今読んでいる半藤一利著『山本五十六』が面白い。
作者は独自の分析により、太平洋戦争にまつわる歴史のターニングポイントの原因を、その背景に見いだしている。歴史は必然なり、とはよく云ったもの。
同戦争での大きな分岐点となったミッドウェイ海戦についての裏舞台が印象的だったので紹介したい。
アメリカ軍が日本軍の作戦を事前に分析し、待ち構えていたことが勝因であると云われている。その裏舞について、著者は断片的な情報から一つの仮説を紹介している。
アメリカ軍は海戦のしばらく前に沈没させた日本軍の潜水艦をわざわざ海底45メートルから引き上げ、艦内残された暗号に関わる文書を入手し、解析。その成果を活かし、日本軍の暗号を解析し、日本軍が”AF”を狙っていることを推定するも、肝心のAFがどこをさすのか分からない。
アメリカ軍の司令官は断片的な情報からAF=ミッドウェイの仮説を立てる。しかし確証が欲しいと思った司令官は、わざと偽りの情報を流してみる。それは「ミッドウェイでは真水が不足している。」という電文。これをキャッチした日本軍は即座に暗号文を打電する。「AFは真水が不足しており、好機なり。」と。日本軍はまんまと撒き餌にかかったというわけだ。
これはあくまで著者の一説であり、真実ではないかもしれない。しかしあまりにお粗末な日本軍…
さらに興味深いのは、この海戦時日本軍はアメリカ軍よりも戦力的に上回っており、当初の作戦さえ巧く進めば勝ちも決して不可能ではなかったということ。
しかし、連戦連勝に起因する驕り、都合の良い思い込みを集団で共有したこと(集団睡眠と著者は書いている)、情報戦軽視が虎の子の空母4隻を失うと云う歴史的大敗へと繋がったと書いてある。
孫子の名言「彼を知り、己を知れば…」の大切さを著者は述べているが、歴史はその名言を実行する事の困難さの証左であると思わずにはおれない。
山本五十六 (平凡社ライブラリー739)/半藤 一利

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