「ヒツジは、小さい木をたべるんだったら、花もたべるんだろうね?」
サン=テグジュペリ『星の王子さま』
(内藤濯訳, 岩波文庫, 2021)

 

(SEVENTEEN 9th Mini Album ‘Attacca’ Concept Trailer ‘Rush of love’よりスクリーンショット )
 
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今回は、
POWER OF LOVEプロジェクトにおける
ジュンの役について
考えていきたいと思います。
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※この記事はこちらの記事の続きです。

 

※考察をはじめから読むにはこちらをご覧ください。
(10) JUN 《ヒツジ》

 
  『星の王子さま』で、王子さま(ディエイト)は故郷の小惑星に帰る際、地球で友だちになったキツネ(DK/ウォヌ)も「ぼく」(ミンギュ)も連れて行きません。自分の体すら、重すぎるので置いていくと言います。
 
 王子さまが地球から連れて帰ったものは、ただひとつ。「ぼく」にもらったヒツジです。
 
 ジュンがこのヒツジを表現していると思う理由を以下に挙げていきます。
 
① Performance Teamの一員である

(画像1 'Attacca' Op.2のPerformance Teamのコンセプトフォト。王子さまがバラにかけたガラスの覆いを思わせるガラスの箱があります。引用元は記事末尾に記載。)
 
 これまで考察してきた通り、今回のプロジェクトにおけるPerformance Teamには「空(宇宙)の住人」を思わせるところがあります。
  『星の王子さま』で、王子さまの星にいるのは、①王子さま、②バラ、③架空のトラ、④ヒツジの四人です。王子さまがディエイト(考察Part2)、ディノがバラ(考察Part5)だとすると、もうトラはあのメンバーしか考えられませんので、ジュンがヒツジという説はこの時点でかなり濃厚です。
 
 
②白い風船を漂わせ、赤い飴をくわえる

SEVENTEEN 9th Mini Album 'Attacca' Concept Trailer 'Rush of love'

 

 まずはこのコンセプトトレーラーをご覧ください。この映像の中で、ジュンは白い風船をいくつか束ねたものを持ち、自分の周りにふわふわと漂わせています。そして、赤いロリポップ・キャンディをくわえます。この赤い飴は下のスクリーンショットのように手描き風のCGが重ねられ、「棒の先についた赤い丸」に単純化されます。

 

(先に引用したトレーラーよりスクリーンショット)
 
 この「赤い丸と棒」、『星の王子さま』のバラの絵に似てはいないでしょうか。
 
 
(LE PETIT PRINCE, Saint-Exupery, Editions Gallimard, 1946)
 
 かなりそっくりに見えます。
 
 さらに、王子さまは「ぼく」にこんなことを尋ねます。
 
「ヒツジは、小さい木をたべるんだったら、花もたべるんだろうね?」
「いきあたりばったり、なんでもたべるよ」
「トゲのある花も?」
「そう、トゲのある花も」
―サン=テグジュペリ『星の王子さま』
 
 ヒツジがバラを食べてしまうか、というこの話題は王子さまにとって重大な問題であり、これがきっかけで王子さまは「ぼく」と口論になり(というか、王子さまが一方的に怒り)、泣いてしまいます。そういうことがあったので、「ぼく」は最終章でも、空を見上げながら、ヒツジがバラを食べてしまって王子さまが泣いているんじゃないか、という心配をしています。
 
 ヒツジには、一般的に、白くてふわふわした雲のようなイメージがあると思います。その上、『星の王子さま』に登場するヒツジは最終的に王子さまの惑星に居るので、空に浮かんでいるイメージがより強くあります。
 
 そのようなことを考えると、'Attacca'のコンセプトトレーラーや‘Rock with you’ MVで白い風船をふわふわと漂わせ、バラの挿絵とそっくりな赤いキャンディをくわえるジュンが、『星の王子さま』に登場するヒツジを表現していると考えるのは、かなりあり得ることのように思えます。
 
 
③ I'm balloon
(画像2 'PANG!'のジュン。)
 
 ジュンが空を漂う風船であるイメージは、'Attacca'に収録されているPerformance Teamの'PANG!'にも引き継がれています。
 
 'PANG!'は、宇宙を漂うイメージと、自分を風船に喩え、大きく膨らんでそれ以上近づいたら破裂してしまうような思いを歌っています。全体的にかなり『星の王子さま』に合う歌詞ですが、'I'm balloon'や、来ないで!という部分が印象的ですよね。
 
