日系食品会社が日本と同じ商品を海外で販売する場合、自国市場とは異なる商品の質や販路を開発・開拓する必要がある。「安全・安心」という日本ブランドの強みを生かし、機能性に質の高さを備えた商品の投入や新たな販売形態の導入を進める動きも目立つ。業界動向の食品シリーズ2回目は不二製油とタマノイ酢の動きを追った。

 ■域内向け出荷拡大

 チョコレート用油脂大手である不二製油は、シンガポール現地法人ウッドランド•サニーフーズ(WSF)でチョコレートやアイスクリーム用などの調整品のほか、製菓、製パン用マーガリンなどを製造している。WSFは1988年に設立。原料を無税で輸入できる上、立地的にも世界各地からの アクセスが良く原料調達に有利な立地条件を備えており、生産拠点として最適な環境を備えていることが進出の背景にある。

 生産量全体の75%は調整品が占める。原料そのものを日本側で輸入すると高い関税がかかるため、内外価格差縮小のため海外で安い原料を合わせて調整品を作ることで、低関税で日本に出荷できるメリットがある。ただ日本市場では今後の大きな伸びが期待しにくいので「東南アジア向けに出荷している製品を中心とした残り25%の比率を将来的に50%まで高めたい」(WSFの金森泰助マネジング・ディレクター)考えだ。25%には製菓、製パン用マーガリンのほかホイップクリーム、冷凍生地、ショートニング、ベシャメルソースなどが含まれる。

 日本では微妙な味加減や舌触りなど高い品質が求められるが、域内向けの製品は暑い気候や販売環境が整っていないことを受け「溶けにくい」「割れにくい」「品質が安定している」といった機能性の高さが優先される。また東南アジアでは、パンは軟らかくて甘いもの、チョコレートは濃い味など嗜好(しこう)も日本と大きく異なるため、日本とは違った競争を強いられている。アジアでは現地メーカーをはじめ競合他社が多く廉価品も多く出回っているが、下層向けの市場は深追いせず、機能性に品質の高さを合わせた商品を投入することで差別化を図りたい考えだ。業界大手として、既存の商品に加えて繊細な風味など一歩進んだ味を作り、市場の啓発を図ることも必要と考えている。

 このほかWSFでは2001年8月、アジアのニーズに即した製菓、製パン素材をユーザーや販売店と共同開発する「フジサニープラザ・シンガポール」を社内に開設した。日本で培った提案営業(顧客と一緒に製品を開発する手法)を東南アジアでも展開し、現地に合った菓子やデザート、パンを開発することで、急激に洋風化するし好の変化に対応している。

 不二製油はシンガポールでWSFのほか、チョコレート用油脂などのスペシャリティファットを生産するフジオイル・シンガポール、スペシャリティファットやマーガリン、ホイップクリームなどの販売会社フジサニーフーズを置いている。「フジサニーフーズは、WSFの生産量の25%に相当する部分の比率をさらに高めるために設立された」(同マネジング・ディレクター)。グループ内で連携し、地元の需要に迅速に対応して「現地で作り現地で販売する」体制を強化していく考えだ。

  ■1年で品目10倍に

 タマノイ酢は昨年シンガポールに進出。同年1月に活動をスタートした駐在員事務所は同7月に現地法人に格上げしており、醸造酢、粉末酢、健康飲料 などの販売を手掛ける。進出したのはちょうどリーマン•ショックの発生直後だったが、タマノイ酢シンガポールの案納正幸ディレクターは「不況で物価全体が安くなった上、日系レストランの進出も加速していた時期でむしろ事業展開しやすかった」と話す。

 進出当初の事業範囲はシンガポール市場だけだったが、この1年間でマレーシア、インドネシアにも進出。取扱商品も最初は粉末すし酢「すしのこ」など2種類だったが、 現在はドリンク類など約20種に増えている。

 商品は業務用・小売の両方を展開する。業務用ではお酢を中心に日本レストランなどに卸しており、日本食ブームを受けて出荷は好調だ。小売は消費者の生の声を汲み取りたいと、同氏自らスーパーマーケットの店頭に立ち定期的に試食会を実施。日本でも人気のドリンクビネガー「はちみつ黒酢ダイエット」は、日系のほか地元のスーパーでも販売プロモーションを行い顧客開拓を進めている。 当初は日本人市場 をメーンターゲットに据えていたが、現在は地元の消費者の開拓も積極的に行っている。日本では小さなパックが主流だが、当地では家族で一緒に飲むため大きな容器の方がよく売れているという。

 また他社との差別化を図るため新たな販路の拡大にも力を入れており、昨年9月にはシンガポールで健康•美容に敏感な女性客を開拓しようと香港系化粧品ディスカウント• チェーンではちみつ黒酢ダイエットの販売を開始している。同様の販売形態はもともと香港で始まったが、同チェーンがシンガポールでも事業展開していることから導入を決めた。「商品説明などを行う研修が店員にいきわたっており、買い物客が抵抗なく試飲できる環境が整っている」(案納氏)という。現在はチェーン店7店で展開しているが、今後は店舗数を増やしていく予定。

 このほかすしのこは、フレンチフライにかけるなど日本と異なる使い方も登場しており、今後さらに 現地仕様のレシピを模索したい考えだ。

 域内では基本的に日本で販売しているのと同じパッケージの商品を投入。はちみつ黒酢ダイエットなどは側面に英語のラベルを貼っているが、パッケージ正面は日本語表記を全面に出している。「文字が分からなくても日本製と分かればそれだけで正規品、高品質というイメージを持ってもらえる」(同氏)。ただすしのこは、日本語表記だと使い方が十分浸透しないことも考えられるとして英語表記版を投入している。グループ全体で海外展開の本格化を進める中で、同氏がシンガポールで市場調査を行い 「英語版を発売すればより多くの人に使ってもらえる」と本社にフィードバックしたことが英語版商品の投入につながったという。

 域内市場では健康志向の高まりを受け同社製品に対する需要拡大が見込めることから、販促・営業活動の拡大を進める考え。今後はタイやオーストラリアなどほかの国・域内でも市場調査を進め、未開拓市場の掘り起こしを狙う意向だ。

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