新薬の臨床試験は、以下のような流れになる。

 

第Ⅰ相試験:小数(20〜80人)を対象にした試験で、安全性を評価し、副作用を特定する。

第Ⅱ相試験:多数(100〜300人)を対象にした試験で、有効性と安全性を評価する。

第Ⅲ相試験:大多数(1000〜3000人)を対象にした試験で、有効性の確認、副作用の監視、従来の治療法との比較を行う。

 

3つの試験を経て効果が確認されれば、新薬の承認申請を行う。

国(厚生労働省)の審査には、通常1〜2年かかる。

 

透析患者特有の④脳内の痒み制御メカニズムの異常は、以下のようにして起こる。

 

中枢神経や末梢神経にあるオピオイド受容体は、疼痛、鎮静、鎮咳、消化管運動抑制に関わり、μ(ミュー)、δ(デルタ)、κ(カッパ)の3種類のタイプがある。この中でも、κ受容体は、透析による痒みに深く関係している。

オピオイド受容体の作用発現はサブタイプごとに異なり、κ受容体はμ受容体と相反する作用を示す。

つまり、μ受容体が優位になると痒みが起き、κ受容体が優位になると痒みが抑制されることになる。

 

透析患者の血中ではμ受容体を活性化させるβエンドルフィンの血中濃度が上昇するため、中枢性の痒みが発生する。

κ受容体が優位になるとこの痒みが抑制されることから開発されたのがレミッチ(一般名:ナルフラフィン)という薬である。

 

今回、第Ⅲ相試験の結果が良かったジフェリケファリンも同じ作用を持つようである。

レミッチが経口薬であるのに対して、ジフェリケファリンは静脈注射用製剤なので服薬アドヒアランスの向上と透析クリニックへ薬価の差益をもたらす。

 

まだ新薬の承認申請をしていないので、ジフェリケファリンが世に出るのは2年以上先になるのかな。