 これはもちろん可愛らしい恋心を歌った曲としても聞くことができますが、バラと風船の攻防戦を歌っているという解釈も成り立つように思います。
 バラを食べようとするヒツジ(=ふわふわと空を漂う白い風船)と、トゲで身を守ろうとするバラ。トゲが刺されば風船は割れてしまいますので、なかなか近づくことができない関係にあるのではないでしょうか。
 

SEVENTEEN 

9th Mini Album 'AttaccaHighlight Medley

1:51からが'PANG!'です。星を創る宇宙の実験室のように見えます。

  

 ちなみに、PANG!でPerfomance Teamは白衣を着て不思議な実験室にいますが、サン=テグジュペリの『戦う操縦士』には、飛行機に乗って上空から見下ろすと人間の営みがちっぽけに見えることを、望遠鏡は顕微鏡の役割をし、人間がプレパラートの上に散らばっている、僕は科学者だ、と喩えた箇所があります(『戦う操縦士』、サン=テグジュペリ作、堀口大学訳、新潮文庫、昭和45年、59ページ)。

 

 この描写と'PANG!'の映像との重なりは、「Perfomance Team = 空に居る人」という解釈をより信憑性のあるものにしてくれると思います。

 

 

④ディエイトとともに故郷へ帰っていた時期がある

 考察Part2で、ディエイトが王子さまであるというお話をしましたが、POWER OF LOVEの'Attacca'のカムバック期間を含む2021年9月から12月の四か月間、ディエイトとジュンは出身地である中国での活動に専念していました。
 
 これはパンデミックにより簡単に国を行き来できなくなったこと等を踏まえてのグループとしての決断でした。二人が久しぶりに家族と会い、中国のドラマや雑誌に出演して彼らとSEVENTEENの可能性を広げる素晴らしい機会となりましたが、メンバーたちと離れて暮らし、一緒に活動することのできない期間でもあり、彼らは互いに応援し合いながら再会の日を心待ちにしていました。

 二人が中国にいる期間に行われたPower of loveのオンラインコンサート。グッズやポスターには二人の姿もあり、テレビ電話でのMC参加や、映像を通してのステージ出演もありました。

 

 まるでファンの一人のように、ディエイトの配信を見るホシ。メンバー間でSNSや電話で連絡を取り合っているようすもよく見られました。

 

 ジュンのドラマ撮影現場に送られた、メンバー一人一人からの麦のブーケとメッセージ。この麦に込められた意味については、考察Part3に書きました。

 

 たくさんの話し合いの上で決めたことでしょうから、'Attacca(タイトル曲'Rock with you')'の活動期間にディエイトとジュンが遠くにいるということを、メンバーたちは、そのことを公表するかなり前から知っていたのではないかと思います。
 
 では、アルバムやMVには参加しているが、テレビ出演やコンサートのステージにはいない二人のポジションを、パフォーマンスの上でどうやって補うか
 ファンに対しても自分たちに対しても、「離れてれていてもひとつ」「また必ず会える」というメッセージを伝えるためには、どんな作品にすべきか
 
 きっと、こういうことを考えた時に、ディエイトを星に帰る王子さまに、ジュンを王子さまが一緒に連れて行ったヒツジにしようという案が出たのではないかと私は思います。

 

 これは個人的な感想ですが、オンラインコンサートPower of loveにおいて、パフォーマンスチームが「チーム曲は披露せず、出演できるホシとディノがそれぞれのソロ曲を披露したこと」と、「ジュンとディエイトが'Network Love'という別のユニット曲にて、曲のコンセプトに合う形で映像出演したこと」に、私はとても感動しました。

 「一人でもステージを掌握できる実力」と「四人揃うまでチームの曲はやらないという選択」に、パフォーマンスチームであることの矜持と絆を感じたからです。

 また、歌詞の内容に合う曲を選んで二人が映像で参加したことは、SEVENTEENがファンとメンバーだけでなくステージというものを大事にしていること、ただ仲の良さをアピールするのではなくパフォーマンスとしての美しさを考えた上で全員でステージを作品として完成させるというプロ意識の表れのように感じられました。

