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哭声(コクソン) / 韓国

2016年製作 156分 amazonprime

2023年映画60本目 ☆☆☆☆

平和な田舎の村に、得体の知れないよそ者がやってくる。彼がいつ、そしてなぜこの村に来たのかを誰も知らない。この男につい ての謎めいた噂が広がるにつれて、村人が自身の家族を残虐に殺す事件が多発していく。そして必ず殺人を犯した村人は、濁った 眼に湿疹で爛れた肌をして、言葉を発することもできない状態で現場にいるのだ。事件を担当する村の警官ジョングは、ある日自分の娘に、殺人犯たちと同じ湿疹があることに気付く。ジョングは娘を救うためによそ者を追い詰めていくが、そのことで村は混乱の渦となっていき、誰も想像できない結末へと走り出す――

ネタバレなし感想

昔の私だったら、ハマる系の話だったと思う。

宗教がらみの作品は、

色々と調べたくなるもんでしたが、

まぁ、今回は、巷で繰り広げられた解説とかにも、

興味が湧かなかった。

 何故なら、自分の中で、

しっかりとこの作品がまとまっているから。

すべてを理解しているワケでは勿論ないし、

むしろ、多分1割も理解してないと思う。

 

 私の映画の姿勢が

変わったキッカケになったのは、

「インターステラー」という

クリストファー・ノーラン監督の名作です。

この時に、全てを理解する事はなく、

映画の大きなメッセージが分かれば、

それで良いのだと。

 それまでは、映画の全てが

理解出来なかったりすると

マイナス点だったけど、

この作品をキッカケに、

私はある意味、映画に対して、

かなり寛容的になったような気がするんです。

 

まさに、この「哭声」という作品は、

私にとっては、そういう映画なのでした。

 

 まず、分類さえも定まっていなくて、

サスペンスなのか、ホラーなのか、

カルトなのか、ゾンビなのか。

 かなり、グロイ場面も出てきます

(食欲失せました)

 

日本人役で出てきたのは、

おなじみの國村隼様でしたが、

本当に素晴らしかったです。

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そして、クァク・ドウォン様

気の弱い警察官。

けれど、娘が事件に巻き込まれてしまい、

必死に立ち向かおうとします。

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この辺の演技がね、けっこうリアルで。

最後まで庶民なんですよ。

ああ、どこにでもいる父親が、

娘を守ろうとすると

こんな感じになるのかな~って。

 子供を助ける為に、 

スーパーマンになるワケでもなく、

最後まで庶民であり続けている演技が、

良かったと思います。

 

そして、最強だったのは、

子役ですよ。キム・ファニちゃん。

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正直、この子の憑依の演技が、もう凄かった・・・

この子のメンタル、大丈夫か?

と心配になる位です。

ある意味、虐待じゃ??と思ったけど、

監督・母親とかなり気を遣っての

撮影であった様子で、

今ではすっかり素敵な大人になっていました。

 憑依で暴れるシーンもだけど、

憑依されながらも、冷静に話すシーンとか。

凄かったです。

 

 サスペンス仕立てで物語はすすみ、その中で、

ホラーのような展開をみせていきますが。

 かなり難解な映画です。

 キャッチコピーにあるように

「疑え。惑わされるな」

それに尽きる、なかなかの良作だったかな・・・

と思います。

 

あ・・・ちなみに私が、

苦手領域のホラー系を観たのは、

ひとえにファン・ジョンミン様への愛♡ですが、

このファン・ジョンミン様が

なかなか出てこない(笑)

映画開始後、1時間経過して、やっと登場でした。

ハイネックセーターが思いの外、好みでした♡

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☆以下はネタバレなんで、観る予定の人は気を付けて。ただ、読んでもネタバレにならんかも。

何故なら、私が理解してるとは思えないから・笑☆

 

ネタバレあり感想

話の展開は、面白いです。

でも、なんせ156分なんで長くはあるんですが、

私は、けっこう(ホラーキライなクセに)

観入ってしまって、

156分アッという間でした。

 もっと短縮したらいいんじゃ?

