[ネタバレ]博士と彼女のセオリー ☆☆☆☆ | ROUTE8787 サンサクキロク

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この映画は、劇場で観たかったのだけど・・・。
観れなくて。
レミゼのレッドメイン君です。
 ホーキング博士にしか見えないという演技で、オスカー。


天才物理学者として将来を期待されるスティーヴン・ホーキング(エディ・レッドメイン)はケンブリッジ大学大学院に在籍中、詩について勉強していたジェーン(フェリシティ・ジョーンズ)と出会い恋に落ちる。その直後、彼はALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症し余命は2年だと言われてしまう。それでもスティーヴンと共に困難を乗り越え、彼を支えることを選んだジェーンは、二人で力を合わせて難病に立ち向かっていく。

 そういえば、昔、ほんの一瞬、ホーキング博士について調べたことがある。
物理なんてもの、その存在自体、「どういったものなのか?」分からない私。
 物理の「ぶ」も分からないのに、どうして、ホーキング博士について興味を持ったかというと、ひとえに、
「この人の生きる力は、どこからやってくるんだろう」と思ったから。
 車椅子で、動くことも、話すことも出来ないのに。
 彼は、その境遇をいとも簡単に受け入れているように思えた。
 とはいえ、調べるって言っても、
「ホーキング、宇宙を語る」を読もうとして、勿論、読めず。

「ふむ、天才の世界は、天才にしか分からない」と思いなおし、
ホーキング博士への興味は、終了した。


・・・という事もあって、
こういう映画が出来たことが嬉しかった。
 難しい本を読まずとも、ホーキング博士を知ることが出来る。


前半は、ホーキング博士が頭角を現し、研究に取り組むところ。
そして、ジェーンと出会う。
病気が発覚しながらも、研究を続け、ジェーンは彼を支える。

 後半は、その2人の関係性に変化が訪れていく。

 病気となったホーキング博士を支え続けた妻の話ではない。
妻は、夫の介護と、子供3人の世話で、疲れ果て、
ジョナサンと出会う。
そして、三角関係。

 きれいごとでは済まされない現実が描かれていく。
 
レッドメンの素晴らしさは、ホーキング博士にしか見えない・・という所ではない。
 限られた表現の手段の中であっても、
ホーキング博士の心を、きちんと表現できたところにあると思う。

 ジョナサンに嫉妬しながらも、彼を家に招き入れなければならないという切なさ。
自分は病気だから、そうするしかない・・・という諦め。
 けれど、そうしながらも、妻だけでは、触れることの出来ない世界を、
ジョナサンは与えてくれる、その喜びと感謝。
 妻との間に生じる冷たさや、
自分を瞬時に理解してくれるエレインと出逢ったときの喜び。

様々な感情の渦が、ホーキング博士の人間性を彩っていく。

 この過程が、違和感なく描かれていく。
原作は、ジェーン著書だが、ジェーンに肩入れしたくなるワケでもなく、
 多くの別れてしまう夫婦と同じように、
互いの関係が変化し、心が離れてしまったんだな・・と納得出来る。
 
こんな風に、夫婦の真実を描くことに、
嫌悪感を抱く人もあるだろうが、
私は、この現実を描くことのよってこそ、ホーキング博士の物語なのだと思う。
 
 長年の介護から、愛する人を解放した・・と描けば、
もっと美化されたはずだけれど、
 そうではない事を率直に描いているところに、
ホーキング博士の魅力と、この二人の愛が詰まっていると思うのだ。

 ホーキング博士と、ジェーンの関係は、
恋人から夫婦、そして、同志になっていたように思う。
 医師から延命措置をすすめられながら、声を失ってでも生かせようとしたジェーンの姿は、
愛ではなく、彼を生かせることの使命であったように思うのだ。

 そういう意味では、レッドメンの演技だけでは、
この作品は成り立たなかった。
 ジェーンの心の変化を見事に演じきったジョーンズにも、拍手を送りたい。



  残念だったのは、ホーキング博士の、
博士としての素晴らしさが、イマイチ、伝わって来なかった。
 正直、その凄い証明の何が素晴らしいのか、
私は全く理解出来ないから、その素晴らしさを知るには、映像の力に頼るしかない。
 だから、時代が昔であろうとも、
もうちょっと、大袈裟に描いてみても良かったんじゃないかな・・・。
 

 天才の世界は、天才にしか分からない。
けれど、そうではなかった。
 ホーキング博士は、自分の境遇の中で、
あらゆる感情と戦っている。
 この映画は、その一部を見たに過ぎない。
ホーキング博士の、あの小さく縮こまった体の中には、
無限の感情の星が散りばめられている。
 
 制限のある体だから、心にも制限があるワケではない。
多くの感情の中から、溢れ出たものだからこそ、
ホーキング博士の表情は、輝いて見え、深みを帯びる。
 
ホーキング博士を演じるレッドメンを通して、
その向こうに広がる感情の星を、感じることが出来た。
 

 
 


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