本日は、わたくし みつまめがもっとも敬愛する邦楽アーティスト・井上陽水氏のカタログから1曲をセレクトしますギター

 

 今回は、『この頃、妙だ』

 

 

 1983年12月発売 「バレリーナ」 収録曲。

 

 この曲を書いたとき、ややノイローゼ気味だったという陽水氏。

 

 もっとも、今では神経衰弱なのか鬱病なのか統合失調症なのか幅が広すぎるため、ノイローゼの語自体が廃止されております。このときの陽水氏は、どうやら過敏ストレスだった様子。

 

 「僕はね、絶大な自信があった。僕にはそういうこと絶対にないって。でもある時にね、これはちょっとマズいなって。自分ひとりでコントロールできない、困ったなって」(陽水氏)

 

 耐えかねた陽水氏は、当時のディレクター、金子章平氏に深夜電話すると、金子氏が家に来てくれて、夜どおし飲んで話してその晩をしのいだと言います。

 

 「章平も、あのときの陽水はヘンだった、って笑いながらこの話してるけど、その時は笑ってないから。そういうことが一度だけあって。この曲はつまりその感じだよね」

 

 さらにもうひとつ、世相に対するアプローチも実はありました。

 

 「こういう仕事してると、報道される側でしょ。向こうも仕事だから、取材したら何かつかんで帰らないとってせめぎあいがある。ここまでは踏み込まないだろうってところに踏み込んできたり」

 

 「うっかりすると、これはやりすぎなんじゃないのぉ~ ってところまで入ってきて、当事者は信じられない!って思うのに、世間的にはその被害者意識は芸能人特有のオーバーな思い上がりだって言われるんだろうから、そのオーバーな気持ちを歌ってみようかなって」(陽水氏)

 

 

 昭和の映像をみると、1980年代の芸能人への突撃取材はずいぶん強引でしたからねぇ。もっともその後は大手芸能プロの仕切りが効いてどんどん委縮した結果、芸能レポーターなるものはほぼ絶滅してしまいましたから、ちょうどいいバランスにはできなかったものかと思うんですが...

 

 曲調は言葉の多い歌詞を流れるようなメロディーに乗せ、心地よく響きます。パーカッションの利いたエレクトロなアレンジも合っており、こうした経緯抜きに聴けば、いたって明るい印象です。

 

 それでは 『この頃、妙だ』(作詞/作曲:井上陽水 編曲:DADAAD) ですヘッドフォン。DADAADというのは、松田聖子さんなどを手掛けた80年代の売れっ子編曲家・大村雅朗(まさあき,1951~1997)氏のこと。ギターも弾いています。

 

 

 ♪僕はなんだかこの頃とっても妙だ
  二人きりでも一人になってるようだ
  使いならした日本語も 覚えかけてた計算も
  君のことまでそのうちに忘れそうだ
  その訳がわかるまで そのままで ただ 持っておくれよ 今日は
  Ah- 誰かさん Ah- 誰かさん

  僕は絶対この頃とっても妙だ
  医者にかかればおびえた子供のようだ
  ベルやチャイムや呼びリンや キスやダンスやおしゃべりが
  僕を齧りに向ってきているようだ
  その訳がわかるまで そのままで ただ 待っておくれよ 今日は
  Ah- 誰かさん
  Ah- 誰かさん

    もっとはっきり教えて あの 僕にしっかり伝えて あの
    曲り角からルルルル 帰り道からララララ
    僕になんだか教えて あの 僕にはっきり伝えて あの
    飾り窓からルルルル もどり道からララララ
    僕の気持をわかって ただ 僕のことなど忘れて
    WAO WAO WAO WAO WAO WAO WAO WAO

  なんといってもみんなが僕より妙だ
  なんにも知らずになんでも知ってるようだ
  いつも誰かに見張られて たとえ逃げてもそのうちに
  胸の中まで探しに出かけるそうだ
  その訳はなにもせず そのままで ただ 待ってるだけのせいだ
  Ah- 誰かさん Ah- 誰かさん