1999年のチェチェン。ロシアの侵攻によって両親を殺害された9歳の少年ハジ(アブドゥル・カリム・マムツィエフ)は声を失ってしまう。たった一人でさまよっていたところを、EU職員のキャロル(ベレニス・ベジョ)に保護されたハジ。そんなハジには生き別れた姉と弟がいて……。
スターチャンネルで、たまたまの、嬉しい出会い。
物語は、チェチェン。
両親を殺害された少年が、声を失い、幼い弟を見捨てるしかない境遇の中で、
EU職員のキャロルと出会う。
そして、もう一つの軸は、平凡なロシアの若者が、
ひょんなことから兵士となり、大きく、その心が変貌していく様を描く。
物語は、冷静に、チェチェンの現実、チェチェンを取り巻く世界を捉え、
この世界がいかに歪んでいるかを、見せつけられる。
子供が声を失うほどの殺戮があっても、それは、遠くの出来事だと、
無関心な人々。
ロシアの普通の若者が、殺戮を何とも思わない人間になっていく恐怖。
ちょっとしたタイミングで、簡単に、人を殺せる人間になってしまう。
「戦争」がひどく近いところに存在している。
その恐怖を、ひしひしと感じるのだ。
この映画は、反戦映画ではなく、
遠く遠くへと、訴えかけているように思う。
決して、無関心ではいられない。
一歩何かが崩れれば、この平和な日々も、一瞬で消え去る。
その危うさを、警告しているようにも思え、
無関心であることの傲慢さを、嘲笑っているようにも思える。
最後のシーン、少年と兵士が、交差する場面が出てくる。
正直、ココの部分は、先が読めて、驚きもしなかった。
けれど、心が崩壊してしまった兵士も、そうなる前は、
確かに、9歳の少年と同じように純真な目をしていたはずで。
同じだったのはずなのに、こんな風に、対峙してしまっている哀しさ。
そんな風に、人生を翻弄されている若者が、どれだけいるのだろう。
どちらにも不幸は生まれている。
どちらにも、不幸しか生まれない。
それに気付けと、訴えかける。
しかし、こういう作品に出会う度、
自分の無力さを、痛感する。
結局、どんな風に感じても、私も「無関心」な人間の1人である。
その現実が、
厳しくて、虚しい。