そのくせこの期に及んでまで、俺は「たぶん」だなんて言葉を誤魔化した。
「ああ、違う。ホントはあの時から、田村のこと忘れた事なんかなかった」
かっこ悪い。
でも、それは事実で、俺にトラウマを植え付けた最初の女は田村なわけだし、
それでも忘れられなくて、
諦めきれなかった。
「また、俺の彼女になって」
「もうっ、……」
そう言って俺の胸に飛び込んできた田村が、「ダメかと思ってました」と、掠れた声を響かせた。
「俺も」
何もかも、取り返しのつかない事になる前に
田村の心を手に入れられて、
良かった。
街灯の下で、恥ずかしげもなく抱き合って唇を重ねる。
幸い、人通りが少なく
抱きしめた腕が、離れない。
「……ぱい、先輩」
ひととき、離れた隙に田村が声を出した。
その唇をまた塞いで、田村の口を封じる。
この甘ったるい唇を離したくなくて。