2018年12月6日
4:00AM
病院から携帯に電話が鳴った
「血中酸素濃度数値が
下がってきています。
今からいらっしゃいますか?」
と聞かれ
『もちろん行きます!』
と言って電話を切った。
夫に
『ママ、危ないかもしれない』
と告げながらも、頭の中では
(だいじょうぶ、
きっとまた復活しちゃうから。
ママはいつも、危ないって言われても
復活してきたから。
きっと今回もだいじょうぶ。
でも、長丁場になるだろうから、
ノートパソコン持って行こう。
書きかけの書類も・・・)
そう思いながら
準備をするわたし。
準備を済ませ、夫の車で病院に向かった。
今夜逢う予定だった友人にメールをしたら、
まだ朝4時過ぎなのに返信があった
「だいじょうぶ、だいじょうぶ」
と返信をくれた。
夫も、
「悪い方に考えないようにしよう。
だいじょうぶ、お義母さんのことだから、
きっとまた復活するよ」
と励ましてくれた。
4:42AM
ドキドキしながら病院に着いた。
足がもつれる。
エレベーターで7階へ。
母は、処置室に移動していた
酸素マスクをつけて、
とても苦しそうに呼吸をしていた。
『ママ、来たよ!』
「お義母さん、来ましたよ!」
でも、ママは目を開かない。
手を握っても反応がなくて
とても冷たい。
脳はとても熱い。
呼吸はものすごく荒かった。
わたしの心臓がバクバクし始めた
「血中酸素濃度数値が50%になっていて
非常に危険な状態です。
血圧を上げるお薬を投与しますか?」
と看護師さんに聞かれた。
わたしは
以前からママと約束していたので
『いいえ、打ちません』と
泣きじゃくりながら答えた。
「心肺停止の際には心臓マッサージはしますか?」
と聞かれた。
『ママ、いいよね?いいんだよね?』
とママに聞いた。
ても、ママは大きく呼吸を繰り返すだけで
当然返事をすることはできない。
『いいです。何もしないでこのままで・・・』
とわたしは放心状態で答えた。
夫は、
「ター君を連れてくるからね。
お義母さん、がんばって」
と声をかけて病室を出ていった。
看護師さんが、涙目でわたしに
「耳は最期まで聞こえているそう
ですから、声をかけ続けてください。
御嬢さんがいらしていることは、
お母様は分かっていらっしゃいます。
さきほど0時を回る頃まで
目を開いていらっしゃったんです。
それ以降はもう目を開ける力は
残っていないかもしれません。」
と言った。
”え?ママ、死んじゃうの?
嘘でしょ?
復活するんだよね。
ここから、もうひと頑張りしちゃうでしょ
ねぇ、ママ、そうでしょ?”
そう思いながら、
看護師さんの言葉を聞いていた。
『ママ、ママ、恭子だよ、
ママ、来たよ、いるよ、ここにいるよ。
ずっとそばにいるからね、
怖くないからね。
ひとりで逝かせないから。
ここにいるから。
ママ、聴こえてる?』
5:16
「息子さんがいらっしゃるまで
何時間かかりますか?」
と看護師さんに聞かれた。
『四時間くらいです』と答えたら、
「もうあと2時間も持たないです」
といわれた。
それでもまだ、
ママは復活するに違いない
と思っていた。
うちのママは何度もそう言われて
復活してるんです
っていう自信があった
処置室には
わたしとママの二人だけになった。
長いような短いような
不思議な時間が流れた。
ママ、死なないよね。
だって、終末期ってまだ先だって
言ってたじゃない?
持ち直すよね。
そう心の中で叫んでいた。
ママの呼吸は
荒くなったり、
無呼吸になってまた荒くなったりを
繰り返していた。
『ママ、息吸って、そう。
吐いて、ママ。そうそう。
うまくできてるから、だいじょうぶ。』
そう言いながら、
苦しそうなママに
ずっと呼吸をするように
促し続けた。
『ター君来るから、頑張ってママ。
息、お願い。』
ママの首の後ろに手を置いて
懇親のエネルギーを送りながら
ママの右手を握りしめた。
ママはもう
手を握り返す力はなかった。
わたしはママを
抱きかかえるようにして、
ママに呼吸を促した。
5:27AM
ママはわたしに応えて
大きく息を吸った
ママの目から
涙がスーッと落ちた
まぶたがぴくぴくして
目を開けようとしたけど
開けることはできなかった
『ママ、恭子だよ
ここにいるの分かるよね
ター君、もうすぐ来るからさ
まだ逝かないで、お願い。
ママ、つらい?痛い?
苦しいよね。
ごめんね、ママ、ごめん。
愛してるよ、大好きだよ。
だから、ママ、お願いだから
逝かないで』
ママは、ゆっくりと息を吐いた
『ママ、息吸って』と促すと
ママは、大きく口を開けて息を吸った
『ママ、その息を吐くんだよ』
と促すと静かに吐き出した
そして
身体がのけぞるくらい大きく
はぁぁぁぁぁ
と口から息を吸った。
そして、次の瞬間
パクっと音がして口を閉じた
『ママ、息吐いて、吐いて、ママ
ママ、吐かなくちゃ、その息、ママ!!』
叫ぶわたし
ピコン、ピコン、ピコン
隣のナースステーションで
心拍数のモニターが
けたたましく鳴り始めた
『ママ!、吐いて、吸わなくちゃ、息、ママ!
この音、ママじゃないよね。違う人だよね。
ママ!もう一回息を吸ってよ、
ママ、ほら、息吸って!!』
叫ぶわたしに、
看護師さんがゆっくりと近づいてきて
「心臓が止まりました」
と告げた。