 

(SEVENTEEN'あいのちから'MVよりスクリーンショット。MVは後ほど引用)
 ジュンが、窓のあるたくさんの箱とつながった糸のようなものを握っています。これは直接会うことのできないSEVENTEENとファンや中国に居たジュンとディエイトなど、遠く離れた家と家を繋ぐネットワークを表したものかなと思います。そして、同時に、『星の王子さま』でヒツジの家となる「三つの穴が開いた四角い箱」のイメージとも重なっているのではないかと思います。王子さまとぼくは、ヒツジに綱をつけるかという会話もするので、ジュンが握っている糸もそのイメージかもしれません。背景に見える金色の草原も、離れ離れになっても金色の麦の穂を見れば君を思い出すというキツネと王子さまの会話を思い起こさせます。
 
 『星の王子さま』の最終章で、「ぼく」は空を見上げながら、王子さまの故郷の星で、王子さまとヒツジがどんなふうに過ごしているか考えています。
 
 王子さまとの出会いや王子さまと過ごした時間は、「ぼく」に五億の笑う鈴をくれました。空を見上げ、そのどこかで王子さまが笑っていると思えば、五億の星全部が笑っているように見えるのです。それは、キツネが風に揺れる金色の麦の穂を見れば王子さまの髪の色を思い出して嬉しくなるのと同じ意味を持っています。
 
 しかし、悲しいことに、王子さまは、去って行く時、帰って来る約束をしてはくれませんでした。ただ出会えたことにこれからも意味があり続けることだけを伝えて、消えてしまったのです。キツネも、「ぼく」も、ヘビも地上に残して。ヒツジだけを連れて彼は消えました。
 「ぼく」は最後のページで、もしも王子さまが帰って来たら教えてくれと読者に頼んでいますが、その後王子さまが帰って来たのかどうかはわからないまま物語は幕を閉じます。
 
 しかし、SEVENTEENが、作品の中でとは言っても、ジュンとディエイトを二度と帰らない人に喩えるでしょうか?パンデミックによりCARATと直接会えない日々が続いているこの時期に、再会の無い物語を描くでしょうか?
 
 私は、むしろ、そのような時期を乗り越える再会の物語を描くために、SEVENTEENは『星の王子さま』を引用したのではないかと思っています。
 
 それがどういうことか、次の項で説明していきます。
 
 
⑤Heaven's Cloud
 『星の王子さま』で、 王子さまは、「ぼく」に、ヒツジが欲しいと言います(正確に言うと「ヒツジの絵を描いて」とねだるのですが、王子さまにとっては紙に描いたヒツジは本物のヒツジと同じように生きているのです)
 

(画像3)

 

 私は、このヒツジに、SEVENTEENの作詞家であるウジが、POWER OF LOVEにおける重大な意味を持たせたと思っています。

 

 POWER OF LOVEプロジェクトに含まれていると公言されている二つのアルバム、'Your Chice'と'Attacca'を思い出してみてください。

 その中に、「雲を欲しがる人」が出て来る曲がなかったでしょうか…?

 

Give me your, give me your, 

give me your

Love, love cloud

―SEVENTEEN  'Heaven's Cloud'

 

 

 'Heaven's Cloud'は、2021年6月にリリースされた8th Mini Album 'Your Choice'に収録されています。「雲で作ったカップに温かいコーヒー」「蝶の羽で探すあなたの呼吸」などの美しい言葉に満ち、語り手(歌詞の主人公)とその愛する人が雲の上の楽園で暮らしているような幻想的な世界を描いた曲です。

 

 今回の考察をする上で注目したいのは、この曲のサビに登場する"Love cloud(愛の雲)"の役割です。

 

 この曲のサビでは"Give me your love cloud(あなたの愛の雲を私にください)"という言葉が繰り返されます。

 そして、その直前の歌詞から、雲を欲しがっている理由は、「もしここから地に落ちて 知らない人になってしまっても お互いがわかるように」だということがわかります。

 

 「地に落ちて」というのが比喩でないなら、この主人公は文字通り天使のような存在で、地球や冥界などの別の世界に落ちて記憶を失ってしまっても、というような物語だと考えられます。また、これが比喩で、私たち人間の話であるなら、いつか死に別れるなどして離れ離れになっても、来世でも一緒にいたいと想像するほどの深い愛情を歌っていると考えられます。

