本日は、最近読んでおもしろかった書物です本

 

 

 

 

 ・青山美智子 「お探し物は図書室まで」(ポプラ社,2020)

 

 

 著者は1970年愛知県出身。中京大を出てオーストラリアのシドニーで日系新聞記者を2年勤め、帰国して雑誌編集者に。同時に2003年から創作を始め、2017年に小説家デビューしました。

 

 本作は書下ろしの連作短編集。2021年本屋大賞2位、2023年には米TIME誌の 「THE100 MUST-READ BOOKS OF 2023(2023年の必読書100冊)」 に本邦から唯一の選出となりました。

 

 

 便利な東京で暮らす、以外の目標を見出せない婦人服販売員の藤木朋香21歳。

 

 いつか自分でアンティークショップを開きたいと願いつつ、夢で終わりそうな気配を感じてきた家具メーカー経理部の浦瀬 諒35歳。

 

 雑誌編集者としてバリバリ働き実績を残しながら、産休明けに退職を促されてしまった崎谷夏美40歳。

 

 イラストレーターの夢かなわず、ニート生活を続けていながら周囲に責められるでもなく鬱鬱と暮らしている浩弥30歳。

 

 定年退職を迎えて社会とのつながりが消え、とくに趣味もなく、今後なんの生きがいもないことに気づいてしまった権野正雄65歳。

 

 

 彼らが東京都内、羽鳥区(架空)のコミュニティハウスにある図書室に何気なく訪れると、司書の小町さゆりから 「何をお探し?」 と尋ねられます。

 

 太っているというか、白くまのように大きい女性。ベージュのエプロン姿でひっつめ髪の上にかんざしの刺さったお団子ひとつ。手には針と玉を持って羊毛フェルト編みに興じています。

 

 独特な雰囲気の彼女に、問わず語りに私生活の悩みを打ち明けると、温かな、そして押し付けでない励ましの言葉とともに意外な本を勧めてくれます。どうしてこれを?と戸惑いながらも読んでいくと、不思議な感覚と同時に気持ちが清々しく、前向きになっているのに気付くのでした―

 

 

 5章立て全300頁。小町さゆりさんが、なんだか 「銭天堂」 の紅子さんを連想してしまいました。まるで実在していないかのような、心の鏡であるかのように人の心を癒してくれる司書さんです。

 

 勧めてくれる本はすべて実在のもの。安直なハウツーものとか自己啓発本の類でなく、絵本だったり図鑑だったり、読書を通して自分と対話するかのような趣向になっています。

 

 図書室を訪れた人々の悩みは、読者万人に通じるものがありましょう。けっして説教がましくなく、といって 「あなたはあなたでいいんだよ」 的な全肯定でもないのです。不覚ながら?読んでてわたくし みつまめ、各章ごとに落涙してしまいました。

 

 この本は図書館で見つけたのですが、文庫を探して手元に置きたいと思います。今年いちばんの出会いでした。カメマルです。