【読書日記】『チャーチル−不屈のリーダーシップ−』(ポール・ジョンソン) | 「そば屋さのあんちゃん、息災け?」

「そば屋さのあんちゃん、息災け?」

稀有な病気をはじめ、人のあまり経験しないことを経験しました。
そんなことを織り込みながら、日ごろの読書を中心に綴っていければと思います。

『チャーチル−不屈のリーダーシップ−』(ポール・ジョンソン)。

 

「チャーチルが示す「有事のリーダーシップ」」。

 

11年前にFacebookに投稿した記事を加筆修正の上、ブログに移植するものです。

 

ここでいうチャーチルとは、第二次世界大戦中、イギリスの戦時内閣の首相を務め、勝利に導いたウィンストン・チャーチルのことを指す。

ここでは主に、野中郁次郎氏の解説に依拠し、著者であるポール・ジョンソン氏の記述を補足的に利用し、本書をご紹介したい。

ポール・ジョンソン氏は、チャーチルのリーダーシップのあり方を示すフレームとしてアリストテレスが提唱した「フロネシス」を用いている。

「フロネシス」は次のように定義される。

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「共通善の価値基準を持ち、個別具体の文脈(コンテクスト)や関係性のなかで、その都度、適時に、最適最善な判断をくだし、実践することのできる実践知」

 

(P275)

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実現すべき価値や達成すべき目的としての「ノウ・ホワット(KNOW WHAT)」を察知する力と言い換えれる(P277)。

ポール・ジョンソン氏はチャーチルに学ぶべき点として、その生涯から5つの教訓をあげている。

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1、つねに高い目標を掲げた。

2、勤勉に勝るものはない。

3、個人としても国家としても失敗や災難、事故、病気、不人気、批判に遭ったとき、打ちのめされたままでは終わらなかった。

4、人として卑しい行為に時間や労力を無駄にすることがほとんどなかった。

5、憎しみをもたなかったことで、生涯を通して大きな喜びを手にした。

 

(P254〜260)

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野中郁次郎氏は、チャーチルのリーダーシップの本質として以下の点を指摘している。

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1、理想を追求し、善悪の判断基準をもって、「善い」目的を明確に示した。

2、場をタイムリーにつくる能力があった。

 

(P282〜299)

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こうした点を考慮すると、チャーチルは優れた実践知を持つフロネティック・リーダー(実践知のリーダー)ということができる。

こうした能力を、チャーチルの個人秘書のコルビルはこう語っている。

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「チャーチルの知的な才能のなかでとりわけ重要なのは、本質をつかみ、本質に集中できる点だ」

 

(P291)

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だからこそ、チャーチル以外ではイギリスを救えなかったと、ポール・ジョンソン氏は結論づけている。

野中郁次郎氏は解説の中で、混迷を深める現代に求められるリーダーシップのあり方を、フロネシスの「6つの能力」をあげている。

それをご紹介し、まとめにかえたい。

自分の周りにいるリーダーに当てはめて、考えてみると面白いかもしれない。

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1、善悪の判断基準を持ち、「善い」目的をつくる能力

2、「場」をタイムリーにつくる能力

3、ありのままの現実を直視する能力

4、直観した本質を概念化する能力

5、あらゆる手段を駆使し概念を実現する政治力

6、実践知を組織化する能力

 

(P278〜279)

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巻末の略年表は、本評伝を読み進めていくのに有益と感じる。

また、余裕があれば、アリストテレスの『ニコマコス倫理学』を読んでおくと、本書で種々用いられている用語も理解しやすいかもしれない(私も含めて)。

 

(2013・6・8読了)