本日の懐かしのホラー映画は、「悪魔の植物人間」(1973)。

植物と人間を融合させた新人類を生み出そうとするマッドサイエンティストのお話です。

大学で教鞭をとるノルター教授は、人間と植物を融合させる新しい人類を創造する研究に心血を注いでいました。
実験には被検者が必要・・と言う事で、 見世物小屋を経営するリンチに学生のブリジットを拉致させます。リンチは、教授の科学力により、自分の爛れた顔を修復して貰いたい一心で、教授の言いなりになっていました。
学生のトニーとローレンのカップル、友人のヘディは、渡英して来たブライアン少佐を歓迎、4人は親しくなって行きます。トニー達は、暫く消息を絶っているブリジットの事が気がかりで、時折話題にしていました。
ノルター教授は、次の被検者に男を指名。リンチは、トニーを拉致します。
実験は成功したものの、人間の心が残っているトニーは、ノルター教授に反撃をして脱走してしまいます。ローレンの前に姿を現したトニーですが、怪物の様に変わり果てた姿を見たローレンは失神。呆然自失状態となってしまいます。
教授は、次のターゲットに再び女性を指名、リンチはヘディを拉致します。
ヘディの書置きで事態を把握したブライアン少佐は、ノルター教授の屋敷へと向かいます。屋敷の入口でブライアン少佐の行く手を遮るリンチ。
一方、怪物となったトニーや、日頃からリンチへの不満を募らせていた見世物小屋のスタッフ達も団結して教授の屋敷へと向かっていました。
混沌とした状況の中、ブライアン少佐は、教授の屋敷から無事ヘディを救い出す事が出来るだろうか。
本作品を初めて観たのは学生時代です。高校の通学路にあるレンタルビデオ店で借りたと記憶しています。
ビデオソフト完全カタログで作品の存在は知っていたので、高校卒業前に・・と駆け込みで借りたのだと思います。
ただ、横になって観ている内にウトウトしてしまい、初回の鑑賞は殆ど記憶に残らない状態でVHS時代を終えてしまいました。orz
次に観る機会を得たのは5年程前になります。
友人の影響もあり、2020年から国内でBlu-ray化されていない古いホラー作品を輸入盤で買い集める様になりました。
友人は都内に勤務していたので、新宿のビデオマーケットさんに寄った際、時折耳寄りな情報を知らせてくれていました。
本作の時も、「ビデオマーケットさんに「悪魔の植物人間」(スリーブ付)のBlu-rayがあるけど、どうする?」と連絡があり、代理購入をお願いしました。
初回盤は、サントラCD付だった様ですが、残念ながらCD付は完売。
それでも印象的なスリーブ付のBlu-rayを入手する事が出来ました。
後に、キンレコさんから出たBlu-rayも廉価版になる前に購入したのは言うまでもありません。
オープニングに流れる植物の成長を早回した映像が印象的でした。
特に、食虫植物のモウセンゴケ・ハエジゴクの映像は、本作の後の展開を暗示するものになるので、興味深く観ていました。また、本作には、見世物小屋スタッフとして、実際の形態異常の方が多数出演しています。(フリークスや奇形と言う表現は余り好ましくないので、別表現に置き換えています。)
形態異常の人々が出演している作品として、トビー・フーパー監督の「ファンハウス 惨劇の館」や「センチネル」が思い浮かびます。
近年はメイク等で表現される事もありますが、アメリカン・ホラーストーリーS4「怪奇劇場」が見世物小屋の人々を描く物語となっていました。
(但し、怪奇劇場は、メイクで形態異常の人を演じている俳優さんも居ます。)
一番ビックリしたのは、目玉が飛び出る黒人でしょうか。容姿は他の人と全く同じなのですが、目玉だけ飛び出るんですよね。
異常と言うよりは、「特技」と言った方が良いでしょうか。
映像特典では、この俳優さんが街中で目玉を飛び出すと、女性は失神してしまうと語られていました。
製作費は、当時の価格で40万ドルにも満たなかったと言う事で、もっと余裕があったら、実験に失敗した被検者を出したかったそうです。
限られた予算は、ドナルド・プレザンスが演じるノルター教授の研究室のセットや見世物小屋のステージ等に使用されたと推察されます。
研究室には、液体を振動させて撹拌する「シェイカー」と呼ばれる科学機器等が置かれていました。
今回、再鑑賞するにあたり、トム・ベイカー演じるリンチの行動に焦点をあてて観てみました。
(映画本編のトム・ベイカーの容姿は、メイクによるものです。)
一見しただけで、人から怖がられてしまう様な、おぞましい顔に生まれついてしまった男でも、人並みに誰かに愛されたい。人並みの人生が送りたい。
それが動機で、彼はノルター教授の悪事に加担してしまいます。
とても、人間的な感情だと思いますし、結局いい様に使われて、願いが叶う事は無かったリンチが不憫に思えてなりませんでした。
どんな作品でも、どの登場人物に焦点をあてて観るかによって、作品の印象も変って来るので、映画って面白いですね。
自分本位の歪んだ理屈で神の領域に踏み入ろうとした狂気の科学者と、その野望に振りまわれてしまった男、悲運にも被検者にされた若者達を描いた作品です。
CGを使用しない、アナログ描写ならではの恐怖映像は、一度観たら暫くは忘れられないと思います。
本作のBlu-rayは、キングレコードさんより発売されていましたが、現時点では販売終了。中古市場では購入可能です。再発売が待たれますね。