メーカー発想からプラットフォーム戦略発想へ | 平野敦士カールオフィシャルブログ「プラットフォーム戦略®経営講座★」Powered by Ameba

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(株)ネットストラテジー代表取締役アマゾン1位 プラットフォーム戦略他著書多数元興銀マンゆかし会員 

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ひさしぶりにCNETにアルファブロガーとして書きましたのでこちらにも

http://japan.cnet.com/blog/hirano/2010/05/08/entry_27039738/

ギリシャ経済問題から世界経済が混迷していますが最近日本破綻リスクもいろいろなところで議論されています 
以前興銀時代にカントリーリスクを担当していた時期もあったので南米やアジア危機もリアルタイムで体感しました
韓国はIMF指導から10年で立ち直りました

重要なのは、破綻するかどうかを議論するだけでなく、破綻しないためにはどうするか?我々一人ひとりはどう行動するべきなのか?という視点で考えていく必要があると思います

これからは、IT 経営 ロジカルシンキング 語学をしっかりと理解した人材、はじめからグローバルの視点で考えられる人材の育成が急務でしょう

そんな想いから この4月から大前研一氏主催のビジネス・ブレークスルー大学(BBT大学)の教授(専任)に就任させていただきました
http://bbt.ac/ja/academics/global/teacher/144-strategy.html

同大学は文部科学省認可の初のオンライン大学でこの4月に開校した全く新しい大学です 授業はすべてエア・キャンパスと呼ばれるオンラインで行われます

勇気ある(笑)第一期新入生230名のうち半数近くは大卒、大学院卒で医者などのプロフェッショナルもたくさんいらっしゃいます
非常にやる気があり教授陣も気を引き締めて一緒に学んで行こうと考えています

BBT大学院の方でも講師として3月よりプラットフォーム戦略について講義を開始しました
メルマガ購読者の方限定で 期間限定の無料視聴も可能にしていただきましたのでぜひご覧下さい プラットフォームの横暴が5月OnAirの第三回目のテーマです
http://bb.bbt757.com/ser_03/2086.html        メルマガは↓です
http://archive.mag2.com/0000255553/index.html


また4月には、大前研一氏の経営者向けの勉強会である向研会でも東京大坂福岡の三箇所で講師をさせていただきました
http://www.bbt757.com/kokenkai/index.html
学生時代から憧れていた大前研一先生が隣に座っているという現実に緊張しましたが非常に勉強になりました

その際にお話した内容でもありまた近々出版予定の本にも書いた内容を少し披露させていただきたいと思います
それは日本の企業に必要なのは メーカー発想からの脱却であり、プラットフォーム戦略思考ではないかということです

リーマンショック後多くの新興国が急速な立ち直りを見せている中で日本は次第に世界に取り残されつつあります。

なぜでしょうか。

政治のリーダーシップ不足、少子化高齢化社会など複合的な要因があるものの日本企業の直面している構造的な問題点があると思います。

戦前戦後と日本経済は繊維産業から次第に鉄鋼、クルマなどの重厚長大産業の育成を行い輸出大国として世界第二位の経済大国にまで上りつめました。そこにはモノ作りにおける日本人の勤勉さと技術力の高さがあったからでしょう。
しかし日本の技術集約型の経済は、国際的競争力を持つソフトウェア産業を生み出すことができず、すでにハイテク産業においても日本企業の競争力が急激に低下しています。
ひとつには、韓国、台湾、中国の低コストメーカーの参入による競争の激化、さらに韓国などはすでに技術的にも日本の存在を脅かすレベルに達していることでしょう。
もう一つの理由は、ITの進化による日本の得意分野であった高付加価値な製品のもつ重要度にも変化が起きていることでしょう。
ブロードバンドの普及、通信コストやサーバーコストなどのインフラコストの劇的な低下によって、例えば、パソコン、テレビ、携帯端末などに映画一本まるごとダウンロードも可能になってきました。
こうした変化によって、例えばテレビ、パソコン、携帯電話、DVDなどの個別の製品の持つ価値よりも、そこで見たり聴いたりする映像や曲などのコンテンツのもつ価値の重要性が増しているのです。
例えばオリンピックの試合を見たいときは、テレビ、パソコン、携帯電話のワンセグ放送や動画サイトなど製品デバイスにかかわらずオリンピックの試合というコンテンツそのものをなるべく早く、あるいはじっくりと何度も見たいと思うでしょう。各種デジタル・コンテンツ、アプリケーションのサポート機能や他の製品と共有するためのプラットフォーム的機能こそが製品のもつ価値を大きく左右するようになってきたのです。
こうした状況に対応するためには、個別の製品の性能を高めるだけではユーザーの支持を得られなくなってきているのです。

製品のハードとしての性能だけでなく、常に新しいコンテンツを提供できるようなネットワーク型の製品デバイスの重要性を増しています。そうしたコンテンツ、ソフトウェア、著作権管理をするミドルウェア、製品デバイスが一体となって構築するプラットフォームになってはじめて価値が増すことになってきています。

しかし日本は、ハイテク産業メーカーとしては世界的なレベルの企業が数多く存在するにもかかわらずプラットフォームビジネスにおいて世界レベルで成功した例は、任天堂のWii、ソニーの「プレイステーション」という家庭用ゲーム機の分野ぐらいしかありません。
日本独自の企業系列のしがらみの中で「モノづくりこそが主役」であり、ソフトウェア開発は「下請け事業」、「受託事業」だという日本の家電メーカーが築いてきた垂直的なピラミッド状の企業組織体制の限界があると思います。
筆者は「目に見える」モノ作りの大切さ、にいささかの疑いをも持っていません。しかし、すでにお話したようなデジタルコンバージェンスの大革命やエコロジーの意識の高まりの中で、日本の強みとされていたエレクトロニクス産業や自動車産業といった産業においても確実にハードウェアからソフトウェアへの価値のシフト、メーカー発想からプラットフォーム戦略思考へと発想の転換が必要とされているのだと考えています。
優れたハードウェアを核に、競争力のあるプラットフォームを構築することが家電メーカーにとっていかに難しいかを示すのが、ソニーの例でしょう。
(中略)
ソニーは「ウォークマン」や、その他多くの音楽再生用機器を発明し、デジタルコンテンツの量(コロンビア・ピクチャーズ、CBSレコードのほか、MGMを買収)では群を抜いていましたがアップルの後塵を拝してしまいました。

