本日は、最近読んでおもしろかった書物です![]()
・柚月裕子 「孤狼の血」(角川文庫,2017 初出は2015)
以前、「慈雨」 と 「パレートの誤算」 を読んで、どちらもとても感興を惹かれた作家さんです。
本作はKADOKAWAの 「小説野生時代」 で2014年3月号~2015年2月号にかけて連載され単行本化。日本推理作家協会賞を受賞しました。自分の読んだ文庫本は35版というヒット作。
昭和63年広島。呉原東署の暴力団係班長・ガミさんこと大上章吾は、ヤクザとの癒着が噂される、パナマ帽がトレードマークのこわもて刑事。
そんな大上の部下に配属された新人の日岡秀一は、大上の暴力を辞さず、情報源のチンピラを飼い、上納金の上前をはねて目をつぶることもある違法ぶりを目の当たりにし衝撃を受けます。
日岡は国立の広島大を出ながら、一般市民をヤクザから守りたい正義感に燃え、あえてノンキャリアを選んだというので、大上は変わり者と目をかけ、実の息子のように接し扱います。つまりビシバシ容赦なし。
やがて、新風会系仁正会のフロント企業・呉原金融の社長失踪をきっかけに、組員600人を擁する仁正会と、50人規模ながら武闘派で鳴らす神戸明石組系尾谷組の抗争が勃発。本格戦争を回避すべく、なんと双方から大上に接触してきます。いったい警察の正義ってなんなんだ。憤然とする日岡が次第に気づかされる、大上の刑事としての矜持とは―
警察小説、というより本格ヤクザ小説でした。もちろんダークヒーローじゃなく社会の害悪として。
まだ暴対法がない昭和63年を舞台に、当時の警察が出来るギリギリの攻防がふんだんに描かれます。創作のきっかけは著者が映画の 「仁義なき戦い」 を観て興奮したからだそう(笑)
ストーリー、組立て、リアリティ、予断を許さぬクライマックスが絶賛されたという本作。こんなすごいハードボイルドを女流作家がものすとは意外、とちらっと思いましたが、考えたらわれわれのほとんどはヤクザの世界とは無縁ですからね。ジェイダーバイアスというものでした。
「二課のけじめはヤクザと同じよ。理屈に合わん先輩のしごきや説教にも、黙って耐えんといけん。ヤクザっちゅうもんわよ、日頃から理不尽な世界に生きとる。そいつら相手に闘うんじゃ。わしらも理不尽な世界に身を置かにゃあ」(P20)
