ボクたちはみんな大人になれなかった

2021年製作 日本

124分 PG12  2022年⑩ 

森義仁監督(長編初)

☆☆☆☆

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ネタバレあらすじ 

2020年仕事にやりがいも見つけられず生きている佐藤(森山未來)は46歳。image
テレビ業界の隅で長い間働いているが、そこでのパーティーで、昔ながらの友人・関口(東出昌大)や、七瀬(篠原篤)と再会する。SNSでは、昔の彼女・かおりが、至極普通な主婦となり、子供との写真をUPしているのを見て、過去へと記憶が遡っていく。 10年間同棲しながら結婚に至らなかった恵(大島優子)が家を出て行った。image(私の10年を返して。結婚する気はあったの?ずっと、閉じこもっていれば)
2000年 パーティーで知り合ったスー(SUMIRE)と一夜をともにするが、彼女は売春をしていた。image(私、絶望している人をみつけるのが得意なの)
1999年かおりとの恋は、彼女に同棲しようと言った日に終わった。image(なんか、ほんと、フツーだなっと思って)
1995年雑誌の文通コーナーから、かおりとの恋は始まった。image(分かりきっていることは無意味、分からないままの方がずっと残る)
image(どこに行くかじゃなくて、誰と行くかだよ)(成仏出来ない言葉が、残っている)ボクは、「自分には何もない」と言うと、彼女は、「君は大丈夫だよ。面白いもん」と言った。
 

ネタバレ感想 

 この作品を通して、「大人」について、考えさせられた。

若い頃は、将来に夢を持っていたり、人との違いに固執したり、

自意識過剰だったり・・・・ 

 佐藤が恋し、長年にわたり、呪縛のように彼を捉えて離さない女性・かおりは、

まさにそのタイプだったように思う。

 サブカルチャーに傾倒し、人と違う自分に酔い、フツーを恐れていた。

そんな彼女の影響を受けながらも、かおりと同棲→結婚の道を歩もうとした

佐藤の行動は、いたって普通で、かおりは突然去ってしまう。

 

 別れた後も佐藤は、かおりの放った「大丈夫だよ、面白いもん」という言葉や、

フツーを恐れる姿勢から脱却できずに、46歳のその日まで、

人生をぼやき、フツーを卑下し生きてきた。

 かおりと、別れずにいたら、もっと面白い人生を歩んでいたのだろうか・・・。

 

けれど、SNSの彼女はいたって普通の人生を歩んでいた。

人生を振り返り、あれほど特別視していた、かおりとの恋愛は、

至極普通であり、それを思い知った佐藤は、やっと大人になれたのかも知れない。

 

 ・・・という解釈をした次第。

佐藤の呪符のようになっていた言葉を発したかおり本人は、

意外にすんなり、大人の階段を上がっている。

 

逆を言えば、

佐藤とフツーになりたいと思えなかったという事なのか。

フツーにもなれず、フツー以外にもなれず、

いつものラブホテルでのみ成立する恋愛に、嫌気がさしていたのかも知れない。

 

この作品は、うまく大人になれなかった男の、

大人になる瞬間を描いた作品ではないかと思う。

 とても不器用で、純粋だからこそ、

彼は、大人になり切れなかったのだ。

 

 私は、中学生の終わりころに、

「小説家になりたければ、書き続けろ」という言葉を聞いて、

「小説家になるために、とりあえず、生活するためにも、看護師になろう」

・・・・と決めた時に、大人になったような気がする(笑)

 

 夢に一途に向かうのではなく、夢に向かうようで、

現実をとった瞬間だ。

 

・・・という事で、そうそうに大人になってしまっているので、

この佐藤に共感は出来ないが、

そういう言葉の呪縛は、あるなぁ・・・と思う。

 

とはいえ、夢を諦めたり、なりたい自分を諦める事が大人だとは思いたくないのも事実。

現実と向き合い、自分の欲望に折り合いをつけながら、

人生に意味を見出していく事なんじゃないかな。。。と。

 

現実に向き合えず、殻に閉じこもり、

こうではなかったと自分の人生を卑下して、

日々生きている・・・・これが、つまんない大人ではないだろうか。

 

 さて、森山未來さん。

凄かったですね。20代から40代を見事に演じておられました。

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演技の幅に脱帽です!

 

伊藤沙莉さんも、とても自然で良かったです。

2人の浴衣シーンキレイで、とても素敵だった。

 あのシーンで、伊藤さん、トップレスでしたが、

いつもは。不要な露出は反対!な私ですが、

めずらしく、このシーンには必要な露出だったと思います。

 だって、もう、露出あるのと、無いとでは、

リアル感が全く違っていたように思うのです。

 もし、あのシーンを露出なしで、アッサリと描いていたら、

2人の関係は不明瞭で、おとぎ話のような印象になっていたと思うのです。

 かおりは、リアルに存在し、関係が成立していたからこそ、

彼女の発した言葉が、彼の呪縛となった事に、

納得できたのです。

 

 こういった所で脱げる辺り、伊藤沙莉さんの女優魂を感じます。

(某作品で、自分は脱がずに人にばかり脱がした方々とは大違い・・・)

 

そして、関口役の東出昌大さん。

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こちらも、20代から40代。

めっちゃ、存在感ありました。

 色々と問題ありますが、本当に、役者としては、

勿体ない限りだと思います・・・・。

 

 そして、全体的に映像の撮り方が、好きです。

特に、ドライブするシーン、浴衣のラブホテルのシーン、走馬灯のような回想シーン、

佐藤が想い出の場所を走り抜けるシーンなど、

心に残るシーンが、沢山ありました。

 

この作品を観て、大人とは・・・・と考えながら、

自身も過去へと遡り、

大人の破片と、大人になれていない破片を拾い集める。

 その作業は、苦痛であり輝きであり落胆であり自信であり、

それが、きっと人生だ。

 

おまけ 

 

佐藤の長年の友人、七瀬

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彼の言った台詞が、面白かったですね。

「世の中の人間の80%はゴミで、20%はクズ」

「1%くらいは、いいヤツもいる」

「そんなのは、世間知らずよ」

 

 あまり、同調できないけど、

こう考えると、人生、生きやすいよね(笑)