『巨匠とマルガリータ』 ミハイル・ブルガーコフ
『巨匠とマルガリータ』著者 ミハイル・ブルガーコフ翻訳 水野忠夫出版 河出書房新社ブルガーコフが生前は小説家として日の目を見ずに亡くなったらしい。この小説も発禁となり、何年も後になってから評価されたとのこと。私自身は読んでもどこが不謹慎なのか分からなかった。例えば『オン・ザ・ロード』に比べてみても、ずっとこちらの方が不快感は少ない。しかし、出てくる人物が次から次へと悪魔の手先によって酷い目に遭うのは、やはり気の毒だった。中盤まではずっとそんな感じで進むが、ページが半ばまで読み進むといよいよ巨匠とマルガリータが登場する。そこまでは一体どういう小説なのかまったく予想がつかなった。巨匠は作家を目指している青年で、マルガリータは既婚の婦人。二人はある日出会ったその日に恋に落ち、不倫関係を続ける。巨匠はマルガリータの励ましと支えがありある小説を完成させるが、批評家からは手厳しい評価を与えられる。失意の巨匠、そんな彼の姿を傍らでみていて嘆き悲しむマルガリータ。この二人に4人の悪魔チームが絡むことに・・・。この悪魔チームのやることは確かに酷い。災難に遭う人々には同情しまくりだった。でも、悪魔が出てくるというからホラー映画のようなグロテスクな描写があるのかと思えばそうでもない。たちの悪いいたずら程度・・・、と言ってはちょっと大目に見すぎだろうか。手品の場面で首をちょんぎられるわ(後から元に戻るがやられた側は発狂寸前)、外貨を持っていると通報されるわ・・・。おっと、でも冒頭では悪魔の幻覚?妄想?のせいで電車に飛び込み人が死んでもいる。しかしそういう悪魔達も実は元は人間だったらしく、失意のうちに死を迎え悪魔に転生したようだ。そういう悪魔達が結果的に巨匠とマルガリータを救うことになる。これは訳者によるあとがきの受け売りだが、自分の作品をまともに取り合ってくれない、評価されないブルガーコフの世の中への恨み節でもある、確かに言われてみればそう捉えることもできる。でも、そういう背景は抜きにしても、摩訶不思議が入り混じる世界観の中で語られる物語はとても好きなのでとても楽しめた。巨匠とマルガリータ (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-5)Amazon(アマゾン)2,172〜13,669円巨匠とマルガリータ (上) (岩波文庫)Amazon(アマゾン)1,177円巨匠とマルガリータ (下) (岩波文庫)Amazon(アマゾン)1,034円