 そして、いずれにせよ、そのようにして再び巡り会った時にお互いのことを思い出すための目印として必要なものが「雲」なのです。

 

画像4)

 

 先に述べたように、一般的に雲とヒツジは互いに喩えられることがあります。

 そして、POWER OF LOVEにおいてヒツジが白い風船のイメージも持っており、ふわふわと空を漂うものでもあるのならば、それはなおさら雲に似ています。

 

 サン=テグジュペリが描いた『星の王子さま』において王子さまがヒツジを欲しがるのは、友だちがほしかったり故郷の惑星に生える雑草を食べてほしかったりしたからです。しかし、ウジはここに、'Heaven's Cloud'という曲を作ることで、新しい理由を与えたのではないでしょうか。

 

 つまり、王子さまがヒツジを欲しがった理由は、POWER OF LOVE的新解釈においては、いつか遠い未来でまた巡り会えた時に、お互いのことを思い出すためだということです。

 このプロジェクトにおいて、ジュンが演じるヒツジは、どんなに遠く離れても、どんな世界に生まれ変わっても、未来で再び出会い、必ずまた一緒に居ようという約束の証としての「雲」なのです。

 

SEVENTEEN 'あいのちから' MV

 POWER OF LOVEの最後を飾ったこの曲では、ヘビやキツネや「ぼく」など地上に残された側の人物であったはずのウォヌやミンギュが雲の上や星の上におり、彼らも自由に空を舞う存在になったことが示されているように感じられます。

 

 

③王子さまとヒツジ

(画像5 右下の入場券に描かれているのは、三匹のヒツジと、ヒツジが入った箱。画像の引用元は記事末尾に記載。)

 

 『星の王子さま』において、ヒツジは王子さまの目にしか見えません。「ぼく」は王子さまにヒツジを描いてと頼まれて三匹のヒツジを描くのですが、どれも王子さまの気に入らなかったので、すこし面倒になり、四角い箱を描いて王子さまに渡します(上の画像参照)。

 

 「こいつぁ箱だよ。あんたのほしいヒツジ、その中にいるよ」

 ぶっきらぼうにそういいましたが、見ると、ぼっちゃんの顔が、ぱっと明るくなったので、ぼくは、ひどくめんくらいました。

 「うん、こんなのが、ぼく、ほしくてたまらなかったんだ。このヒツジ、たくさん草を食べる?」

 「どうして?」

 「だって、ぼくんとこ、ほんとうにちっぽけなんだもの……」

 「そんな心配いらないよ。だから、ぼく、ほんのちっぽけなヒツジ、かいたんだ」

 ぼっちゃんは、絵をのぞいてみながらいいました。

 「そんなにちっぽけじゃないな……おや! ねちゃったよ、このヒツジ……」

 こうして、ぼくは、王子さまと知り合いになりました。

   サン=テグジュペリ『星の王子さま』(内藤濯訳, 岩波文庫, 2021)

 

 王子さまには、「ぼく」が描いた箱の中に、ほんものの生きたヒツジが見えるのです。
 
 このように王子さまの目を通して王子さまの頭の中に存在するという意味では、ヒツジの存在は王子さまによって成り立っていると言えます。また、先の項で引用した画像にあったように、反対に、王子さまがヒツジを欲しがっていたことが「王子さまがこの世に存在した証拠」だと言われている箇所もあります。
 つまり、王子さまとヒツジは、この物語において、切り離すことのできない一つの存在のようでもあるのです。
 
 ここで私は、まるで『星の王子さま』の物語を表現するために組まれたかのようなセットリストになっていたオンラインコンサート'IN-COMPLETE'で、ジュンとディエイトがどのように登場したかを思い出しました。
 二人は、自分自身の過去と未来、光と影が対話しているような歌詞とパフォーマンスから成る'MY I'を歌いながら登場したのです。

 

SEVENTEEN JUN&THE8 'MY I' Chinese ver.

