水族館に行ったら、水槽の中をイワナがのんびり泳いでいた。
イワナはサケ目サケ科イワナ科属の魚で、渓流の王様と呼ばれている。貪欲な肉食性で釣り人に人気がある。
江戸時代の随筆、三好想山「想山著聞奇集」の「イハナ坊主に化たる事」に、美濃国恵那郡(岐阜県中津市･恵那市)の川上、付知、加子母では昔からイワナは坊主に化けるといわれている、と記されている。
福島県には「イワナの怪」という話が残されている。
その昔、山椒の皮汁を川に流して魚をとる毒もみ、根流しという漁法があった。
村の若者がこの漁法で魚をとっていたら、どこからともなく1人の坊主が現れて、殺生を戒めた。若者は坊主を立ち去らせようと団子や飯をふるまった。
坊主は飯を食い終わるとその場を立ち去った。若者は坊主がいなくなったのをいいことに、毒もみを続けた。
すると、なんと人間ほどもある大イワナが捕れた。が、この大イワナの腹を割くと、中から先程坊主にふるまった団子や飯が出てきた。
若者は気味悪がってこの大イワナを食べなかったという。
類似の話は全国に伝わっていて、イワナではなくヤマメやウナギ、ナマズだったり、沿岸地方ではタラなど、年老いた魚が人間に化ける。
「耳袋」には、江戸の神田川にいた大ウナギが人間に化け、ウナギ取りをやめるように釣り人に頼む話が載っている。
福島県の只見川にもウナギが化けた坊主の話が残っている。
話によっては、魚の死骸から毒気が出て釣り人が死んでしまうこともある。
まんか日本昔ばなしでも「イワナの怪」として紹介されていた。
アニメ「ゲゲゲの鬼太郎」にも登場していて、3期では魍魎(もうりょう)を岩に封じ込め、4期では人の寿命を言い当てる妖怪僧だった。5期では妖怪を岩に変える神通力を持ち、浪小僧を弟子にしていた。
最近では北海道大学が、イワナがあくびをする、という研究発表をした。
旅行先でイワナの塩焼きを売っているのを見ると、つい頭に「岩魚坊主」のことがよぎってしまうが、食べたイワナの塩焼きは、とても美味しかった。
