『いらっしゃいませーどうぞご覧くださいませー。』
・・・暇だ。
国内でも片手に入るほどの面積を持つ、巨大ショッピングモールでも、平日は近くに住む主婦さんが買い物に来たり、年配の方の散歩コースでしかない。
そのモール内にある、レディースファッションショップで働いている私。
今年で24歳。彼氏いない歴4年。
ショップ店員というと、可愛い服に囲まれながら仕事が出来て、プライベートではかっこいい彼氏がいる綺麗なお姉さん。なんかを想像するかもしれない。
実際はそんなんじゃない。
納品された商品が入ってるパッキン(ダンボール)を持ち上げるから腕の筋肉はハンパないし、高いヒールの靴をはいて動き回るから足はボロボロだし(夏はたまに臭うし)、脚には何処でぶつけたか分からない怪我がたくさんあるし。
OLの友達とは一切休みが合わないから、休日は月に1回くらい出かけるだけで、基本的に家でゴロゴロ。だから出会いなんてない。
仕事は嫌いじゃない、ていうか好き。
人と話すことが好きだから、接客が楽しくて仕方ない。
初めて顧客様が出来たときは、本当に泣いたくらい。
でも、不安。
私の夢はキャリアウーマンではない。
旦那様と子どもを支え、笑顔の絶えない家庭を作ることが夢だ。
このままで本当に結婚できるのかな。
まず恋人が出来るのかすら分からない。
かと言って合コンとかしないし。
気になる人はいる。斜め前の雑貨屋さんで働いているスタッフさん。
なんか気づいたら目で追っちゃう。
話したことないし、話す勇気もないけど。
あー、こんなんで大丈夫かな。
22時に閉店して、レジ閉めを終えて、22時半にモールを出る。
駅までは歩いて10分、22時50分の電車に乗って家に着くのは23時半。
はじめは夜道が怖かったけど、慣れるとなんともなくなっちゃう。
慣れって怖いなあ…。
ーーーポツ、ポツ
『え、嘘ー雨降ってきた。』
今日寝坊したから天気予報見てなかったー。
だんだんと雨足が強くなってくるけど、走る気力はない。
駅についてタオルで拭けばいいか。
と思った瞬間。
「大丈夫ですか?」
振り向くとスーツを来た男の人が、傘をさしてくれていた。
え…雑貨屋さんだ。うそー!!
『あ、大丈夫ですよ。駅すぐそこなので。』
「ダメですよ!風邪引いちゃいます!僕も駅に行くんで入っていってください。」
『え…え?』
「ダメですか?」
泣きそうな顔で聞くもんだから
『お願いします…』
お願いしてしまった。
「よかった!あ、突然驚きましたよね!僕斜め前の雑貨屋のマネージメントしてる田中と言います。たまに雑貨屋にいてるんですけど、知らないですよね?」
『…いえ、存じてますよ。』
「ほんとですか!ヤバイ、嬉しい。」
…トクン。
本当に嬉しそうな笑顔に思わずときめいてしまった。
なんか、懐かしい感情。
前の彼氏と別れてから今の仕事はじめて、それからは、仕事以外で男の人と話すことなんてなかったから少し緊張。
ていうか、私のこと知ってくれていたんだ。
「僕、ここに来るの月に2回くらいなんですけど、毎回通路歩きながらあなたがいるかな?って探してたんですよ。」
『え?』
「ずっとお話ししたいと思っていたので、僕のこと知っていてくれて凄く嬉しいです。」
『え…え?』
「もしよかったら、これから仲良くしていけたら…と思ってるんですけど…。迷惑ですかね?」
『…。』
「あ…すみません。迷惑ですよね。嬉しくてはしゃいでしまいました。…すみません。」
『いや!あの…違います。』
「え?」
『あの…わたしも仲良くなりたいな。と思ってたので…。』
「ほんとですか!?」
『はい…』
「うわー、本当に嬉しい。ヤバイ。」
横目で彼を見てみる。暗くてイマイチ見えないけど、手で口を押さえてる。
…!!かと思ったら彼もこっちを向いたので少し目が合っちゃった。
『…すみません。あの、本当に嬉しそうだなと思って。』
「そりゃあ、嬉しいですよ!」
『えへへ(笑)ありがとうございます。』
まだまだスタートラインにも達していないけど…。
なんだか、楽しくなりそうな予感。