 

 'MY I'は2017年の曲であり、THE8が映画『君の名は。』からインスピレーションを受けて書いたものとも言われているようですが、今回の考察上重要なのは、それが'IN-COMPLETE'のオープニングで歌われたという事実です。

 何度も書いている通り、このコンサートは'POWER OF LOVE'を読み解くヒントに満ちています。また、2021年の1月に開催されたため主に2020年の曲から成っているのは自然なことですが、この曲のようにあえて2019年以前のアルバムから選ばれるのには、今回のコンセプトに合っているなどといった理由があるはずです。

 

 オープニングには、'Turn right! Turn left!'と叫ぶ声も、棘のある花も、毒も登場しました。その中で、ジュンとディエイトが'MY I'を歌いながら一つの存在であるかのように踊って登場したことは、ヒツジと王子さまの関係にもよく合っていると言えます。

 

 また、『星の王子さま』において、王子さまはあまり自分の過去のことを進んで語らないのですが、「ぼく」はヒツジの話題を通して王子さまについて徐々に知っていきます。

 

 日ごとに、ぼくは、王子さまの星のことや、王子さまが、その星を出てきた時のことや、それからの旅のことなどを、なんということもなく知るようになりました。いきあたりばったり考えているうちに、しぜん、話がわかってきたのです。そんなわけで、ぼくは三日めに、おそろしいバオバブの話をききました。

 そういうことになったのも、やっぱりヒツジのおかげでした。というのは、王子さまが、ひどく心配そうな顔をして、やぶから棒に、こう、ぼくにきいたからです。

 「ヒツジが小さい木をたべるって、ほんとだね?」

 サン=テグジュペリ『星の王子さま』(内藤濯訳, 岩波文庫, 2021)

 

 ディエイトは言葉も文化も違う国からやって来て、SEVENTEENに加入したのも最後だったので、自分のことをメンバーに伝え、知ってもらうまでにはおそらく少し時間がかかったと思います。そんな中での、もう一人の中国出身のメンバーであるジュンの存在は、言葉の面でも心理的な面でも、きっととても大きかったと思います。

 もちろんディエイト本人の努力や人柄によるところが一番大きいと思いますが、「ぼく」がヒツジを介して王子さまのことを少しずつ知っていったように、ディエイトがメンバーと打ち解けていくのをジュンが助けた面もあったのではないでしょうか。

 

 ジュンとディエイトが、ヒツジと王子さまという分かち難い存在を演じることは、とても自然なことのように感じられます。

 

④舞い落ちるジュン

 POWER OF LOVEプロジェクトにおける

  ●ヒツジの意味⇒再会の目印としての愛の雲

  ●ヒツジと王子さまとの関係⇒完全には分離できない、一つの存在のようなもの

が分かったところで、

'舞い落ちる花びら'のジュンを思い出してほしいと思います。

 

 POWER OF LOVEプロジェクトの第一弾は2021年5月の'Bittersweet'とされていますが、私は2020年にこのプロジェクトがひっそりと始まっていたと考えています詳しくは考察Part7~8をご参照ください)。

 

 '舞い落ちる花びら'も2020年の曲ですが、2021年の'IN-COMPLETE'で歌われたことや、'Attacca'のHIghlight Medleyにて'I can't run away'(2021)の映像に明らかにこの曲との関連がみとめられることから、POWER OF LOVEにとって重要な曲と考えられます。

 

 (画像6 'I can't run away'のウォヌ。ウォヌについては考察Part4と4.5に書いてあります。)

 

 'I can't run away'は、故郷の星に帰る王子さまを引き留めることができず、王子さまがいなくなった後も自分がそこから立ち去ることもできないままでいる、地上に残された側の人物たちの思いを歌っているように感じられます

 

 そして、'舞い落ちる花びら'のMVには、ジュンが舞い降りてくるとても美しい場面があります(以下、上に引用したMVよりスクリーンショット)

 

 
  真っ白な服を着たジュンは、「君へと舞い落ちてくよ」と歌いながら、地面に縛られたウォヌのもとに舞い降ります。
 

  これまでの考察を踏まえると、この場面は、ヒツジであり王子さまであるジュンが、彼に行かないでと言えなかったキツネのもとに帰って来た、再会の場面であると言えるのではないでしょうか。

 

 リリースの順番は'舞い落ちる花びら'の方が先ですが、作品の順番と物語の時系列が一致していなければならない理由は特にないと思います。

 私の推測通りこのプロジェクトが2020年に始まったのだとすれば、2020年の最初の曲である'舞い落ちる花びら'によって、物語の結末が示されていたのだと思います。

 実際の再会の場面というより、再会できるという結末を暗示する夢のようなものと言ってもいいかもしれません。

 

