彼氏というものには興味があった。
けれど、恋愛に夢を抱き過ぎていたせいか、理想がいつのまにか高くなりすぎて、
恋愛出来るような人に出逢えなかった。
長嶺くんは、入学する前から有名だった。
入試テストの時から、噂になるほどルックスが良かったからだ。
同じ大学に進学が決まったクラスの友人達が噂をしていて、
私の期待は膨らんだ。
どんなに格好いい人なんだろう、って。
そして入学し、長嶺くんを見つけた時、
ああ、この人だ、って。
思ったの。
長嶺くんは、いつもバイトにばかり行っていて、しかもそのバイト先、っていうのが洋服屋さんだっていう。
まわりが女だらけじゃん!
結構な数の女の子が皆、そう思ってた。
でも、彼女が出来た、っていう噂もあまり聞かない。
……どうしてなんだろう。
そう考えていて、私は1つの結論にたどり着いた。
そっか!
彼って、もしかして男子同士じゃないと、ってやつ?
そう言えば、いつも男の子とばかりいるなー。
そっか、じゃあ仕方ないな。
私もやっと恋が出来ると思ったんだけど、そういう理由じゃ、仕方ない。
長嶺くん、いいセンいってたんだけどなー。
諦めた途端、
下心がなくなったせいか、長嶺くんと話すキッカケがあってから、
トントン拍子で私達は、彼氏と彼女になった。
友人期間が長かったせいか、お互いがお互いを尊重しあえるパートナーだったと思う。
──和久君と、親密になるまでは。
私の人生には、功一しかいないはずだったのに
功一とは、別にうまくいってなかった訳じゃない。
ただ、マンネリ化はしていた。
でも、そんなことをわざわざ意識したこともなかった。
パパが働かずに早く結婚をしろと急かしてくるから、何度か功一に話してはみたけど乗り気じゃなさそうだし。
──私も結婚に関しては漠然としていたから、
正直急いでもいなかった。
だっていずれは、功一と結婚すると思ってたから。
慌てる必要がなかったんだよね。
──それが普通だった。
「暇ならさ、働かない?」
そう声をかけてくれたのは、功一の友人の和久君の奥さん。
彼女──佳奈ちゃんは、功一を通して出来た友達。
そもそも、和久君は大学の頃からの友達で、功一の家に遊びに行くと、私よりも頻繁に功一の部屋に入り浸っていた。
「えっ、いーの?」
「夏美ちゃんなら、歓迎じゃない?」
どうやら和久君の補佐をしていた事務の子が辞めてしまって、
子育て中の佳奈ちゃんは、帰りの遅い和久君に早く帰って一緒に子育て手伝って欲しかったからなんだけど。
ずっと一緒にいると、
1日1日、和久君の良いところばかりが目につきはじめて。
佳奈ちゃんの話をする和久君の笑顔だとか、
ちょっと弱ってる時の我慢してる顔とか、
仕事がうまくいった時のしてやったり顔だとか
全てが、特別に見えて、──いつのまにか、
私の中で、
「最近さ、子供が出来てからサッパリでさ──」
仕事終わりに二人で立ち寄ったバルで
何気ない会話だった
「じゃあ、捌け口になってあげよっか」
気づいてなかった。
──和久君に、惹かれていたことに。
気がついた時には、
自分は和久くんの親友の彼女で、
和久君は、既婚者で妻子持ちだった。
奥さんだって、今や私の──友人なのに。
「いーの?」
「ね、試してみて駄目だったら、笑っちゃうよね」
ふざけたふりして、肌を重ね合わせたら。
思っていた以上に、──私はこの恋の蜜にハマってしまった。