《前回のあらすじ》
夜中に宿を飛び出し、単身郊外へ出るチシオ。そんな彼を追い掛け、連れ戻そうとするディガルゴの前に、悪魔の翼を携えた2匹のウサギが姿を現す。果たして、彼等の正体は………?

第42話『ズィキス族と毒蜘蛛』


ディガルゴ「誰だてめぇら………」


剣を構え、恐る恐る尋ねるディガルゴ。そんな彼の問いに、例の2匹は不敵な笑みを浮かべつつ答える。


???「俺の名はサザン。ズィキス族のアルナーブ星人さ!そして…………」

??「俺はコウヤ…………サザンと同じく、ズィキス族のアルナーブ星人だ」

彼等の言葉を耳にした途端、ディガルゴは小刻みに震え始める。


ディガルゴ「ず、ズィキス族…………だと!?」


チシオ「ディガルゴさん!あの2匹のこと何か知っているんですか?」


ディガルゴ「ああ…………この星にはコーネイン族とは別に、“ズィキス族”というのが存在していたんだ。でも、遥か昔に同士討ちが原因で滅びたというのを、クワナのやつから聞いたことがあるんだが…………」


そこまで言った時、例の2匹が割り込む。


サザン「イヒヒヒヒ!甘いなー。実はズィキスには、俺達という生き残りがいたのさ!!」


コウヤ「…………そういうこと、残念だったな。曖昧な話は信じるもんじゃねぇぜ」


ディガルゴ「…………!」


一瞬面食らい、困惑するディガルゴ。


サザン「イヒヒ…………さて、今度はこっちが話すぜ。単刀直入に言うけど、チシオのやつを俺達に引き渡してくれないか?」


ディガルゴ「っ!?」


チシオ「な、なんで俺の名前…………」


コウヤ「理由は後から教える。とにかく、俺達と一緒に来てくれよ。な?」


そう言いつつ、再びチシオの腕を掴むコウヤ。しかし…………


チシオ「い、嫌だ…………行くもんか!」


と、素早く腕を振りほどく。それが癪に触ったコウヤは…………


コウヤ「てめぇ、こっちが下手に出てりゃ付け上がりやがって………俺を怒らせると怖ぇぞ」


と、チシオ目掛け攻撃しようとする。そんな彼を…………


サザン「待て待て、傷つけるな」


と、サザンが制止する。


コウヤ「でもよサザン、こいつ!」


サザン「やり方が荒っぽいんだよお前は、昔からな…………まあ俺に任せとけって、イヒヒ」


そう言うと彼はコウヤに代わり、チシオに話し掛ける。


サザン「そう怯えるなよチシオ…………俺達は別にお前を襲おうなんて思っちゃいない。ただ、少しだけ力を貸してほしいんだ。俺達の“目的”の為にな。イヒヒ」


チシオ「……………?」


ディガルゴ「目的だと…………どういうことか説明して貰おうか」


そうサザンに問うディガルゴ。だが…………


「部外者は黙ってろ」


と、想像以上にドスの効いた声を発せられ、その場で立ち竦む。


ディガルゴ「…………っ!」


そうこうしている内に…………


サザン「さあ行くぜチシオー。心配すんなよ、こんなやつ(ディガルゴ)の傍にいるより、俺達と一緒にいた方が遥かに得だぜ。イヒヒ」


コウヤ「そういうこと。さ、早く来い」


チシオ「ううう…………」


尚も拒むチシオの腕を、無理矢理引っ張り連れて行こうとするズィキスの2匹。


ディガルゴ「クソガキっ!…………ぐっ!!」


助けようにも、先程の恐ろしい声を想起し身動き出来ないディガルゴ。




そこへ…………


「フェンリルロアー!」


背後からスミゾメが現れ、2匹目掛け攻撃を繰り出す。実は彼も、チシオが宿を後にする物音で目を覚まし、こっそりと後を追っていたのだ。


サザン「っ!」 コウヤ「ぐっ…………」


驚いた拍子に、チシオから離れる2匹。同時にスミゾメがチシオを奪還する。


