昨日はぽんこつチョップの「そらにふれる」を観に行ってきました。
チラシのあらすじだけ見たらオムニバス形式のヒューマンドラマに見えますが、いざ観て見たらそれぞれの物語が一つの壮大な結末に繋がる一大スペクタルでした。
それぞれの感覚を司り、代々受け継ぐに相応しい者に受け継がれる「天気屋」。
それはとある島国の巫女が現世に復活する為の大いなる秘術の一環だった。
とある施設で暮らす若者、理央は育ての親でもあるシスターから手渡された自主製作の本「WEATHER」を読み進める内に、その本に秘められた本当の意味を知り、戦慄すると同時に激しく憤るというもの。
主な登場人物
理央
主人公。施設の子供達と過酷な無茶振りをし合う毎日を送りながら、とある不思議な感覚と自分を弟呼ばわりする怪しすぎる巫女の幽霊に悩まされている。
ミゾレ
施設のシスター。若い頃は天気を操る力を持っていたが、ある日を境に使えなくなる。
理央に自作の本「WEATHER」を託す。
ミカ
中世ヨーロッパの時代に画家を目指す少女。一族の為に政略結婚するか、自分の夢である画家を目指すかのジレンマに悩んでいる。「視覚」の天気屋になる。
ギリコ
ミカに付きまとう商売が致命的に下手なアイスクリーム屋。リコの夢の成就の為に彼女の背中を押し、天気屋の力を継承させる。そして彼は・・・「味覚」の天気屋。
こころ
画家の天気屋の経営する店でアルバイトする少女。店長に憧れ、彼女の進めるまま自分の音を鳴らしてみる・・・それ以来彼女は「聴覚」の天気屋となり、その音が嫌いになる。
ゆっきー
こころの夫でみぞれの父親。先生とは旧知の間柄で得意料理は匂いはいいが味は微妙な焼うどん。悩みは反抗期の娘と自分が何時まで経っても老けない事。実は「嗅覚」の天気屋。
先生
ゆっきーとは旧知の間柄の大学教授。ゆっきーの不老不死の力に憧れ、その力を得ようと天気屋の謎に迫ろうとする。しかしそれは・・・・
みぞれ
ゆっきーの娘。母の死の事で父に憤りを感じながらも嫌いきれずにいる。そして町を襲った大洪水を機に父の天気屋の力を受け継ぐが、彼女は天気屋の理から外れた存在となる。
つまり彼女は珍しくも二代連続で続いた「嗅覚」の天気屋。
ポン
衰弱している所をミカに助けられた黒猫。それ以来年を経て人間に化身する能力を身に着け、天気屋を陰に陽向に見守り続ける。
卑弥呼
かつて日本に存在した邪馬台国の女王。天候を自在に操る力を持ち、偉大な女王として君臨したが寿命からは逃れられなかった。そこで彼女は五感を用いた転生の秘術を使って現世に復活しようとする。そして最後の「触覚」の天気屋が現れた時、彼女は・・・
・・・「WEATHER」を読み終えた時、理央はそれが卑弥呼に始まり、ミゾレの代に至るまで連綿と続いてきた天気屋の系譜の物語であり、同時にミゾレが理央にあてた遺書であることを知る。そう、彼こそが「触覚」の天気屋にして最後の天気屋だった。
そして彼は卑弥呼の弟の生まれ変わりでもあり、卑弥呼の転生を受け入れるための器でもあった。
ミゾレの死を目の当たりにし、一度は天気屋になることを拒絶し、卑弥呼の手にかかった理央だったが、黒猫の助けや代々の天気屋たちの憤りの心と対峙する事で遂に天気屋になることを受け入れ、そして現世への復活という妄執に取りつかれた卑弥呼をも打ち負かす。
理央は全ての怒りと悲しみを背負い、天気屋として生き抜いていく事を誓う。
それぞれのエピソードが人生の意味と愛情の形、その中で生きる人々の夢の追い方、そして生きる事の意味を最後の最後まで問い続けた作品だった。
*天気屋
それぞれのやり方で天候を自在に変える事ができる。
その力を持つものは基本的に受け継いだ時点の年齢のまま老いる事も死ぬこともないが、自分の後継者に相応しい適任者と出会ったら(もしくは気づいたら)、ほぼ自動的にその者に力を引き継がせることになる。そして力を失った先代の天気屋はその時点で死亡する。
ミゾレから理央に天気屋の力が移った時にミゾレがその場で死ななかったのは、ゆっきーとみぞれが血縁者同士という特別な関係だった事が関係しているからか、もしくは理央が卑弥呼に付きまとわれることに辟易して天気屋の力を使うことを拒絶し続けたからかはわからない。