本日は、「MSI=みつまめスケプティック委員会」 からの活動報告です本

 

 古今東西あまた世上をにぎわせたフェイク科学系の話題を総ざらいし、信頼に足る真相に迫りますサーチ

 

 今回は、「ローズマリーの霊感」 です。

 

 

 イギリスはロンドン南西部、クラッパム出身のローズマリー・ブラウン(1916~2001)は、幼少期から霊魂が大の友達。彼らと交流を重ねる夢の世界に遊んで育ちました。

 

 戦後、ジャーナリストと結婚し一男一女の母に。夫は体を悪くし長い闘病のすえ1961年に亡くなっています。

 

 そんな家庭環境の1959年12月、ブラウンの元にかの ‟ピアノの魔術師” フランツ・リスト(1811~1886)の霊が現れると、小さいころに少し習っただけという彼女は、リストさながらの超絶技巧ピアノを弾きこなすようになりました。

 

 やがてリストはブラウンに ‟新曲” を託すと、彼女はトランス状態の自動筆記でそれを楽譜に著したのです。

 続いてリストは偉大な音楽家の霊魂を次々にブラウンに引き合わせました。バッハ、ベートーベン、シューベルト、ブラームス、ショパン......楽聖たちは彼岸で作った新曲をブラウンに発表してもらうことを望んで会いに来たと言います。

 

 1969年、噂を聞いたイギリスBBCが南ロンドン郊外ストックウェルに住んでいた彼女を取材。自宅ピアノの前で楽聖が憑依、ブラウンと会話し譜面に音符が書き込まれていくシュールな様子を収めました。フランス語やハンガリー語を話す音楽家はおらず、すべて英語だったそうです。

 

 フィリップスレコードはブラウンのピアノ演奏で、これら ‟新曲” を 「ROSEMARY BROWN’S MUSIC(邦題:ローズマリーの霊感)」 としてレコード発売。1971年には自伝本 「UNFINISHED SYMPHONY:VOICES FROM THE BEYOND(邦題:詩的で超常的な調べ)」 が出版されています。

 

 

1969年発売のレコードジャケット

 

 

 この話は本邦1970年代オカルト本どころか、学研の児童向けまんがひみつシリーズ 「いる?いない?のひみつ」(1981) でも紹介されました。自分が知ったのは小学校の休み時間に読んだこの本で、おかげでリストというといまだもってこのイメージという。

 

 そういえばあの話はなんだったんだ? と思い、このたび追加レポートとして記事にしております。

 

 本邦では <ブラウン夫人> で通る彼女は1980年代には表舞台から姿を消し、2001年11月に85歳で亡くなりました。

 

 BBCと同時期に取材した米誌 「LIFE」 では、小さいころ習っただけ、というピアノの腕は謙遜が過ぎ、それなりに訓練された中の上、という評価。曲のクオリティについては 「それぞれ音楽家の特徴を取り入れたそれっぽい出来」 と辛口でした。

 

 さすがにベートーベンの新作 「交響曲第10番」 とか、シューベルトの 「未完成」 の完成版はこれだ、と世に出したのは失笑を買ったようですが、リスト 「雨の日」 「イエスの祈り」、グリーグ 「子どもの頃の歌」 「羊飼いの世話」 などは題名、曲調ともに ‟いかにもありそう” で、少なくないプロ音楽家の高評価を受けたようです。

 

 生々しいのは作曲印税。当然ながら霊魂の作曲などは想定されていないので、ブラウンが受け取ることに。これについては

 「彼らからあなたが受け取るべきだ、と助言された」 そうです。

 

 「LIFE」 誌は、無名のピアニスト志望の女性が楽聖の霊魂をプロモーション手段にすることを思い立ち、大成功を収めたと皮肉な論調。客観的な検証ができない以上、それがもっとも妥当な見解となりましょうか。しかし生成AIで亡くなったアーティストを復活させることが可能になった現在、ブラウンのレコードの存在はなんだか趣きがあるなと思う次第です。

 

 

 それではまた、次回の報告会でお会いしましょうMSI