たんたん日記「英国総選挙2024をちょっぴり分析する」
2024年7月4日に投開票があったイギリスの庶民院(下院)選挙は野党の労働党が圧勝したと伝えられている。確かに獲得議席数を見れば、与党保守党が121議席と前回の三分の一程度にトラス、じゃなかった、減らす一方、野党労働党が412議席と前回の2倍程度を獲得して総議席数650の三分の二近くを占めた。
ただし、得票率を眺めれば、保守党対労働党の比率は2対3程度の差しか無い。それでも保守労働の二大政党が凡そ圧倒的な議席数を占めているのは、イギリス議会が単純小選挙区制のみを採用し、比例代表による議席選出が全く無いからだ。
それでは具体的に各政党の得票率を以下列挙しよう。なお、選挙全体の投票率については、前回2019年総選挙の67.3%から今回2024年の約60%へと低下している。これは2001年選挙の約59%に次ぐ低水準の記録である。
主要政党 今回2024 前回2019
議席数 得票率 得票率
保守党 121 23.7 43.6
労働党 412 33.8 32.1
自由民主党 72 12.2 11.6
スコット国民 9 2.5 3.9
緑の党 4 6.8 2.6
リフォームUK 5 14.3 2.0
その他 27 6.7 4.2
合計 650 100.0 100.0
(注:リフォームUKの2019年における数値は旧ブレグジット党)
上記の結果において最も注目すべき点は、与党保守党の得票率がなんと半分程度に落ち込んだことだ。恐らく前回に保守党に投票した人のスナク、じゃなかった、少なくとも4人に一人が投票権を放棄したのだろう。さらにまた、4人に一人がファラージ率いるリフォームUKに流れたように思われる。
次に、大勝を収めた野党労働党の得票率を見ると、前回からほとんど変わっていない。言い換えると、同党の掲げる思想信条や政策に対してイギリス国民から新たな支持を得た訳では無い。したがって、今回の勝利は凡そ政権運営の失敗といった与党の敵失や保守層の分裂による「たなぼた」と言えよう。
ちなみに、労働党が全体の三分の一程度の得票率で総議席数の約63%を得ることができた一方、得票率が14%を超えたリフォームUKがたったの5議席に留まった点を眺めれば、比例代表を少しも採用しない単純小選挙区制は国民全体の民意を凡そ反映しない欠陥制度であることが理解されるだろう。
それはさておき、もしもイギリスの選挙制度がこのままで、また、ファラージが若い有能な女性辺りを新しい党首に指名して保守層を引き付けたら、恐らくフランスの国民連合の躍進のように四年後にはいわゆる「極右」(笑)が政権を握るだろう。
なお、国連やEUを支持する左翼勢力は今回の英国における選挙結果に気を良くしているかもしれない。しかしながら、反グローバリズムを掲げる愛国的な動きは現今の世界的な潮流であって、それを押し止めることはもはや不可能である。
もちろん、前回の米大統領選挙のように可笑しなことをすれば、世界中の民族を混ぜ混ぜしてスタートレックのような世界を目指せるかもしれない。しかし、そんなインチキがいつまでも続く訳が無い。なぜなら、社会共産主義は人間が誇りに思う人種、民族、宗教等の多様なアイデンティティを否定する思考だからだ。
それにつけても、政治は難しい。それでも、政治は明るく楽しく、そして素晴らしいものだ。