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いつからだろう、黒か白の服しか選ばなくなったのは。いつからだろう。

たしか「パーソナルカラー」、「骨格診断」といったワードが流通してきたあたりだろう。また、「顔面偏差値」「顔面カースト」などというルッキズムを表す言葉が新たに生み出され、電車の中吊り広告には「二重埋没法」「メンズ脱毛」などと、移動中も外見を整えるよう畳み掛けるワードで溢れかえっている。

 

私の肌の色や体型を客観的に複数のタイプにふるい分けすると、イエべ秋の骨格ストレート だそうだ。最初に聞いたときは呪文のように聞こえていたが、イエべ秋は盆栽や焼き芋のような暗く渋い色を身につけると、顔が映えると言う。一方、骨格ストレートは下半身をカバーするようなワイドパンツや胸元の開いているVネックのトップスが好ましく、ミニスカートやタートルネックは体型の悪さを引き立たせてしまうらしい。正直鬱陶しいな。私のことを何にも知らない奴らが、何でも何かに当てはめたがる。女性のお笑いコンビは顔や体型、身なりに気を遣っていたら面白くないのか?女子アナはみんなスリムなタヌキ顔でないと売れないのか?過度な痩せだと病気を疑われ、肥満だと甘えや怠惰だと指摘される。加齢に伴い、いずれは人類皆似たような顔つきへと変化していくというのに。こういった風潮にうんざりしながらも、私は今日もトップスを黒にしようか白にしようか悩むのである。

 

ルッキズム。ウィキペディアでは「外見重視主義」と出てくる。見た目で価値を付けることを指し、差別用語である。それなのにテレビでもSNSでも、学校でも会社でもルッキズムはあたりまえにそこにあり、私自身もこいつにかなり振り回されている。「太っているなら肌は露出させるな」、「もう24なんだからツインテールはするな」私は、似合うか似合わないかは別としてフワちゃんのような歩く原宿みたいな格好をしたいし、デニムスカートやロングブーツなんかも買っちゃって、2000年の安室奈美恵のようなコーデがしたい。最近は散歩している犬や猫にまで、ブルベだから黄色の服とか赤い首輪が似合うのか、などと考えている。脳内はかなりルッキズムに囚われているのだ。

ここまでルッキズムに対して嫌気が差しているが、私はスーツや喪服が良く似合うと自覚している。スーツも喪服もどちらも真っ黒でつまらなくて大嫌いである。スーツを着ると仕事を思い出してしまうし、スーツを着ている中年男性を見ると、スーツが良く似合いよく嫌味を言うあの係長を思い出してしまう。一方、喪服は縁起の良いものでないし、一度買ったっきり着る機会が読めない喪服は冷凍庫にいつまでも眠り続けるわずかな明太子、いや、いつまでも買い手が見つからずどんどん成長してしまうフレンチブルドッグのようである。この場合、成長してるのは喪服ではなくこの私だが。

 

かなり話が逸脱してしまったが、スタバのお姉さんが皆さん美人でセカストで働いてるお兄さんが俳優並みにかっこいいのはきっとそういうことなのだろう。私は俗に言うぽっちゃりである。さらに言うならば異性にモテない。もっと言うならばナンパ・スカウト、痴漢されたことがない。でも私はむちむちな二の腕も笑うとニカッと大きく出る前歯も愛している。この体型は今まで食べてきた美味しいものが詰まっているし顔も両親からもらった大切な宝である。だが、異性にモテないのはちょっとやっぱり気にしてしまう。そういうお年頃なのだから。

 

友人と恋バナをすると最終的には必ずルックスの話題になる。洋服のセンスが良くて清潔感があって(ここまではわかる)、柴犬のような目をしていて鼻が高くて眉毛が平行眉に整えられていて肌が綺麗な男性がいいと。でも、人間としてもっと大事なことを忘れてないか?24年間生きてきて、相手の本性を見抜くスキルを学ぶ機会は多かったはずだぞ。ルックスだけでその人の性格や価値観などは計り知れないだろ。髪の毛・体毛、肌管理にお金をかけている男性だとしても、駅の階段でブンブンと傘の真ん中を持たないか、自分が一生懸命作った料理に醤油をかけないか、許可を取らずに唐揚げにレモンをかけないか、匿名で何でも意見できるSNSで人の傷つくことを発言していないか、マフラー改造車で煽り運転をしないか、まわりを見ずに満員電車の優先席でTikTokを見てないか。いくら外見が良くても上記の項目を満たすような奴は、個人的には信じられない。一生懸命生きていたらそれだけでみんな可愛くてかっこいいんだから、まずは内面を磨く努力をしていたい。

 

現状、SNSではルッキズムに対する発言や動画で溢れかえっているが、決して人の見た目に関して誹謗中傷したり自分の考えで外見について意見してはいけない。着たい服を着て、したいメイクをしよう。自分が嫌いなものを心から好きな人もいる、ということを忘れてはいけない。少々熱くなってしまったが、私もまだ体内の善玉菌が脳内のルッキズム菌を攻撃できていない。しわくちゃのおばあさんになっても筋力と毛髪があるならば、私はポニーテールをしてたい。そして黄緑のネイルをしてピンクの紅を引き、真っ赤なパンプスを履くことを夢見て。

 

 

アレに似てるとか誰に似てるとかなんでも何にでも当てはめたがる 

パズルゲームが大好きな馬鹿が 家では一人で飼ってる熱帯魚に向かって

どうしても最後のピースがはまらないんだとか言ってるんだろうね ばーかばーか

(身も蓋もない水槽/クリープハイプ)