APPENDIX B
巻末資料 B (その4)
ウィルコックス内閣を退陣させるには駆け引きが必要でしたが、自由党(国民自由党)は首尾よくそれをやりました。
内閣の中でも黒幕として働く人たちは能天気にも自分たちの成功を信じ込み、内閣は安心しきっていました。
けれど、腐敗と汚職が行われている政府が安定するはずがないことは、この件でも証明されています。
ウィルコックス内閣が退陣する少し前、カミンズ、ブッシュ、R・W・ウィルコックス、アシュフォードたちは、自分たちが内閣に入れる期待は絶対に叶わないとわかると袂を分ち、再び自由党に加勢することになりました。
さらに一部国民の協力もあって彼らは首尾よく成功したのです。
この人たちは以前はサーストンのグループに騙されてしまったので、今度は革新勢力を助けようとまとまりました。
ホワイト氏は憲法制定会議を規定する法案を提唱した人物で、アヘンや宝くじの法案も発案しました。
好機を逃さずアヘンと宝くじの法案を議会を強行採決で通過させましたが、憲法制定議会の方は失敗しました。
その後不信任決議案が提出されました。
自由党が勝利し内閣は退陣となりましたが、原因の一つは内閣が自らの成功を過信していたこと、そして彼らの腐敗した行状のせいでもありました。
翌日パーカー、コーンウェル、ピーターソン各氏がそれぞれ指名されました。
この紳士たちは国会で大多数から支持され、彼らの登場の際には大きな拍手を送りました。彼らは資本家たちの支援を受けていなかったので議員とはみなされていなかったけれども自由な考え方を持っていたからです。
彼らは指名されたその同じ日、私にアヘンと宝くじの法案に署名するよう助言しました。
最初私は拒否しました。
女性の友人たちに喜んで欲しかったからです。
けれど、議会は賛成多数でそれら法案を承認し、議長と委員会が署名してしまったのだから、私の方がグズグズしている場合ではないと言われました。
それは1893年1月13日の出来事でした。
(ブログ主;注 このことについては第39章に詳しく書かれています。)
1892年の11月、ある内密の覚書が私に送られてきました。
「アメリカ大使のJ・L・スティーブンス氏は、我が国民の一部と結託して、併合計画を遂行するつもりである、そして内閣もその事実を承知している」と知らせるものでした。
でも私はその時はそのことをほとんど気に留めませんでした。
1892年の12月17日、もう一通のメモが届けられました。
以下の文章がその写しです。
「リリウオカラニ女王陛下
陛下にお喜びいただけますことを。
謹啓、
数週間前私が失礼も顧みずに陛下にお伝えした機密情報、ハワイ駐在アメリカ代表の態度と発言に関して、完全に正確であることが以下の情報によって裏付けられており、謹んでここにお知らせいたします。
同じ信頼に足る情報元がつい最近も思いがけずぽろっと私に漏らしたのですが、あるアメリカ政府高官が併合工作を早急に推し進めるよう指示したことを示唆したと、そしてその併合工作は現在の内閣の助けと後押しもあって間違いなく近々遂行されるはずだというのです。
もし陛下がこの話を、併合党の代弁者として鳴らすセレノ・ビショップ師が現在ブレテン紙で盛んに展開している厚かましいほどあからさまな発言や組織的な併合作戦と照らし合わせてよくよくお考えいただけるなら、陛下ご自身で結論を導き出されるでしょうし、危険が迫っているだけでなく、敵はお家の中にいること、そして現在の内角の面々に厳重な上にも厳重に警戒をされるべきであると実感されると思います。
このこともまた最高機密情報として
陛下の卑しくも忠実なしもべより。」
これは、心の底からハワイのためを一番に思っている人物として私が絶大な信頼を寄せる紳士によって書かれたものでした。
このメモを受け取るとすぐに私は、英国公使のジェイムズ・H・ウォードハウスを呼びよせこの件について助言を求めました。
各国の外交代表たちを皆招くのは賢いやり方と思うか、彼の意見を尋ねました。
政治状況をめぐり動揺が広がるかもしれないと心配したからです。
彼は、ハワイの国内問題に自分は干渉すべきではない、と言いました。
そしてそんなことをしたら実際に危険があると認めるようなものだから、と言って私にその考えを思いとどまらせ、そして尋ねました。
「何か危険があると思ったのですか?」
私は答えました。
「あるかもしれません。」
〜〜〜(その5)に続く〜〜〜
イギリス公使 James Hay Wodehouse (1823-1911)
ハワイ赴任歴が長く、本書でも何度か登場しています。
英国人らしくハワイ王室に対して敬意も強く持っていたようです。
アメリカの併合に強く反対し、共和国政府から嫌われていたとも。
彼の息子は、カイウラニ王女の異母姉妹アニー・クレグホーンと結婚。
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