倒産件数が減ったようですが | 望月ひりゅうブログ「基本と良心」

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望月ひりゅう
未来の子ども達から「ありがとう」と言われるよう努力を注いでいきたい

 民間調査会社によると、2014年の企業倒産件数が1万件を割り込んだようです。この報道だけを見れば、景気が回復してきたと思う方もいるかもしれません。しかし皆さんの実感はどうでしょうか?街を見渡せば、商店街は1階のテナントも空いているところが目立つし、馴染みの飲食店も閉店の予定で寂しいと感じている方が多いと思います。
 実は、倒産件数と廃業件数の合計は、1年間で4万件もあり、そのうち廃業件数は3万件で、倒産件数1万件の3倍もあります。この状況では、倒産件数が減っていると喜ぶことはできません。
 では、どうして倒産件数が減っているにもかかわらず、廃業件数は増え続けているのか、企業経営者の視点で考えてみたいと思います。
 まず、倒産件数が減っている背景を考えてみると、リーマンショックの後、モラトリアム法ができたことがあります。正確には「中小企業金融円滑化法」と言います。これがどういうものか簡単に説明すると、「銀行から借りているお金を一時的に返さなくてもよい」という法律です。リーマンショックという著しい経済の低下、自分の失敗でなく外的要因による業績の悪化、という背景を考えれば、企業を救うという点でこの法律は、機能していたと思います。実際、返済猶予で命拾いしたという企業は少なくないと思います。もとはと言えば、銀行だって一時的な公的資金投入で業績を回復した経緯があります。しかし、こんなことが未来永劫ずっと許されるわけがありません。返済猶予してもらっている企業が返済を再開することは、簡単なことではありません。そこで銀行は、任意ではありますが返済猶予や返済条件の変更を認めています。これらの理由から、本来倒産する企業が倒産しないでいる状態が生まれ、倒産件数が減っています。
 一方、廃業が増えている背景を考えてみると、最も多い廃業理由は後継者不足です。経営者の高齢化に伴い、後継者を探してみたけれど、適当な人材が見当たらない。後継者であるはずの身内は、早々と大企業に勤めてサラリーマンをしている。そんな息子たちや次世代に迷惑だけはかけたくない。そんな思いから、これ以上借金が増えないように、廃業という苦渋の決断をする経営者が後を絶たないということです。
 日本の企業数は、99%が中小企業です。従業者数で見ると、70%の人たちが中小企業に勤めています。2000年以降、銀行の合併、大企業の合併や買収、市町村の合併、学校の合併など、あらゆる業界で管理コストの効率化を図る行動が見られています。これは、何もしないで企業や行政がずっと維持できればいいけれど、何とかしないと将来大変なことになってしまうという判断から、管理コストの効率化が進んでいます。そのような現状から中小企業の状況を見ると、99%が中小企業という状態は、何か問題があるのかもしれません。日本人の性質から、慣れ親しんだものを変えるということは、とても大変で寂しいことかもしれません。しかし日本に現存する企業数の30%しか法人税を払っていない現状を見れば、この状態は異常です。
 私が言いたいのは、中小企業が多すぎると言いたいのではないのです。誤解しないでください。最も言いたいことは、日本の企業で利益を出すことは、とても難しいということです。ある政治家が、「企業が利益を出さないのは経営者の能力の問題だ」と発言して、大騒ぎになりましたね。企業が利益を出せないのは、挑戦する者が正しい方法で結果を出したとしても、報われる可能性は低いということです。これは、今までの社会を創り上げた政治に問題があるということです。その証拠に、利口な経営者は、どの国が、どの都市がビジネスをしやすいかを考えて、企業の拠点を探しています。世界銀行の資料によると、起業のしやすさを総合的に評価した起業環境の順位は、シンガポールが3位、香港が5位、アメリカが20位、日本はなんと120位となっています。この結果からも、企業が利益を出せない理由は、経営者の能力と関係ないことがわかります。日本の企業を取り巻く環境は、法人税や基礎的負担費が重いだけでなく、そもそも起業や開業しようとしても、スタートから高いハードルが用意され、難しいということです。
 これからの日本は、このままの状態が続けば、雇用に貢献している企業が無くなってしまいます。挑戦者には平等に機会を与え、正しい方法で結果を出せば報われる社会ができることを希望しています。そのような社会環境が整うように、私も努力したいと思います。