【読書日記】『模倣の経営学−偉大なる会社はマネから生まれる』(井上達彦) | 「そば屋さのあんちゃん、息災け?」

「そば屋さのあんちゃん、息災け?」

稀有な病気をはじめ、人のあまり経験しないことを経験しました。
そんなことを織り込みながら、日ごろの読書を中心に綴っていければと思います。

『模倣の経営学−偉大なる会社はマネから生まれる』(井上達彦)。

 

「イノベーションはマネから生まれる」。

 

12年前にFacebookに投稿した記事に加筆修正の上、ブログに移植したもの。

 

著者の井上氏は、本書の意図するところをこう言っています。

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これまでは、創造性を指摘するにとどまっていた。

本書では、創造性が生まれるロジックまで立ち入り禁止、模倣からイノベーションを起こすための作法と心得について深く考えていく。

 

(P7)

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また、井上氏は本書で提示したかったことを、このように述べています。

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仕組みの模倣が伴わなければ、本当の意味での差がつかない。

 

(P40)

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本書は「仕組み」にフォーカスしています。

「学ぶ」の語源は「真似ぶ」から来ていることは、ここで改めて説明はいらないかもしれませんね。

その深い理解は、徹底的な模倣によって実現するともいいます。

偉大な経営者も、こう言っています。

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○「私がやったことの大半は、他人の模倣である」

<サム・ウォルトン(ウォルマート創業者)>

 

 (P2)

 

○「見せかけの模倣はダメだ。

やるなら徹底的に根本から始める。」

<福原有信(資生堂創業者)>

 

(P6〜7)

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この他にも、ドトール創業者の鳥羽博道氏も「模倣」の有用性に触れています(P111など)。

「摸倣」の成功例はたくさんありますが、ここではトヨタとKUMONを事例として紹介します。

 

<トヨタ>

大野耐一氏は、スーパーマーケットという異業種から倣い、あの生産システム「ジャスト・イン・タイム」を作り上げました。

まさに逆転の発想であり、イノベーションと言ってもいいかもしれません。

 

<KUMON>

第2、第3のKUMONができない、換言すれば、模倣出来そうで出来ない例として取り上げます。

出発点は「模倣」というと意外に感じる方もいらっしゃるかもしれません。

これは創業者である公文公氏の土佐中学での生徒そして教師としての経験から来ています。

土佐中学では、できる生徒に対して、基本だけ教え、以降は「自学自習」の方法をとっていたそうです。

母校へ赴任した公文氏は、自学自習の個人別指導にまで発展させました。

それは次の言葉に如実に表れています。

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「世間のほとんどの教育は一斉授業ですが、一斉授業で教え込まれたり、強制されたりしたのでは自分の力で進む経験を持つことが出来ません。」

 

(P183)

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まさに、「模倣」ですね。

本書には様々なキーワードやモデリングが出てきます。

出来るだけ簡潔にリスト形式であげておきます。

 

<正転模倣と反転模倣>

○正転模倣…遠い世界からそのままモデリングする

○反転模倣…近い世界から反転させてモデリングする

 

<P−VARフレームワーク>

「4つの要素」

・POSITION

・VALUE

・ACTIVITY

・RESOURCE

 

「5つのステップ」

1、自社の現状を分析する。

2、参照モデルを選ぶ

3、あるべき姿の青写真を描く

4、現状とのギャップを逆算する

5、変革を実行する。

 

(参照)

P67、図3−1 P−VARフレームワーク

P69、図3−2 参照モデルを活用した事業変革の5ステップ

本書で取り上げられた企業の一部、ヤマト運輸、スターバックス、ドトール、公文教育研究会などのP−VAR分析は有益であると思います。

 

<モデリングの4パターン>

『切り口』

〇「模範教師か反面教師か」

〇「社外か社内か」

これをまとめたのが、

P118、表5−1 モデリングの基本4類型。

その他、以下のものも参考になります。

P154、図6−1 複眼モデリング

P163、図6−2 模範OR反面教師からの守破離モデリング

「模倣」の作法として、

1、目的は何か

2、何を模倣するのか

3、いつ、どこの誰からどのように、

というものがあります。

 

それをまとめたのが、

P201、図9−1 模倣の目的に合わせたモデリング戦略。

2つの目的をあげています。

1、競争への対応のための模倣

2、イノベーションのための模倣

ずいぶんと長くなりました。

そろそろまとめにはいります。

著者の井上氏の苦言?を取り上げ、まとめとします。

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本気になればいくらでも手段はある。

良い経営者から倣うということをもっと突き詰めるべき。

 

(P222〜223)

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まさにサブタイトルにあるように、

「偉大なる会社はマネから生まれる」

を実感した一冊でした。

 

(2016・6・16読了)