ちょっと思い出しただけ
2022年2月公開
☆☆☆☆
Amazonprime
あらすじ
照明スタッフの照生と、タクシードライバーの葉。物語はふたりが別れてしまった後から始まり、時が巻き戻されていく。愛し合った日、喧嘩した日、冗談を言い合った日、出会った日・・・コロナ禍より前の世界に戻れないように、誰もが戻れない過去を抱えて生きている。そんな日々を“ちょっと思い出しただけ”。
似た作品と比較して・・・・
過去の恋愛を、1年づつ誕生日に遡っていく作品。
まぁ、色んな作品と同じ手法なので、ついつい。
自分の中で、比較検討してしまう。
時間軸が逆方向へすすむという、
超難解映画「メメント」
こちらは、手法は似てるけど、難解度は別次元。
ま、映画として、全くジャンルが違うので・・・・
ただ、逆方向で語られていくという点で、1番に思い出した。
1年に1度、誕生日1日を描く・・・・
超駄作映画「弥生3月」
7000文字超えの辛辣レビューをUPしたのも、記憶に新しい。
こちらは、30年という月日の3月を1日を描いたもの。
同じ手法でありながら、これほどまでに違うのか・・・と唸ってしまった。
「弥生3月」とは、もう全てにおいて、出来栄えが違う。
キャストの演技や、
季節の移り変わりを表す情景とか。
語らずとも、観客はその状況の変化を理解する。
あと思い出したのは、
「ワンデイ 23年のラブストーリー」
こちらも、そこまで、私の評価は高くないのですが。
こちらは、23年の7月1日を切り取った作品。
そして、最近は、こんな風に過去を振り返る作品が多いな・・・と思う。
こちらは、恋愛に重きを置くというよりは、
主人公の人生そのものに重きを置いている印象。
そして、よく比べられるのは、「花束みたいな恋をした」
こちらも良作だったけれど、
決定的にこちらの作品とは違う所が
あると思う。
その違いが、本作の素晴らしさを語る上で、
大きなポイントになっていると感じる。
ネタバレ感想
という事で、ついつい他と比べてしまうが、
とにかく、
この作品が1番素敵だ・・・と私は思う。
キャストすべてのリアルさは勿論だけれど、
とにかく細部まできちんとこだわっていて、
丁寧で繊細に作られた作品だと思う。
大切な過去の恋を、きちんと胸にしまっている感が凄い。
誰もが持つ、過去。
それは、良い事であり悪い事であり、
自分の胸の奥底にそっと眠らせているものだ。
その出来事が、ふとしたキッカケで思い起こされる。
その感覚が、きっと、多くの人の共感を呼ぶのではないかと思う。
この映画の最大の、魅力は、
過去の恋愛が、今に繋がっていないという事だ。
過去で完結し、終了している恋愛なのだ。
だからこそ、この作品の後味は良く、
清々しくもあり、
そして、少しだけ切ない。
同じように別れてしまう結末の
「花束みたいな恋をした」と決定的な違いはここにある。
別れてしまった事を悲劇だと感じさせてしまうかどうか。
「花束・・・」は正直、この2人の結婚以外は不幸・・・と感じてしまった。
けれど、この作品は、この2人が多少のすれ違いでありながらも、
別れてしまう事に、観客が納得してしまう。
葉が照夫ではなく、
あの大阪弁の人とくっつく方が、
妥当だと思ってしまう。
この納得感が、この過去の恋愛を、
大切な過去、胸にひっそりと眠らせておきたい過去に昇華させる事が出来たのだと思う。
その時は、
最高の2人だと互いに信じていたけれど、
そうでは無かったのだと。
葉が、照夫ではなく、あの大阪弁を選んだ事を、
観客に納得させた事が、
この作品を一段階、上に押し上げたのではないかと思う。
ハキハキしていて、
関係性をきっちりとしたい葉と、
言葉をなかなか伝えようとしない照夫。
悩みや苦しみを言葉に出して欲しいし、
支えにもなりたいと思う葉と、
自分の中ですべてを消化して、葉に伝えたい照夫。
そして、自分の感情をしっかりと伝える、大阪弁の人。
振り返れば、その恋愛がうまくいかなかった事が、
よく分かる。
けれど、その時は、分からない。
不意に過去を思い出し、
少し、切ない気持ちになるけれど、
今だからこそ、感じることもある。
この過去があったから、今の自分がある。
まさに、そんな風に思える作品だ。
この2人が、本当にリアルだった・・・
大阪弁の人・・・と思ったら、
芸人さんだったんや~。
めっちゃ、自然やった。
尾崎世界観さんが出てましたね・・・・
この恋愛の話でもあり、
世界観さんの話でもあるね(笑)
そして、映画「パターソン」と同じ場面があって、なんか笑ってしまった。
映画「ナイトオンザプラネット」のオマージュが散りばめられているようです。
私は、随分昔に観たので、
ほとんど覚えてない・・・・
タクシーの話という事は記憶に残ってるくらい・・・(笑)