生産の国内回帰と業績 | 望月ひりゅうブログ「基本と良心」

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望月ひりゅう
未来の子ども達から「ありがとう」と言われるよう努力を注いでいきたい

 円安が長期化していることによって、パナソニック、キャノン、ホンダなどの日本企業が生産の国内回帰をしています。超円高のもとで海外に移転していった生産工場が日本国内に戻ってくることは、基本的に良いことです。たくさんの雇用が失われ、地域経済が疲弊し、中小企業が苦しんでいることは、徐々に改善されると予測されます。
 しかし、本当にそうでしょうか?今の日本企業の動きを見ていると、国内工場は稼働率を上げることや残業だけで対応しています。正社員の雇用を増やしたり、過去に閉鎖した工場を復活させたり、工場新設に積極的な企業は、多くありません。このような対応では、為替が円高になった瞬間に製造業の状況は、空洞化に戻ります。
 また価格については、日本へ戻ってきた製品の価格は、中国で生産していた時と同じことが多いです。これでは、日本と海外の人件費の差が縮まってきたとはいえ、中国価格で日本企業が利益を生み出すことは、とても難しいです。仮に中国価格が長期化すると、企業が破綻する可能性もでてきます。
 企業行動の視点で見ると、トヨタなどが改善活動でよいパフォーマンスをしたとしても、業績を上げることはありませんでした。しかし、為替が円高から円安に反転したことによって、今までよくらなかった業績は、一気に上昇してきました。そのような背景からわかることは、トヨタでさえ業績回復するためには、日本経済の安定や成長が不可欠で、いくら企業努力したとしても、自助努力では限界があるということです。もちろん、そんなことに左右されない企業体質にすることが、経営者の仕事だという議論もあります。しかし明らかなのは、税金にも保険料にも頼らない、補助金頼みでもない、本当の民間企業の業績は、日本経済に左右されるということです。金融政策や経済政策や産業政策は中小企業の業績へも大きく寄与しているのです。
 一方、本格的に製造業復活と言われているのが、アメリカです。ではどういう点が日本と違うか比較してみると、アメリカは投資したくなるような環境が整備されているのに対し、日本は投資したくなるような環境は整備されていないことがあります。アジアの人件が高騰していく中で、最終的に重要になってくるのは、法人税率です。企業が利益を出したとしても、法人税率によって残るお金が違ってくるのであれば、低税率の国を拠点にするのは当然のことです。税引後、多くのお金が残ることによって、設備投資に廻ったり、従業員の給料を上げてみたりと、積極的なことが可能になるのです。政府が「企業は給料を上げてください、設備投資を増やしてください」などと号令をかけているようですが、そんな号令だけでは限界もあるし、長続きしません。
 多くの企業経営者は設備投資をしたり、給料を上げたりしたいと考えています。それらをしたくないと思っている経営者はいません。政府は財政健全化の目標を達成しようとするあまり、バラマキによる見せかけの成長をさせようとしています。税金や保険料で一時的に潤っている業界は、こんなことが長続きしないことくらい一番良く知っているはずです。そんな歪んだ方法ではなく、誰もが積極的に設備投資や給料アップをしたくなる環境を整えるべきなのです。
 世界の優秀な企業経営者から、「日本でビジネスをするのが最適だ、だから日本でビジネスしよう」と言われるような環境にしてほしいです。今、日本政府は世界の企業経営者から注目されていることを、もっともっと認識すべきです。次の選挙のことばかり考えるのではなく、次の世代を考えて行動していれば、それは簡単なことです。将来、世界中の人たちから、選ばれる日本になる環境作りが期待されています。