と感じる箇所もなくって、

ファン・ジョンミン様の祈祷のシーンや、

クァク・ドウォン様の普通の人が、 

命をかけて娘を守る時の表情とか、

國村隼様の狂気の表情とか。

子役の子の、憑依場面とか、

とにかく、見応えは十分だったと思います。

 

 サスペンス要素から、

オカルト・ホラー・ゾンビという、

ゴチャマゼ状態に入っていくんですけど、

最後には、きちんと

「疑え、惑わされるな」に帰着する所が、

この作品の素晴らしい所だと思います。

観ている方も、かなり翻弄されます。

日本人と、女性・・・・

どっちが「悪魔」なの???

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特に前振りで、

ファンジョンミン様演じる祈祷師が、

「間違っていた。

日本人は実は守ろうとしていた側で、

白い女が悪魔なんだ」と言うから、

私なんて、めっちゃそれを、

信じていたワケですよ。

 特筆すべきは、

怪しい日本人を演じた國村隼様でね。

鹿の生肉とか食べてるし、

目の赤くなってるのを観てるのに、

「あ・・・いい人やったん??」

って瞬時に、信じちゃう所なんですよ。

 何故、信じちゃうかというと、序盤に出てくる、

ちょっとした会話のシーンなんですよ。

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 台詞なんてほとんどないのにさ・・・

その一言二言が、非常に優しくて非常に不気味。

どっちにでも転がるような伏線になってるんです。

なので、「良い人よ」と言われたら、

すぐその声を思い出して、

「いい人」を受け入れてしまうんですよね。

 

そして、祈祷対決も色んな見方が出来ちゃう。

始めは、祈祷師が日本人を、

日本人は、主人公の娘に、

それぞれ祈祷を加えてるんだと思うんだけど、

「いい人」ってなると、祈祷師が日本人を、

日本人は、あの山の中の人を

復活させようとしてたのか・・・とか

思えてくるんですよね。

 

もう、すっかり踊らされてる私としては、

主人公が、日本人を信じるか、

白い女を信じるかって所が、

共感しかないんですよ。

 白い女を演じたチョン・ウヒ様も絶妙でね。

良い人にも見えるし、悪魔にも見える(笑)

 

 結局、主人公は間違った選択をしてしまい、

最終的にはバッドエンドを迎えるんですけど。

 

それほど、後味が悪くないのも、

この作品の魅力になってます。

 

何故、後味が悪くないのか。

それは、この話の流れが全て、

「まやかし」だという可能性を、

秘めているからだと思うんですね。

 先述したように、私を始め、

人間なんて「そんなもの」だという事を、

強烈に感じさせてくれるワケで。

 目でみた現実も、ちょっとした思い込みで、

簡単にひっくり返るワケなんです。

 主人公は日本人が生肉を食べたり、

飼い犬が人を襲っていても

助けようとしない場面を見ているワケです。

冷静に考えると「悪魔」以外、 

考えられない存在なのに、

どうして、祈祷師の「実は守る側だった」 

という言葉を鵜呑みにしてしまったのか。

 

一刻も早く娘の元へ向かいたい・・・

という気持ちが、彼にそんな選択を

させてしまったんだと思うんです。

 

自分の望むものを見て、

自分の望む答えを求める。

 

人間の、そういう浅はかさへの皮肉を

感じ取れるワケです。

 

そうなると、この出来事自体が、

全ては「まやかし」だったんじゃないのかって事ですよ。

 幾度も流れる「毒キノコ」ネタが、

ソレなんじゃないかと。

毒キノコが原因の事件や、

幻覚じゃなかったのかと。

 

