びゅう…

シャノンは羽ばたいた。シャノンは宙を舞った。
「おお、シャノン!」

「やった!ちゃんと飛べた!」

シャノンは空中からメイプルに手を伸ばした。

「さぁ、捕まって!」

メイプルはシャノンの手を掴んだ…が。

「空を飛ぶなんて予想外だったけど、一人は飛べないことを考慮するとそこまで脅威ではない。」

シャノンはメイプルの手を掴めない。いや、掴むが、滑って上手くメイプルを持ち上げられない!

「あたしの『不安のメンタルパーツ』は摩擦を消す。全てがツルツルと滑ってしまう。」

なるほど、先ほど転んだのは地面を滑るように変えたんだ。
シャノンは起き上がり、声のした方を見た。そこには女性の姿があった。ジーンズにジャケット、スニーカーという格好はどちらかといえば男性的に写るが、それを補って綺麗な肌と、腰ほどの長さがある髪の毛が女性であることを主張している。

「女だからって緊張を緩める理由にはならない」

シャノンは少し緩めた緊張の糸を再び引き締めた。

「シャノン、これはいよいよマズい。」

「まだだよメイプル!」
そう言うと、シャノンは背中から翼を出した。
シャノンとメイプルは走っていた。ブラックハーツについての評判は聞いていたので、何をされるか分からない。

「シャノン!まだ走れるか!?」

「うん、頑張る!」

そして二人は孤児院を出て野原を走った。

「子供の浅知恵だな」

声がした。

「走って逃げりゃなんとかなるなんて、それは敵が一人の場合にしか通用しないだろう」

声は右からした。

「かつ、孤児院の外は隠れ場所もなく、逃げるには不適当。さて、そろそろ走るのを止めるよ」

その声が終わった瞬間、二人は何かに足を滑らせ、走った勢いのまま、派手に転んだ。