【洋画】Saltburnソルトバーン② ネタバレ感想 | ROUTE8787 サンサクキロク

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いやぁ~面白かったですね。

面白くて、

つい☆5.0にしてしまったんですけど・・・・。

よくよく考えたら、

雪山の絆の☆5.0と同じ・・・というのは、

ちょっと、違うような気がして・・。

評価を、☆5.0→4.0にしました(笑)

 

観た直後は間違いなく面白かったんですけどね。

テーマとしての弱さが否めないかな・・・と。

 

では、ネタバレありで

感想を語りたいと思います。

(ちょっと、気持ち悪い記述があります)

 

  ネタバレありあらすじ

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フェリックスの家族と、

過ごす事になったオリバー。

フェリックスへの気持ちを募らせながら、

彼の家族と、歪な関係を築いていく。

 相変わらず、裕福な人間たちの中で、

異質なオリバー。

 ともに宿泊するファーリーの侮辱は

続いていたが、

彼もまたフェリックス家に

依存する存在であった(金銭的に)

 

 しかし、ある日、

フェリックスがオリバーを連れ出し、

オリバーの実家への車を走らせた。

 秘密裡にオリバーが会おうとしない母親に

連絡をすると、とても冷静で

支離滅裂ではなく、

息子に会いたがっている事を知ったのだ。

 嫌がるオリバーとともに実家に行き、

フェリックスは、

そこでオリバーの真実を知るのだった。

 

父親は生きており、

ヤクとは無縁のご両親だったのだ。

両親に愛されていたオリバー。

そして、両親にはオックスフォード大学で

首席なんだとウソをついていた。

 

 幻滅するフェリックスに、オリバーは、

「君と仲良くなりたかった。

こんな事、笑い話だろう?」

しかし、フェリックスは

「おぞましい」と言い、

彼に決別を告げるのだった。

 

翌日、寒空の下で、

凍死したフェリックスの遺体が発見された。

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 オリバーは、フェリックスのお墓で、

自慰行為を行い、泣き崩れた。

そして、

 弟の死に、ショックを受けた姉が、

自殺しているのも見つかった。

 

2つの悲劇に、フェリックスの母親は、

オリバーへ依存を強めるが、

それを良しとしない父親は、

いくら払えば、ここから出て行ってくれるのかと、

彼に冷酷に対応したのだった。

 

 その後、新聞でフェリックスの父親が

死んだ事を知ったオリバー。

カフェで、子供2人・夫を亡くした母親と 

再会を果たす。

 そして、オリバーにソルトバーンの

屋敷へ泊りにきて欲しいと声を掛けるのだった。

 

 ソルトバーンの屋敷で、

呼吸器に繋がれているのは、

フェリックスの母親だ。

 

その横で、オリバーはこの一連の出来事を

反芻していた。

 フェリックスの出会いから、 

すべて彼の計算通りだった。

自分を見限ろうとしたフェリックスに、

睡眠薬入りの酒を飲ませた。

弟の死にショックを受けた姉の傍に、

カミソリ刃を置いた。

 母親が、屋敷の管理をオリバーにまかせる・・・と書面にするのを確認した。

そして、今、ベッドで横たわる母親の、 

命を繋ぐ呼吸器のチューブを、抜き取った。

 

 オリバーへと主を代えた屋敷の中で、

オリバーは裸体で、自由にダンスする。

 

物語の展開

 このドラマの醍醐味は、コレですよね。

何の情報も入れずに観ていくと、

 

「君の名前で僕をよんで」のような

同性愛のひと夏の恋

 

かと思いきや、

 

「パラサイト 半地下の家族」のような、

格差社会への風刺

 

かと思いきや、

 

「ジョーカー」のような、

絶望と破滅を抱えた男の話

 

・・・・と物語は見事に展開していくんですよね。

なので、最後の最後まで、どう着地していくのか分からない。

 

 裕福な青年たちの夏は、

奔放で、とてもエロティックである。

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 無防備で、自分たちが攻撃を受けるとは、

微塵にも感じていない。

そうしている間にも、内側から、

蝕まれている事に気付かないのだ。

 

お城のような屋敷で繰り広げられる

パーティーは、まるで異世界のようで、

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その中で、冷たくなっているフェリックスの死は、

非常に不気味な演出であり、

 

 最後、全裸でダンスするオリバーは、

まるでジョーカーさながらである。

 

そういった世界観と、物語の展開が、

見事に合致していて、

最後まで存分に楽しめるのだ。

 

 

オリバーという人間

(気持ち悪い記述がありますので・・・)

 

正直、めちゃくちゃ、気持ち悪い・・・・

もう、記憶に残るくらいのシーンは、

アレだよね・・・・

風呂のシーンだよね・・・・。

 

劇的に気持ち悪いシーンは、この風呂のシーンと、

フェリックスのお墓で自慰行為をするシーンだと思うんですよね。

 

この2つのシーンからも、

 入口は、あくまでの「フェリックス」への

どうしようもない憧れだったと思うんですよね。

 

この憧れが、好きになり、

そして、最終的に「同一化」欲求に

屈折していったんじゃないかな・・・と

思います。

 