もっと言うと、毒キノコが原因でありながら、

閉鎖的な村や、異端を排除する風潮が、

日本人という存在を、

作り上げたのかも知れない・・・。

(たまに冷静な人が出て来たりするのも、

その伏線じゃ?と・・・これは考えすぎかな)

 

そういう人間自身が作り上げた

「まやかし」という余白があるからこそ、

こんな悲惨なバッドエンドでも、

胸糞悪さが残らない作品に

仕上がっているんじゃないかな~。

 

この作品は、様々な見方が出来ます。

祈祷シーンが、その象徴でもあると思う。

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 誰が、誰を呪い殺そうとしているのか、

はたまた、救おうとしているのか。

 自分の想いによって、

受け取り方は様々になる。

人もまた、同じで、

日本人は悪魔なのか、そうでないのか。

 

 主人公の間違った選択に、

白い女(地神様)が、

座り込み項垂れるシーンは、

人間の愚かさを嘆いているようにも見えます。

 

そう考えると、キャッチコピーの

「惑わされるな」という言葉は、

人間にとって、

非常に困難な課題のように聞こえてきます。

 

もっと踏み込んでみると、

自分へ降りかかる悲劇の原因を、

自分以外のものに見つけ出したいという・・・

言葉は悪いけど

「人のせいにする」的な

皮肉も込められているようにも感じました。

 村を襲った毒キノコによる惨事を、

村の異端である「日本人」が原因だと

仕立て上げたという思いが、

関わる人々の集団ヒステリーを

招いたんじゃないの??

とも解釈出来るようにも思うんですよね。

 この解釈の場合、まるっと「妄想世界」に

帰結するので、どうかとは思うけど(笑)

まぁ、夢オチみたいなね。

 

更に、深読みすると、

これは、反日に対するアンチテーゼのようにも。

 一見、悪者に仕立て上げた日本人を見て、

反日映画のように思える人も

いるかも知れないけど。

 國村隼さんを起用する事で、

その逆のメッセージを含んでいるんじゃないかと、

私は、思うんですよね。

 台詞も少ないし、韓国ドラマ・映画あるあるの、

「それ、日本人使ってないやろ」という日本人役でも、良かったと思うんですよね。

 でも、そこを、

きちんと國村隼さんを起用した所に、

日本への敬意を感じたんですよ。

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・・・・というのが、

私の映画を観た限りでの解釈になります。

とにかく、この映画はカオスです。

 自分自身の考えを、

突き詰める楽しさもありますが、

明確な答えのない作品は、好みが分かれます。

 監督が何でもぶち込んで、

結局、着地出来なかった・・・という意見も

散見しますが、

私は、非常に練られた、

あらゆる可能性を含めた

脚本だったと評価したい所です。

 

白い女が、時に冷酷に見えたり、

時に、子を見守る母親の表情のように

見えたりします。

 人間の見ているものが、

「絶対」ではない。

「確証」もない。

 その不確かさを、

しみじみと感じる作品となりました。

 

ちなみに、私のこの作品の大まかな解釈は・・

 

全ての原因は、毒キノコで、

原因を、村にいる異端の日本人だと

思い込んだ故の、

まやかし(集団ヒステリー)

全部、全部、まやかし~(笑)

 

あ・・・・あとはね。

日本人と祈祷師がグルでね、

毒キノコをまき散らし、

それは悪霊のせいだと偽って、

祈祷してお金を稼ごうとしたら、

日本人って事で、思わぬ火の粉が飛んできた・・・みたいな。

それから守ろうとしたのが白い女。

 あの祈祷対決シーンは、白い女 VS 日本人

で、祈祷師が娘を殺そうとしてたんじゃいない??

 

※あくまで、私の、

映画を観ただけの解釈なので・・・・

アテにしないで(笑)

多分、間違ってる。

 

いやいや、なかなか、面白い作品だったですよ。

「キングダム」とサンドイッチにしても、観て良かったです。

 

 

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ファン・ジョンミン様の祈祷師も、なかなか

良かったですよ~。

 

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