傷だらけのふたり / 韓国
2014年製作 120分 Amazonprime
2023年92本目(韓国映画63)☆☆☆
一見粗野で乱暴だが、人情に厚い一面も持つテイルは、闇金の借金取りをしている。ある時、昏睡状態に陥った男の借金を、男の娘で銀行の受付嬢として働くホジョンに肩代わりさせる。しかし、ホジョンに一目ぼれしてしまい、何とか彼女に気に入られたいテイルは、借金を帳消しにする代わり、自分と何度かデートするという契約を結ぶ。はじめはテイルに拒絶反応を示していたホジョンも、次第に心を開いていく。
この手の話は、よくある話です。
王道といえば王道。
演じる人によっては、「薄っぺらいわ!」と酷評になってもおかしくないし、
「泣かせにくるのが、嫌」と天邪鬼に吠えていたかも知れない。
けれど、この作品は証明してると思う。
演じる人が演じれば、ありきたりな王道な話も、
深く突き刺さる作品になるという事を。
当たり前だけど、ファン・ジョンミン様が最高にいい。
当たり前・・・と言いながらも、果たして恋愛ものに向いてるの~?
などと思っていた事も、白状しましょう。
ですが。
観終わった今、
声を出していいたい。
「もっと、恋愛モノとかヒューマンドラマに出てよ~!」
乱暴者でチンピラ。
そんなキャラクターに、ふと見せる優しさと、人情を織り込ませた所が、
本当に、素晴らしい。
不器用だけど、優しくて一途。
気付けば、ホジョンのように、テイルの魅力にはまっていく。
本当に、ファンジョンミン様がうまくてね。
もう、恋している瞳が、少年のように可愛い♡
お兄ちゃんにみせる時は、完全に弟な感じだし、
義姉に見せる時は、ちょっと遠慮のある弟になるし。
それぞれの場面で、ジョンミン様の繊細な演技が光るんですよね。
あの衣装で、キュートさを感じさせるって、神業だよね。
こういう繊細な演技が、
この作品を、ただの恋愛モノにしていないんですよね。
主人公以外のキャスト達の演技も相まって、
兄弟愛や、家族愛、友情をも感じさせてくれる、
秀逸な作品に仕上げているんですよねぇ。
そういう意味では、兄役のクゥク・ドウォン様も相当素晴らしかった。
私、1番泣いたのは、ひょっとしたら、兄ちゃんのシーンだったかも知れない。
「葬式まで人にあげさせやがって・・」と言う所が、
もう本当に切なくて。
テイルの事を罵倒したり、嫌味を言いながらも、
そこに隠れた愛をしっかりと見せてくれてて、
不器用な弟に、更に不器用な兄・・・
この不器用さんは遺伝なんでしょうか(笑)
こういう結末は悲しくて、
もうちょっと器用に生きてよ!!と思うけど、
器用なテイルは、テイルじゃないんだよね。
そういう妙な説得力があって、
彼のこんな最期も、「らしさ」が残るっていうのがね。
自分を受け入れて、愛してくれる人がいて、
自分のいるべき場所を見つけて。
そうして逝ったのなら、テイルはきっと幸せだったはず。
ありきたりな王道ラブストーリーなら、
泣くだけで終わる作品だけど。
それだけではない、優しさが余韻として残るのは。
テイルが残した「らしさ」と、
一人ぼっちになったホジョンと、
テイルの父、兄、義姉、姪っ子との繋がりが見えたからかも知れない。
みんなでチキン屋に集まって、テイルを思い出し、
文句を言ったり、笑ったり、泣いたり。
テイルは自分が逝った後も、ホジョンが独りにならないように・・・・
もう、その気持ちがね。
切なくて胸にきます。
彼女にまとわりついていた時に、テイルは彼女の孤独を
とても感じ取っていたんだと思うんですよね。
一人で生きて、強がって、笑顔もなく。
そんな彼女を笑顔にしたい!と思っていたし、
そうする事が出来たけれど。
自分が去ってしまった後も、
それを何とか守ろうとする気持ちが、
すっごく、優しくないですか????
テイルの愛は、なんて優しくて深いんだろうって。
本当に、感動しました。
結末は悲しいし、勿論、泣くけど。
それだけではなくて。
テイルの、深くて優しい人間性に触れる事で、
そんな人に、死んでもなお、愛されたホジョンは、
幸せなんだと思えます。
王道ラブストーリーであっても、
演出・脚本・キャストによって、
厚みと深さのある作品になるのだという事を、
見事に証明した秀作だと思います!