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手紙と線路と小さな奇跡 / 韓国

2021年製作 117分 ☆☆☆☆☆

2023年57本目 AmazonPrime 

行き来できる道は線路しかないのに、肝心の駅がない村。今日、大統領府に54通目の手紙を送ったジュンギョン(パク・ジョンミン)の夢はただ一つ!それは村に駅を作ること。駅なんてとんでもないという原則主義の機関士の父テユン(イ・ソンミン)の反対にもめげず、姉ボギョン(イ・スギョン)と村に残り、高校まで往復5時間の通学路を通うジュンギョンは天才的な数学の才能に教師から一目置かれていた。そんなジュンギョンの非凡さを一目で見抜いたクラスメイト、自称“女神(ミューズ)”のラヒ(イム・ユナ)と共に説得力のある手紙を書くため正書法の講義、テレビに出て有名になるための“高校生クイズ”、1位の大統領賞獲得に向けた数学大会の受験まで。駅の実現に向けた努力は続くのだが…。

 

 

  ネタバレなし

 

泣きましたね・・・

こんなに泣いたのは久しぶりのような気がします。

現代は「奇跡」だそうです。

 

過疎の村で、道路がないのに、駅もなく、

みんな線路を歩いているんです。

でも、そこは列車が通るワケですから、

事故も起こるワケなんですよね。

 で、村人がそこに駅を作った「両元駅」

という実話をモチーフに、

この作品は出来上がっています。

 

数学に長けていて、村に駅を作りたいと、

大統領に嘆願書を書き続ける

高校生ジュンギョンを、

パク・ジョンミン様

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そして、ジュンギョンに恋するラヒに、

イム・ユナ。

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このお二人様、ともに30歳超えです(笑)

パク・ジョンミン様なんて35歳!!

 正直、無理があると思います!!!

「おじさんじゃないか!」とも思うけど、

それが気にならないのは、

パク・ジョンミン様が醸し出す

「弟」という雰囲気のせいかも知れません。

姉であるボギョンを慕う弟感が、

完璧なんですよね。

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イム・ユナさまは、そもそも30歳に見えない・・・

透明感もあるし、めちゃくちゃ可愛い

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駅を作りたいというジュンギョンを

応援するウチに、

2人の関係は近付いていくんですよね。

 

姉の役をイ・スギョン様

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父親役が、これまた素晴らしかった

イ・ソンミン様

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この「村に駅をつくる」という過程を軸に、

ジュンギュンの抱える苦悩や、父への思慕、

そして、父親が抱える後悔と苦悩。

そんな2人を見守る姉の想いと、

 絡み合った心が、優しく悲しく、

ほどけていくような、そんな作品なんです。

 

この映画は、とにかく「ネタバレ」を踏まずに、

観て欲しい。

 なので、ネタバレなしの感想は、味気ないけど、

私の中では、かなりおススメの作品です。

 

 是非、観られる方は、

この下の「ネタバレ感想」はスルーして、

このページを閉じて下さい。

スクロールして、「いいね」も押さなくて大丈夫ですからね~!!

 

という事で以下、ネタバレ感想になります。

下矢印

下矢印

下矢印

下矢印

下矢印

 

  ネタバレ感想

 ほのぼの系の作品で、悪者は出て来なさそう。

みんなで駅を作る話ね・・・

って感じで観ていたら、

突然、「シックスセンス級」

のブッコミが入ってきます(笑)

 

その、ビックリ加減も丁度良くって、

「ん?お姉ちゃんだけが若いな・・」とか

「花束の位置がなんなん?」とか、

ちょっとした違和感が、

瞬間的に、ピタっとハマる感覚なんですよね。

 

映画を多く観てきて、

「最近、映画の先が読めちゃってさ」なんて、

調子こいていた私も、さすがに、

この「のほほん系」の作品に、

「シックスセンス」が隠れているとは、

露程にも思えず、完敗でしたね。

 

でも、この隠し玉が、不思議な事に、

この物語にしっくりと馴染み、

感動の一助となっているのが、

素晴らしい所だと思います。

 

 そして、35歳のパクジョンミン様が

高校生を演じてて、

正直、違和感がないワケではないんですけど、

滲み出る弟感、滲み出る姉感

弟と姉の、2人だけの独特な関係の前には、

そんな違和感は消え去ってしまうんです。

 

姉の前ではずっと弟で、けれど、

自分だけが成長していく事を感じてて。

 いつしか、

「姉にいてほしい」と思っている気持ちが、

「姉のそばにいなくては」に変わっていく過程が

切なく心を締め付けます。

 姉もまた、その現実を感じ、

弟が羽ばたく足かせになりたくはないと

感じるんですよね。

 弟の新たな人生を喜びながら寂しくも想う

姉の気持ちを、

イ・スギョン様が瑞々しく演じていたなぁ・・・

と思います。

 

そして、イ・ソンミン様も

素晴らしかったと思います。

自分の息子を直視出来ない父親。

けれど、同時に感じるのは、

その不器用さと父性愛なんですよね。

ちょっとした目の動きや、言葉で、

この父親自身が、何かを抱えているのを、

感じ取る事が出来る。

そういう繊細な演技は、

その理由が明らかになった時に、

大きな感動の伏線となって 

回収されていくんですよね。

 

この息子と父親それぞれが抱く罪悪感が、

無理矢理な感じもせず、

どちらにも共感出来ちゃうんですよね。

息子が、母親が自分の出産で死んでしまった事、

姉が自分のトロフィーを拾おうとして、

川に落ちてしまった事。

 父親が自分を直視してくれなかった理由が、

そこにあると思ってしまった悲しさ。

それでもなお、

父親に褒められたいと想う気持ちの切なさ。

 

そして、父親の抱える後悔・・・

仕事を理由に、妻の出産に立ち会えなかった事、

息子の表彰式に行かず、

自分の運転する列車の通過により、

娘が川に落ちてしまったこと。

 すべてが、自分のせいだと思い、

死んでしまった妻と娘に悪い気持ちばかりが

先立ち、息子とも向き合えずにきてしまったのも、

よく理解できます。

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そういう点に共感した故、

私の涙は、後半にかけて、

まぁ、止まらない・・・。

 

 姉と弟との、この奇妙な関係も、

父親と息子の、互いに罪悪感を抱く関係も。

 駅を作る事をキッカケに、

切なく清算されるが、

新しい駅を出発するジュンギョンの姿が、

清々しい気持ちをもたらしてくれるんですよねぇ。

 

 家族の問題を描きつつ、

ジュンギョンの素朴な恋愛と、

偏った天才の描き方は、

面白さをこの作品に加えている。

 笑えて、切なくて、涙を流して。

残るのは、人生の煌めき。

そして、田舎の風景と、線路と列車。

ハッと息をのむような美しい景色と、

ノスタルジックな雰囲気と音楽。

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まさに、映画の優等生のような作品だった。