本日の懐かしのホラー映画は、「モデル連続殺人!!」(1963)。
マリオ・バーヴァ監督によるジャーロ作品の傑作です。



悪天候の夜、クリスチャン・オートクチュールに帰宅したイザベラと言うモデルが、敷地内で何者かの手によって殺害されます。

クリスチャン・オートクチュールは、クリスティアーナ伯爵夫人の私有地で、アトリエ兼所属モデル達の宿泊施設となっていました。

イザベラの遺体は、後日オートクチュール内のクローゼットの中から発見されます。


シルベストリ警部がイザベラ殺人事件の調査の為に、オートクチュールを訪問。伯爵夫人に色々と尋ねます。モデル撮影の為、関係者達が慌ただしく動いている中、ニコルはフランコと名乗る男性と電話で話をしていました。

具合が悪いので来て欲しいと電話口の男に言われ、ニコルは指定された場所行ったまま、帰らぬ人となります。


イザベラは、生前赤い日記帳を大事にしており、そこにはモデル関係者の赤裸々な秘密やスキャンダルが色々と記されていました。

イザベラの赤い日記帳を手にしたペギーも犯人に拉致され、ストーブで顔を焼かれて惨たらしい最期を迎えます。事件は更に続き、第4・第5の犠牲者が出ます。イザベラの日記を巡る連続殺人事件、果たして犯人の目的は・・・。


日本で言う所の「黒皮の手帖」みたいな人々の秘密が記された日記を巡り、手にした者が犠牲になる連続殺人モノになります。


イタリアのスリラー映画をジャーロ(正式な呼称:ジャッロ)と呼び、一つのジャンルを形成しています。ご存じない方の為に簡単に説明しますと、その昔イタリアで刊行された推理小説の背表紙が黄色(ジャッロ)であった事が語源と言われています。

ダリオ・アルジェント監督初期作品の多くも、ジャーロに該当します。

(ジャッロの歴史については、キンレコさんからリリースされている本作Blu-rayの映像 特典にて、もっと詳しく語られていますので、Blu-rayをお持ちの方は御参照下さい。)


残念ながら、ジャーロ作品で国内ソフト化されたタイトルは、ごく一部の為、鑑賞した作品数も少なく、多くを語れる程の知識を持ち合わせていないのが現状です。自分が鑑賞した僅かなジャーロ映画の中には、物語に全く整合性がなく、犯人も監督の気紛れで決まったのではないか?と思える作品もありました。

本作に関しては、犯人の動機付けが明確で、最初から論理づけられた展開になっていると感じました。(映像特典インタビューによると、バーヴァ監督自身は余り論理的には考えていなかった様です。)


ノッペリとした白い覆面に黒い帽子、黒手袋に黒いロングコートを着た、本作の怪しい犯人像はインパクトがありましたね。ジャーロ作品でお馴染みの黒いコートに黒手袋を着用する犯人スタイルを確立したのは本作であると、映像特典インタビューで語られていました。また、殺害方法もバラエティに富んでおり、甲冑の一部である鉤爪を使用したり、真っ赤になったストーブに手や顔を押し付けて焼いたりと、サディステックな印象を残す手口でした。

個人的には、バスタブで溺死させられる第5の犠牲者タオ・リー(クロード・ダンテス)の死に方が一番強烈に残りました。目を見開いたまま、プカプカと浴槽に浮かんでいるだけですが、リアリティがあって恐ろしかったのです。


美術も凝っており、セットや衣装が兎に角オシャレ。

個人的には、赤いマネキンがインパクトあったと思います。他の作品で赤いマネキンは登場しませんからね。ピンク・紫系、緑と言った原色を使用した照明使いは、後のダリオ・アルジェント作品にも多大な影響を与えています。(「サスペリア」「インフェルノ」)

どれをとっても素晴らしく、今観ても全く色褪せない作品だと思います。


「モデル連続殺人!!」はVHS時代に縁が無く、2020年当時国内Blu-rayが発売される目途も立っていなかった為、「クレイジー・キラー」と一緒に海外盤Blu-rayを購入しました。

その後、キングレコードさんからマリオ・バーヴァのBlu-ray BOXが発売された時は大いに喜びました。

現在は、廉価版で単品発売もされ、比較的鑑賞しやすい作品になりました。(キンレコさんのBlu-rayには2時間近くの映像特典が収録されていますが、犯人について触れられている部分がありますので、本編鑑賞後に御覧下さい。)


最後に音楽について。

音楽を担当したのは、イタリアの映画作曲家カルロ・ルスティケッリになります。本作では、メインテーマに様々なアレンジを利かせて幾度も本編で流す手法を取っています。

本編を観ていると、メインテーマの旋律が心地よく耳に残りますね。

サントラ盤は、単品発売を経て、「白い肌に狂う鞭」とカップリング収録された2枚組CDがDIGIT MOVIESからリリースされました。

(現在は、入手困難になっています。)

幸い、ダウンロード盤が展開されていますので、Amazonミュージックで聴く事が出来ます。


※お知らせ

本記事をもって、更新は暫く「お休み」させていただきます。 もう少し涼しくなったら、充電して戻って参ります。