アップルが音楽ダウンロードサービスを開始したのは2003年4月ですが当時の音楽レーベルの共通の悩みは、インターネット上での海賊版、著作権侵害にいかに対処するかでした。

そこでアップルは自社が開発したクイックタイムというパソコン上での動画や音声を著作権を守りながら行うソフトウェアを中心とした音楽配信サービスiTunesと持ち歩きができるハードドライブ(HDD)であるIpodという端末を市場投入したのです。レーベル各社は著作権侵害を回避するための方法としてこのサービスに飛びつきました。
アップルの音楽配信におけるプラットフォーム戦略は、まさしくソニーのプレイステーションでのプラットフォーム戦略を踏襲していました。にもかかわらず、ソニーはその成功から学ぶことができませんでした。
ひとつにはデジタル権利の管理や海賊版の問題をめぐって、ソニー・ミュージックと社内のエレクトロニクス部門との間で内紛が生じたことで、ソニーのデジタル・テクノロジー開発は逆に妨げられる結果になったのかもしれません。
おそらく技術的能力の問題ではなく「プラットフォーム戦略思考」が欠けているからであり、そのために競争力を備えたソフトウェア・メーカーとなることができないのではないかと思います。メーカー発想からの脱却が必要ではないかと思います。

さらにアップルの強さのひとつに優れたデザインやユーザーインターフェースなどの「右脳的な力」の素晴らしさもあげられるでしょう。機能ばかり詰め込んでもそれほど違いがでないようになってきている中で、モノづくりにも、こうした「右脳的な力」も重要な要素になってきていると考えられます。

このあたりは 講談社発行の「セオリー 会員制の秘密」でもお話しましたが
ネットにも出ましたのでぜひご覧下さい
【経済の死角】
楽天、DeNA、一休が勝ち残った「5つの秘密」  

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/520


(中略)

ソフトウェアの重要性、コンテンツ・ソフトウェア・ハードウェアが一体となったプラットフォーム戦略の重要性が明らかになっているにもかかわらず目に見えるハードウェア重視の日本企業の経営戦略では、近い将来、複数のデバイスに対応できるソフトウェア・プラットフォームを提供する外国企業に日本の市場が一気に市場を奪われる危険性があるでしょう。

かつて「国民機」といわれ日本のパソコンの市場を独占していたNECの98シリーズがウィンテル連合軍に駆逐されてしまったのと同様のことが起る可能性があるのです。

(中略)
今後PC ケータイにおいても、OSのオープン化、世界標準化が今後進めば、メーカーさらにはコンテンツ提供者も競争は世界レベルになっていくことになります。

すでにミクシィで一番人気のアプリケーションは中国企業のゲームです。
日本語という参入障壁はあるものの世界中を相手に戦う必要に迫られています。
これからは、「はじめからグローバル市場を視野にいれた」ビジネスを展開することが何もよりも重要でしょう。

筆者は、日本企業に技術的能力が足りないのではなく、「プラットフォーム思考」が欠けているために世界的に競争力のあるソフトウェア企業が育たないのだと考えています。

パソコン、インターネット、iPodなどの音楽を聴くための端末、携帯電話、電子機器、自動車、炊飯器など多くのデバイスの中には見えないエンジンであるソフトウェアがその司令塔として存在しています。

それらの産業育成をするためには、知的財産権の保障のための法的整備、真の意味でのベンチャーキャピタリスト・ベンチャーキャピタルの育成、雇用の流動化の促進、敗者復活の社会的許容、大企業優位の産業構造の転換のための独占禁止法ならびに類似の産業競争環境の整備、そして何よりも技術者・経営者の育成といったことが必要ではないでしょうか?
(中略)
今後は日本でもこうした人材の育成、とりわけ産業界ではIT、経営双方に精通した語学も堪能な国際的な人材の育成が重要になってくるでしょう。

(中略)
プラットフォーム化していく産業構造の中で必要とされているのは、企業の枠を超えてプロジェクトを推進していけるエバンジェリストすなわちアライアンスを様々な企業や部門と行える人材です。

かれらが多様な顧客のニーズとその変化を捉えて、それをプラットフォームにフィードバックしつねにプラットフォームを進化させていく必要があるのです。
そのフィードバックをいかにトップマネージメントが正しく認識し、全社的に正当化し支援するかが明暗を分けていくでしょう。

では日本の未来は暗いのでしょうか。いいえ筆者はそう思っていません。

幸いにも多くの成功しているプラットフォームは、かならずしも最初に実行したいわゆる「ファーストムーバー」ではありません。

今後ハードからソフト、さらにはコンテンツ、アプリケーションへと世界の主戦場は上位レイヤーに移っていく可能性が高いでしょう。そうした中でコンテンツ産業、企業向けコンピュータ関連市場は日本企業にとっても有望な市場だと考えています。いかに日本企業が真のグローバル企業になれるかが急務だと思います。

常に栄枯盛衰の世界であり、先駆者の成功例・失敗例を学ぶことで、今からでも日本から世界へ飛翔する事業が生まれる可能性は十分あるのではないかと期待しています。

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