本日は、わたくし みつまめがもっとも敬愛する邦楽アーティスト・井上陽水氏のカタログから1曲をセレクトしますギター

 

 今回は、『桜三月散歩道』

 

 

 1973年12月発売 「氷の世界」 収録曲。

 

 世紀の名盤リリースから51年目、先日、NHK 「うたコン」 で一青 窈さんが 『帰らない二人』 を歌っておりました。今後もいろんな番組や歌手がこのアルバム曲をカヴァーしてくれそうです。

 

 桜の時季にちなんだ 『桜三月散歩道』 は、長谷(ながたに)邦夫さん(1937~2018)の作詞。

 

 漫画家同人として赤塚不二夫さん、石森章太郎さんと知り合い、ふたりが椎名町のかの <トキワ荘> に住みだすと、葛飾の実家から通いで入りびたるようになりました。

 

 長谷さんは漫画家というよりは、現代詩とか小説とか文筆方面が向いていたようで、他人の原作とかアニメの脚本で活躍します。おかげで世間的な知名度は赤塚さんたちほどではないにせよ、トキワ荘界隈では、なくてはならぬ人でした。

 

 1972年11月、赤塚さん責任編集の漫画月刊誌 「まんがNO.1」 を企画。創刊号にソノシートを付録につけました。すべて長谷さんが作詞し、山下洋輔トリオの即興ジャズや中山千夏 『Discover War』、三上 寛 『おまわりさん!!』、青山ミチ 『スケバン・ロック』 といった曲を収録。その中に加わったのが陽水氏の歌う 『桜三月散歩道』 です。

 

 なんで陽水氏に声がかかったのかというと、ポリドールのレコード・エンジニアだった大野 進さん(1944~2010)が赤塚さんと友達で、1969年に 「もーれつア太郎」 がアニメ化されたとき、エンディングテーマの 『ニャロメのうた』 を歌っていたのでした。

 

 その大野さんは陽水氏のアルバムでエンジニアを務めており、赤塚さんと引き合わせたという縁です。

 

 しかも当時、赤塚さんはまだ芸能界入りする前のタモリさんを自宅に居候させておりました。陽水氏と友達になったのは数年後ですけど、なんだか不思議な人間関係ですねぇ。長谷さんはタモリさんとも友達で、‟クニオパトラ” と呼ばれてたらしい。

 

 そんなアングラな経緯で生まれたこの曲、ネガティヴな雰囲気の春や桜がキレイなメロディーで歌われます。途中でセリフが入るのは陽水氏のカタログで唯一。影踏みっておもしろくなさそうな遊びだな~とずっと思っておりました(笑)。

 

 それでは 『桜三月散歩道』(作詞:長谷邦夫/作曲:井上陽水/編曲:星 勝) ですヘッドフォン

 

 

 ♪ねえ 君二人でどこへ行こうと勝手なんだが
  川のある土地へ行きたいと思っていたのさ
    町へ行けば花がない 町へ行けば花がない
  今は君だけ見つめて歩こう
  だって君が花びらになるのは だって狂った花が咲くのは三月

  ねえ 君二人でどこへ行こうと勝手なんだが
  川のある土地へ行きたいと思っていたのさ
    町へ行けば風に舞う 町へ行けば風に舞う
  今は君だけ追いかけて風になろう
  だって僕が狂い始めるのは だって狂った風が吹くのは三月

  ねえ 君二人でどこへ行こうと勝手なんだが
  川のある土地へ行きたいと思っていたのさ
    町へ行けば人が死ぬ 町へ行けば人が死ぬ
  今は君だけ想って生きよう
  だって人が狂い始めるのは だって狂った桜が散るのは三月