わず顔がにやけた。 美穂はビキニ女の方に目をむけると、凛々しい顔つきで言った。
「この星は渡さないわ!!」
二人の女の地球の運命をかけた戦いがはじまった。
-つづく…かな
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