風呂で自慰行為をするフェリックスを覗き見して、

射精した風呂の残り水を、飲み干すオリバー

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(書いてて、オエってなった)

 彼の一部になりたいという強い想いがあり、

その欲望は、

彼の墓場での自慰行為へと繋がっていくのだ。

 

フェリックスの一部であるソルトバーンも、

「彼そのものになる」という欲望から、

必ず手に入れたいものだったんじゃないかな。

 

そう考えると、

異常な光景である墓場での自慰行為のシーンは、

逆に、よく練られている場面の一つだと思った。

 

 フェリックスの棺が埋まるその上

ソルトバーンの土で、自慰行為をし

オーガニズムを感じる事は、

フェリックスと一体になる事であり、

彼の一部であるソルトバーンと

一体になる事なのだ。

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 オリバーは、泣き崩れながら、

彼を失った慟哭、そして、そうなってこそ、一体になれた喜び。

 この何とも言えない感情の嵐が、

あのシーンに凝縮されているのだ。

 

オックスフォード大学での貧富の差から、

オリバーは、

その孤立・孤独・疎外・侮辱という

環境に置かれ、人知れず傷付いていた。

その怨恨は、ファーリーを始め、

フェリックスの家族へと向けられていく。

影で、自分を卑下し、笑いものにされている。

 そして、憧れ愛しているはずの

フェリックスにも向けられ、

オリバーの愛は、更に、屈折してしまうのだ。

 

まさに、最後のオリバーの

言葉そのものなのだと思う。

人工呼吸器に繋がれたフェリックスの母親に、

語り掛ける台詞。

 

彼を愛してた

彼を愛してた

彼を愛していた 本当に愛していたんだ

でも時に、

感じてた  彼への憎しみを

彼を憎んでた

あんたら全員をね

あんたらは、ちょろいもんだった

腹を見せる甘やかされた犬ども

襲ってくる捕食者はない

とはいえ、ゼロではない

 

オリバーはフェリックスを死においやったが、

愛する彼自身に成り代わる事が出来た。

彼のように屋敷で生き続け、守っていく。

それが、彼にとっての究極の愛の形なのだと思う。

なので、私的には、

愛情とかそういうモノから逸脱した感情であり、

野心であり征服なんじゃないかな・・・と思った。

フェリックスそのものになる・・・・という事は、

結局、彼そのものを征服するという事で、

彼はそれを、冷徹に冷静に成し遂げたのだ。

 

共感は、しないけどね!!!勿論、しないけどね。

でも、オリバーが感じた疎外感や孤立感って、 

生きていたら、

どこかで感じた事はあるんだよね・・・誰しも。

 どんな社会でも、こういう小さな格差ってある。

私は、貧乏人だったから、

オリバーの部類だったと思う。

 なんというか、羞恥心なんだよね。

その場にいる恥ずかしさとか、そういうのって、

めちゃくちゃ、傷付くんだよね。

 なので、正直ね・・・

オリバーのような、究極な方向性に進むのも、

何となく分かっちゃうんだよね。

 分かっちゃいけないんだけど、なんというか、

そういうのを理解しちゃうんだよね・・・・

 

パラサイト半地下の家族も、この作品も、

ジョーカーも・・・・

貧乏って、こう、染みつくんだよね。

そういう自分の闇に捉われてしまうと

ダメなんだよね・・・。

 

ただね・・・・

この作品においては、

ちょっと違うんじゃない?という気持ちもある。

 というのも、両親の愛もあり、

それなりの生活もある。

そして、奨学金でオックスフォード大学へ

進学している・・・という事は、

見方によっては、

勝ち組であるともいえると思うんだよね・・・・

 もう、そこに立ってる時点で、

そこに立てない多くの人が存在するワケでさ。

 

格差を理由にすんなよ!

・・・・って言いたくなるような気持ちもある。

 

そういう意味では

「パラサイト半地下の家族」ほどの、

テーマの強さは、弱かったかな・・・

と思った次第です。

 

 

キャスト陣の演技

バリーが、オリバーそのもの。

世の中のあらゆるネガティブな感情が、

秘められたような演技なんですよね。

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純粋無垢な少年のような心と、

依存と執着と、サイコパスのような思考が、

見事に彼の中で混在している。

 

最後の種明かしまで、

格差ありの歪んだ同性愛もの・・・

と思っているが、

そうではないと分かった時も、

決して、オリバーの演技に

違和感が生まれないというのが

すばらしい。

 こういった2面性のある演技を

バリーは完璧に仕上げた事が、

本当に素晴らしいと思う。

 

そして、ジェイコブのどこまでも

貴公子のような感じが、良かったですね。

 オリバーの「愛してるけど、憎い」

という複雑な感情を、

しっかりと体現した演技だったと思う。

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そう考えると、

2人の関係性が強過ぎて、

若干、他の人間関係が浅い構築になっているな・・・と。

 特に、オリバーと母親の関係は、もう少し、

濃く描いても良かったかな・・・と思う。

 

 

・・・という事で、

なかなか見応えのある面白い作品でした。