先日、新潟県の佐渡を訪れた。新潟港から船で渡り、両津港に着くなり、レンタルバイクを借りて、私が向かったのは「二つ岩大明神」という神社である。

「二つ岩大明神」では、淡路島の柴右衛門狸、香川県の太三郎狸と並び「日本三名狸」に数えられる化け狸「団三郎狸(だんざぶろうだぬき)」が祀られている。

佐渡では狸のことを狢、トンチボーと呼ぶことから「団三郎狢」とも呼ばれる。

「団三郎」は、佐渡の狸の総大将として有名で、「団三郎」が狐を追い払ったため、佐渡には狐が居なくなったといわれている。

歩いている人の目の前に壁を作り出したり、木の葉を金に見せかけて酒や醤油を買ったり、蜃気楼を出したり、豪華な屋敷を見せて人を招き入れたり、化け狸としての悪戯っぷりを遺憾なく発揮している。

さらに、人に化けて金山で働いたり、金山でこぼれ落ちた金の粒を拾ったりして稼いだ金を、困っている人に無利子で貸した、という伝説も残っている。病気になった時は、人に化けて医者にかかり、大金の謝礼を渡そうとしたが医者に断られた、という話もある。人間を騙そうとして手痛い反撃をくらう話も伝わる。

「団三郎」は佐渡に留まらずあちこちで歩き、伊勢神宮や熊野大社にも詣でたといわれる。そのため、佐渡以外でも「団三郎」の名前は知れ渡っていたという。

滝沢馬琴は「燕石雑志」で「団三郎」の話を題材にし、絵師の河鍋暁斎は「狂斎百図」の「佐渡国同三郎」で「団三郎」のことを描いている。

このように、人間社会との交流を惜しまず、義理堅く、親分気質の狸として、関の寒戸、徳和(赤泊)の善達、潟上の才喜坊(財喜坊)、おもやの源助という四天王をはじめ、100以上の部下を従えた。

佐渡には「団三郎」を祀る「二つ岩大明神」以外に、四天王をそれぞれ祀る神社も存在している。

私は両津港からバイクを走らせ、雨の降る中、道に迷いまくり、車一台分ぐらいの坂道を上り、ようやく「二つ岩大明神」にたどり着いた。

木が生茂る中に鳥居がずらりと並んでいた。各地から来る参拝者が、願をかけて鳥居を寄進し、願いが成就するともうひとつ鳥居を立てる。そのため鳥居はどんどん増えていった。

鳥居が並ぶ道を進んでいくと、つぶれかけた本殿が見えた。中に入ってお参りをした。

「団三郎」は「ゲゲゲの鬼太郎」にも、八百八狸の一体として登場していた。1期、5期、6期では「団三郎」だったが、なぜか3期では「団十郎」、4期では「鉢巻狸」という名前だった。2期には登場していない。怪力自慢で一反木綿をふんどしにしていた。5期では妖怪四十七士の新潟県代表として登場していた。

ジブリ映画「平成狸合戦ぽんぽこ」では、名前だけ登場していた。

「団三郎」の伝説を辿っていくと、実在した「団三郎」という人物がモデルになっていることがわかる。

モデルとなった団三郎さんは、越後国の人間の商人で、明暦3年(1657年)、佐渡金山で使う鞴(ふいご)の押し皮をとるために、繁殖用の子狸を売っていた。

後に佐渡で狸の養殖を始めた団三郎さんは、島民から敬われ、氏神のように祀られるようになった、という説がある。