第43話『“金星”登場』


ボツリヌス達4人の前に現れた、金髪で灰色のパーカーを纏った少年。

???「みんなお待たせ!遅れてごめんね~」


開口一番、ノリの軽い口調で切り出す。そんな彼を、4人は取り囲む(悪い意味じゃない)。


サリンジャー「待ってたぞロイマチス。長旅ご苦労さん」


ロイマチス「ありがとうサリンジャー!」


ボツリヌス「それで、持ち帰って来た例の物を渡してもらおうか」


ロイマチス「そう急かさないでよボツリヌス~。はい、これね!」


そう言い、緑色に輝くメダル状の物を差し出すロイマチス。


ボツリヌス「…………うむ、感謝する」


と、不敵な笑みを浮かべながら、それを懐に仕舞うボツリヌス。


ロイマチス「へへん、どういたしまして。それより、みんなの周りで何か動きあった?」


エマ「ええ。まず、寝たきりだった私が復活したことと………」


キャサリン「それから、ホスゲンのやつがウサギ共に負けて死んだことかしらね」


ロイマチス「あー、そうなんだ。まあ、あのデブ親父は雑魚かったからどうでもいいけどね。それより、ヒソヒソは何処行ったの?」


サリンジャー「ああ。あいつなら今、例のウサギ共と戦ってる最中だ」


ロイマチス「へえー、なるほどね」


何か考え事しながら返答するロイマチス。そして…………


「あー、早く戦いたいなぁ。僕の持つ“金星”の力、存分に振るいたいよ…………」


そう呟きながら窓際に凭れ掛かる彼を、金色に輝くオーラが纏っていた。



同じ頃、ラサームタウン郊外の草原にて。

「はああああああっ!」


ヒソヒソと、彼の配下の悪夢獣・チュランテ目掛け剣を振り下ろすチシオ。


ヒソヒソ「ふん…………」


それに続くように、ディガルゴとスミゾメも技を繰り出す。


「ベムギストライク・トリシューラ!」
「フェンリルウィロー!」


放たれた技が、怪人に命中する。


チュランテ「ぐっ、おのれ…………」


辛うじて攻撃を堪え、反撃に転じる怪人。


チュランテ「これでもくらえ!」


口から吐かれた糸が、3匹の身体に巻き付かれる。

スミゾメ「っ!?」


チシオ「う、動けない………」


ディガルゴ「くそっ…………!」


なんとか糸を切り裂こうとする3匹だが、予想以上に強固なのでどうする事も出来ない。その間に…………


ヒソヒソ「さあ、一気に行くぞチュランテ」


チュランテ「はっ、ヒソヒソ様」


そう交わすナイトメア陣が、徐々に3匹に迫る。


スミゾメ「っ!?」


ディガルゴ「ま、負けてたまるかよ…………」


力任せに糸を引き千切ろうとするディガルゴ。


チュランテ「無駄だ」


と、邪悪な笑みを浮かべる怪人。だが…………


ヒソヒソ「っ!?」 チュランテ「馬鹿な!」


状況に反し、ディガルゴを絡む糸が次第に脆弱になる。


チュランテ「有り得ん!俺の自慢の糸が、こんなにも容易く…………!?」


唖然とした表情の怪人。そして…………


「あ゛っ、あ゛あああああっ………!」


今までに無い強烈な唸り声を発するディガルゴ。半ば錯乱状態の彼は、身体を覆う糸を跡形も無く引き千切る。


ヒソヒソ「…………っ!」


そして間髪入れず、チシオとスミゾメに巻き付く糸も、自身の剣を駆使し切り裂く。


ディガルゴ「うがああああっ!」


スミゾメ「っ!?ああっ………!」


チシオ「や、やった…………動けるようになった。ありがとうディガルゴさん!」


礼を言うチシオ。だが当のディガルゴは、一切返答すること無く改めてナイトメアに立ち向かう。


チシオ「…………?」


そんな彼の様子を、怪訝そうな表情で見つめるチシオとスミゾメ。その間に…………


ディガルゴ「悪いけどよ………俺達さっさと寝たいんだ。ここらで終わらせてもらうぜ」


そう言いつつ剣を構え、目測出来ない速度で怪人の元へ迫るディガルゴ。


チュランテ「っ!」


そして。


「コーカサストライク…」


気怠そうに呟きつつ、技を繰り出したディガルゴの一撃が、怪人の身体を貫く。


チシオスミゾメ「…………!」


チュランテ「ぼ…………」


僅かに呻いた怪人の身体が木っ端微塵に爆散。

そして爆風に包まれたディガルゴは、間髪入れず…………


ディガルゴ「てめぇはどうする?ヒソヒソ…………」


と、言い放つ。


ヒソヒソ「ふ、ふんっ……この次は必ず」


そう言い残し、直ちにその場を後にするヒソヒソ。




…………しばらくして、辺りが静かになったのを確認したチシオとスミゾメは、急いでディガルゴの元へ向かう。


チシオ「ディガルゴさん凄い!あ、ありがとうございます!!」


ディガルゴ「…………」


話し掛けられているのにも拘わらず、何故か放心状態のディガルゴ。


スミゾメ「ディガルゴ?どうしたのボーッとして…………」


ディガルゴ「……………えっ?ああ、なんでもねぇよ。さ、早く宿戻るぞ」


チシオ「…………?は、はい」


こうして3匹は深夜の草原を後にし、ラサームタウンへと引き返す。




…………ディガルゴの首筋に、怪人の“置き土産”が刺さってる事など、自身を含め誰も気づく由もなく。


次回に続く


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