本日は、最近読んでおもしろかった書物です本

 

 

 

 

 ・中村 啓(ひらく) 「無限の正義」(河出書房新社,2024)

 

 

 著者は1973年埼玉県和光市生まれの武蔵野育ち。東京理科大出身。2008年に 「このミステリーがすごい!大賞」 優秀賞を受賞しデビューしました。

 2022年にHuluオリジナルでドラマ化された 「パンドラの果実~科学犯罪捜査ファイル」 はこの方が原作だそうです。「週刊ヤングジャンプ」 で賞を獲るなど漫画家でもあるとか。本作は書下ろしの430頁長編。

 

 

 池袋署の刑事課に所属する薬師丸遼一は45歳の警部補。商社勤務で夫より高収入の妻恵理子、バレエ留学を控える18歳の佳奈、高2になってから不登校引きこもりの将太と、希望も悩みも抱えた家族4人暮らし。

 

 警部に昇進して本庁勤務を念願にしている遼一は、管内で起きた反社構成員ばかりを狙った連続殺人事件の捜査に血道を上げます。マスコミが奉った犯人の通り名は ‟聖掃者”。

 

 ところが、佳奈がハメを外して夜遊びした店で、半グレの男に薬を盛られ部屋に連れ込まれてしまいます。乱暴されそうになったとき目覚めた佳奈は、抵抗して男を鈍器で撲殺してしまいました。あろうことか、男は遼一が追う事件の重要参考人のひとり。

 

 娘に泣き疲れた遼一は、男を聖掃者の仕業を偽装して娘をかばうと、何食わぬ顔をして捜査を続けます。すると、当の聖掃者からコンタクトが。やってくれたな、こうなった以上、俺たちは仲間だ―

 

夜の街 宝石赤

 

 

 

 ・松嶋智佐 「ブラックキャット」(光文社,2024)

 

 

 著者は大阪府在住。女性初の白バイ隊員を務めた元警察官。退官後に小説家を志すと、2005年以降に北日本文学賞、織田作之助賞、島田荘司主宰 「福山ばらのまち福山ミステリー新人賞」 などの受賞歴。本作は書下ろしの250頁長編です。

 

 

 群馬県警刑事部、高桑祐里警視が仕切る捜査一課所属の白澤 蕗(ふき)は29歳の巡査部長。幼いころ、母と別れて再婚した父の身重の妻を、母にそそのかされて夜道の階段から突き落とした過去がありました。

 

 兄の白澤 然はギャンブル狂に身を持ち崩しており、怪しい儲け話に飛びついては借金を重ねる厄介者。やはり幼いころ、柿の木から落ちそうになった蕗をかばって右足に障害を抱えたことへの自責から、蕗はダメ兄との絶縁に踏み切れません。

 

 ある日、泣きついてきた兄の借金をやむを得ず用立てることになり、小曾根 彬という初老男を紹介されます。彼は元検察官。退官後は悠々自適に現役警察官の相談相手になっていました。つまり、蕗のように職場に知られたくない秘密のお金を借りるに相応しい人物。

 

 ところが、小曾根から 「一度だけ」 捜査情報の漏洩を依頼されます。しまった、このネタでずっと脅される―

 カネを借りた帳簿を奪うべく、深夜に小曾根の住むマンションに侵入した蕗。そこで見たものは殺害された小曾根の遺体でした...

 

本 メモ

 

 まったく偶然にも、同じようなテイストのミステリーサスペンスを連続して読みました。

 

 警察官の職責に誠実で、社会正義に燃える刑事が、家族を救うために取り返しのつかない犯罪に手を染め、大きな事件の捜査も続ける葛藤と、バレたら身の破滅という緊張感。

 

 こういったテーマだと、主人公が転落していく過程と、決定的な破局のときというのが見せ場だと思うんですが、二編ともまったく違うクライマックスが用意されていました。奇しくもその展開もどこか相通じる印象を受けたという。

 

 とはいえ、筋立ても登場するキャラクターもまったく違うそれぞれ個性的な小説なので、偶然に同じような着想を得たということなのでしょう。前者がダーク/ヘヴィな余韻、後者がまずまず爽快な読了感なので、自分としては後者が好みでした。