スミゾメ「大丈夫?!チシオ君!」


チシオ「う、うん…………ありがとう」


突然の事で憔悴しているチシオは、弱々しい声でそう返すのが精一杯。


コウヤ「ちっ、次から次へと俺達の邪魔しやがって…………!ぶっ殺す!!」


苛立ちながら武器を構え、スミゾメを攻撃しようとするコウヤ。そんな彼を、サザンは再び制止する。


サザン「だから待てっつーのコウヤ。本当にお前は荒いなー…………あんな異星人如きに、無駄な力を使ってどうすんだ」


コウヤ「ぐ…………分かったよ」


そう言いつつ、武器を降ろすコウヤ。そして…………


サザン「イヒヒ、じゃあなチシオ。今日のところは見逃してやるけど、次会う時までに答えを用意しとけよ。いい返事を期待してるぜ」


コウヤ「…………ふん」


そう言うと2匹は、素早く地面の中へ潜るように去っていった。
彼等がいなくなった事を確認したチシオは…………


チシオ「よ、よかった…………どっか行った」


と、安堵の表情を見せその場に座り込む。そんな彼を、スミゾメは必死で宥める。


スミゾメ「チシオ君!何があったのか知らないけど、もう大丈夫だよ!!」


チシオ「う、うん………」


尚も弱々しい声で返事するチシオ。しかし、彼よりも激しく落ち込む者が1匹…………ディガルゴである。


ディガルゴ(ま、全く動けなかった。あの2匹の雰囲気…………言葉では言い表せない程恐ろしすぎる…………この、俺が…………!)


例の2匹が去った後も、恐怖でその場から動けないディガルゴ。悔しさのあまり、地に拳を叩きつける事さえも出来なかった。


スミゾメ「とりあえず宿に戻ろう…………ほら、ディガルゴも早く行こうよ」


ディガルゴ「あ、ああ…………」


小刻みに震えながら返答し、スミゾメ達と共にその場を後にしようとするディガルゴ。




…………と、その時だった。


スミゾメ「っ!?」


後方から響く爆発音。慌てて振り返ると、そこにはヒソヒソの姿が。


チシオ「あっ、あああ………」


ディガルゴ「おいおい…………嘘だろ?」


「一難去ってまた一難かよ」と言いたげの一同。そんな彼等の気持ちを他所に、ヒソヒソが口を開く。


ヒソヒソ「夜分遅くにすまん………すまんついでに、お前達の命を貰う。出でよ、我が下僕」


そう呟いた瞬間、彼の背後から非常に毛深い人影が現れる。臀部からは、細い鉤爪状の2対の脚(?)が生えており。蜘蛛のような出で立ちをしている。そして…………


ヒソヒソ「行くぞ、チュランテ


チュランテ「はっ、ヒソヒソ様」


互いに交わすと、そのままチシオ達に襲い掛かる2人。


スミゾメ「ああ、なんでこうなるんだ…………ディガルゴにチシオ君、早く倒そう!」


チシオ「う、うん………!」


ディガルゴ「おう…………分かったぜ」


未だに調子を取り戻せぬ2匹。劣悪なコンディションのまま、ナイトメアに立ち向かう。



その頃、戦艦内でも新たな動きが…………

ボツリヌス「…………ん?」


何者かの気配を察し、振り向くボツリヌス。


サリンジャー「どうした?」


ボツリヌス「この雰囲気…………“あいつ”だ。あいつが戻って来た!」


キャサリンエマ(っ!?)


サリンジャー「急ごう」


一斉に宇宙船の格納場所へと急ぐ4人。目的地に到着した彼等の前に現れたのは…………


キャサリン「あっ………!」


ボツリヌス「おお…………」


宇宙船のコックピットから、華麗に飛び出し着地する金髪の少年だった。

次回に続く


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