 '舞い落ちる花びら'の語り手が「私は花」と言っていることも忘れたわけではありません。花と王子さまとの一致については、ホシの記事で触れたいと思います。

 

SEVENTEEN 9th MINI Album 'Attacca'

 Highlight Medley

I can't run awayは3:22からです。

 

SEVENTEEN '舞い落ちる花びら' MV

 

 

⑤ I tell you  this time I wanna rock with you
 プロジェクトのクライマックスとなった'Rock with you'のサビには、"this time"という言葉があり、背景などによっても強調されています。この"this time"とは、どういう意味でしょう? 「今この瞬間」という意味であれば、"now"や"this moment"などの方がよい気がします。"This time"というと、何かと比べての「今回は」「今度は」という意味で使われることが多いと思います。
 
(画像7 'Rock with you' MVのセット。)

  

 これまでの考察から、私は、この"this time"は、王子さまを引き留められなかった「ぼく」やキツネの過去、そして、飛行大隊の僚友たちを戦争によって奪われたサン=テグジュペリの過去という「前世」的なものに対する「今度こそは」ではないかと感じます。

 

 また、SEVENTEENにとっては、時には離れ離れになることのあったファンやメンバーと再会した暁には、そして、不安な思いを乗り越えて再契約を交わしたその後は、今度こそずっと一緒に居続けたいという思いを込めたものなのではないかと思います。

 

 'Ready to love' では風船が地面に繋がれ"Can we stay together?"と願うように尋ねていたのが、'Rock with you'では空に放たれその思いが明確に"I wanna stay with you"という宣言に変わります。また、悲しい時には夕日を眺める習慣のある王子さま(ディエイト)を包む空が、コンセプトトレーラーでは赤く燃えていたのに、‘Rock with you’では青く晴れ渡ります。これは、この曲が、再会後の明るい未来である"This time"を表しているからではないでしょうか。

 

PAST LIFE

 
THIS TIME
(画像8,9 上の写真は1920~40年代の、下の写真は現代の飛行士たちのように見えます。)
 

 そして、'舞い落ちる花びら'で再会を予告する夢を見せてくれたのがジュンならば、現実の世界での再会を描いた'Rock with you'で、お互いに気づくための目印となる風船を放ったのもジュンなのです。

 

 このように、ふわふわと空を漂う真っ白なヒツジは、必ずまた会おうという真っすぐで強い思いをのせた約束の雲として、大きな意味を持っています。

 『星の王子さま』の物語をただなぞるのではなく、ウジの詞によってそこに新しい意味を加えて創った、SEVENTEENの物語の中で。

 

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 「1+1」発言で大盛り上がりとなった過去のGOING SEVENTEENで、「中国を遠いと思わないでください」と言ったこともあるジュン。日本語の曲をカバーしたり、中国語でソロ曲を出したりと、いつも世界中のファンを気遣ってくれています。オンラインコンサート'Power of love'でも、テレビ電話で笑顔を、"Network love"では凛とした姿を見せてくれました。

 

 そんなジュンが、どんなに離れても、どんなことがあっても、絶対にもう一度会おうという約束を表した「愛の雲」を演じることには、大きな意味があると思います。

 

 明日からはディエイトとともにGOING SEVENTEENにもいよいよ復帰するので、楽しみですね。

 

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 今回も読んでいただきありがとうございます。次回は、ジョンハンウジ(あるいはどちらか一方)について書きたいと思っています。 

 

SEVENTEEN

'Rock with you' Official MV

 前回考察したジョシュアの役割や、歌詞の意味も確かめながら、ぜひ、冒頭のジュンを見てみてください。

 

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画像引用元

 

※1

 https://twitter.com/pledis_17/status/1446491825418682372?t=-_DuVLQ-LLozsVweMuGmGw&s=19

 

※2と6

 https://twitter.com/pledis_17/status/1449752081426882567?t=HF9Vi-Nw39avYQ-IYVX6eA&s=19

 

※3

 

※4

 

※5

 

※7とカバー写真

 https://twitter.com/pledis_17/status/1456531753552596992?t=7-pnr1fduP5kMTXMAGZW4Q&s=19

 

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