<ネタバレ>2016⑨ あの日の声を探して ☆☆☆☆☆ | ROUTE8787 サンサクキロク

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1999年のチェチェン。ロシアの侵攻によって両親を殺害された9歳の少年ハジ(アブドゥル・カリム・マムツィエフ)は声を失ってしまう。たった一人でさまよっていたところを、EU職員のキャロル(ベレニス・ベジョ)に保護されたハジ。そんなハジには生き別れた姉と弟がいて……。

 

 スターチャンネルで、たまたまの、嬉しい出会い。

 

 物語は、チェチェン。

両親を殺害された少年が、声を失い、幼い弟を見捨てるしかない境遇の中で、

EU職員のキャロルと出会う。

 そして、もう一つの軸は、平凡なロシアの若者が、

ひょんなことから兵士となり、大きく、その心が変貌していく様を描く。

 

 物語は、冷静に、チェチェンの現実、チェチェンを取り巻く世界を捉え、

この世界がいかに歪んでいるかを、見せつけられる。

 

 子供が声を失うほどの殺戮があっても、それは、遠くの出来事だと、

無関心な人々。

 

 ロシアの普通の若者が、殺戮を何とも思わない人間になっていく恐怖。

ちょっとしたタイミングで、簡単に、人を殺せる人間になってしまう。

「戦争」がひどく近いところに存在している。

 その恐怖を、ひしひしと感じるのだ。

 

 この映画は、反戦映画ではなく、

遠く遠くへと、訴えかけているように思う。

 決して、無関心ではいられない。

一歩何かが崩れれば、この平和な日々も、一瞬で消え去る。

その危うさを、警告しているようにも思え、

無関心であることの傲慢さを、嘲笑っているようにも思える。

 

 最後のシーン、少年と兵士が、交差する場面が出てくる。

正直、ココの部分は、先が読めて、驚きもしなかった。

 けれど、心が崩壊してしまった兵士も、そうなる前は、

確かに、9歳の少年と同じように純真な目をしていたはずで。

 同じだったのはずなのに、こんな風に、対峙してしまっている哀しさ。

そんな風に、人生を翻弄されている若者が、どれだけいるのだろう。

 どちらにも不幸は生まれている。

どちらにも、不幸しか生まれない。

 それに気付けと、訴えかける。

 

しかし、こういう作品に出会う度、

自分の無力さを、痛感する。

 結局、どんな風に感じても、私も「無関心」な人間の1人である。

その現実が、

厳しくて、虚しい。

 

 

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