俺に能力がない理由 03.旅の始まり | 牧野イツキ オフィシャルブログ

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(アロハ州モアナ航空)

『ヤムイ、行くぞ!』いよいよ俺たちはリリアに向かうことになった。サヤの最後の話が気になるが、ひとまず行って見ないとなんとも言えない。


リリアに行くのは俺とペテロニア中将の2人だ。リリアが同盟から抜けているので、何があっても俺たちは助けてもらえない。むしろ、それが狙いなのだろう。


俺は兄弟の中で唯一能力に目覚めなかった。親父の面汚しとも呼ばれていたくらいだ。そしてペテロニア中将は、クマイリ大将と並ぶ実力者として、クマイリ大将から忌み嫌われていた。まぁ、いなくなっても誰も困らない2人という訳だ。


ここアロハ州から10時間、フレンチ国のパリアン空港までいき、そこから電車で3時間かけヴェネタス州にあるボッテナという街についた。


『長過ぎて、ヘトヘト。』俺は長旅に疲れ切っていた。そんな俺をよそにペテロニア中将は先先に行く。『ペテロニアさん。待ってー。』と言うと、『おいてくぞ』のひと言でそのまま行ってしまった。


俺たちは街の外れにある古びた家が並ぶ道の先へ行った。『ここだな。』とペテロニア中将が足を止めて、ドアノブを叩く。『(トントン)すいません、ペンテコスタ様はいらっしゃいますか?』反応はない。数分後、ドアが開き老人が出てきた。


『何が用かね?』とぶっきらぼうに老人は言った。それに対しペテロニア中将は、『ここにペンテコスタ様がいらっしゃるとお聞きして来ました。』と言い、老人をじっと見ていた。暫く見つめあった後、老人は『ペンテコスタ?そんな奴は知らん。』とドアを閉めようとした。


ペテロニア中将は、すかさずドアに足を引っ掛け『知らないのなら、リリアに行く方法を教えて下さいますか。』と言う。老人とペテロニア中将はまた見つめあい、老人はドアの外に出て遠くを指さして『あそこにある山に登りなさい。リリアなんぞになんのようかは知らんが、あの山頂にいる老人が、リリアの生き方を知っている。』といった。


ペテロニア中将は『教えて下さりありがとうございます…ペンテコスタ王』と言った。老人は『あぁ、気をつけるんじゃよ。』と言い家の中へ入っていった。俺はペテロニア中将に小声で『今、ペンテコスタ王って言いませんでした?』と聞くと、フッと笑った。


ペテロニア中将は『今日は遅いからホテルに泊まろう』といい、ヴェネタス州の中心部のロマンまで戻った。ボッテナと違い、ここは活気あふれる街だった。


俺とペテロニア中将は暫くロマンの街を散策し、街の中でも高級感あふれるホテルに泊まることにした。『ヤムイ、私は少し寄るところがある。』と言ってホテルの部屋には行かずに出ていった。


俺も一度部屋に入り、暫くしてからまた街に出ていった。俺たちが着いたのが夕方で、チェックインしてホテルで少し休憩したくらいでそんなに経ってはないが、だいぶ辺りは暗くなっており、さっきまでの活気がどこへやらと無くなっていた。


『そこの兄さん。ちょっとうちの店に来ない?』と綺麗なお姉さんやおっさん達数人が次々と声をかけてくる。無視して歩いていくと、ある店に着いた。


(ぼったくりカフェ・ペンタゴン)

なんだか気を引かれてるカフェだと思って入ってみた。(カランコロン)中は薄暗く、テーブルは2席、奥にカウンターがあった。右のテーブル席には小さい子供と母親みたいな人の2人。左のテーブルには、銀髪の女と坊主頭の男がいた。カウンターに行くとマスターがいて、カウンター端っこに若い男とマントを深々と被った老人がいた。


『いらっしゃい。あんた旅人ない?』とマスターが声をかけてきた。『あぁ、ちょっと用事があって近くまで来たんだ。』といって、カウンターの真ん中に座った。『そうか、ならびっくりしただろう。昼と夜の活気の違いに。』とマスターは言いながら、やってきた、『そうなんだよ。お腹すいて出てきたのにどこも閉まってて、変な店ばっかりだったんだ。』というと、『あははは、変な店の中で最も変な店を選んだのね。』と後ろから女が声をかけてきた。


『おいおい、お客様になんて事を言うんだ。ここは普通のカフェだ。兄さん、なんか飯を作ってあげよう。待ってな。』と言い、マスターは何かを作り出した。女は俺の隣に座り、『マスター、うちはいつもので、あとこの兄さんはぼったくらんといてな。』といった。


マスターは『へいへい』と言って、俺とその女に飲み物を出した。『兄さん、これは歓迎の酒だ。遠慮せず飲みな。お金はこの女から取るから大丈夫だ。』『ちょっとーなんでよ!』と笑いながら女はグラスをもった。『まぁいいわ、飲みな。』と言われ、俺もその飲み物を一緒に飲んだ。『うまい!これ、凄い美味しいですよ?』というと、女は『でしょー!』と言いながら、女は一気に飲み干した。『飲みやすいけど、これでもお酒なのよ。』と言いながらまたおかわりしてた。


『ほんで、兄さん!こんな街に何しにきたん?さっき近くに用がある言うてたけど、こんな街にからなてよぼどの物好きか何も知らん人やで。』と女は言い、俺を覗き込んだ。『え、イタリナと言えば大都市でしょ。同盟都市の中でも7大支配者の1人、ゼムノン皇帝がいるし。』というと、何故か変な視線を周りから感じた。


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【登場人物]

・主人公 

 ヤムイ

 

・主人公の家族

 父・ノアル 7大支配者の1人

 兄・ハムイ ノアルの能力を受け継ぐ者

 姉・セムナ 絶世の美女

 弟・アベデン ヤムイが大好きな少年

 

・ノアル率いる国軍

 クマイリ 大将

ペテロニア 中将

 

・世界図書館

 サヤ ヤムイの同級生

 サヤの祖父 図書館の館長


・イタリナ国ヴェネタス州ボッテナの住人

 老人


・イタリナ国ヴェネタス州ロマンの住人
 マスター ぼったくりカフェの店主